第七十話「目覚めの朝は涙で出迎え」
暗闇――
うるさい。
やかましい。
耳障りだ。
静かにしてくれ。
まだ寝ていたいんだ。
俺の神経に轟く声が眠気の邪魔をする。
意識はないように感じる。
綺麗で抱きしめられた女性の姿もなく、先ほどまでいた暗闇の空間とはまた違う感じだ。
単純に眠りについている感覚だ。
辺りには何も見えない。
今思えば、ガバリオンと戦闘をしていたことを忘れていた。
死んだのでは?
手を動かすという動作すらままならない。
ただ感覚もなく、意識もなく一体どうすればこの嫌な雰囲気を打開できるのか。
それでも声が聞こえて、だんだんイライラしてくる。
俺はスリープを邪魔されるのが嫌いなんだ。
だからそっとしておいてくれ。
俺が起きたい時に起きる。
そうさせてくれ。
もう疲れたよ。
あの女性がいないのならば、起きる気がしない。
それでも、ただひたすら
声が聞こえる。
一人じゃない。
複数人の声だ。
何を言っているのか?
「……」
俺を呼ぶ声だった。
「アーサー様!!」
「アーサー殿!!」
「師匠!!」
この声……
この呼び方……
聞き覚えが……
俺を呼ぶ声には、涙が含まれているように感じる。
誰だ?
誰が俺の名を呼んで泣いているんだ?
そんなこと許されるわけないだろ!?
やめてくれ。
俺は……
そうだ。
俺は村のみんなを守るために……
この声はみんなの声……
だったらまだ死にたくない。
死ぬわけには……
死にたくない。生きあがきたい。
自然を喉の奥から低くうめく声が出た。
「ヴヴヴヴーーーー」
俺の声は届いてくれた。
暗闇と思われたところから、マイナスに光が少しずつ差し込んできた。
これは?
どうやら俺は目を閉じていただけだったようだった。
光量が瞳に注ぐ量が増えると共に、色彩が窺えてきた。
でも、ボヤけてよく分からない。
人の形のようなものが複数人俺を取り囲み、覗き込んでいるように見えた。
誰だ?
誰なんだ?
時間の経過とともに、かかったモザイクも鮮明に剥がれてきた。
あ!そうか
やっとわかった。
お前らかー!
生きていたのか。
生きてて、、よかった、、
俺は万全では無いが瞼を開けて周囲を確認すると、生き残った村人、そしてアナ、モナ、メイ、エバ、フォーと全員勢揃いだった。
そして、そのもの達は俺の周囲を守るように見守ってくれていた。
果たして、何人生き残ったのであろうか?
まだ、武装した村人もいる。
それに、本当に戦いは終わったのか?
それが一番気がかりだ。
でも、そんなことより注目してしまったのが、
皆の顔は涙一色だった。
何故なのか。
そんなことはもう考えなくていいと思う。
なぜなら俺はこの村のみんなを愛している。
それに俺は本当の意味で愛されていたのだと言うことを再確認できた気がした。
俺の体はズタボロだった。
手足を失った訳では無いが、身体中傷だらけで動かすことも間もならない。
MPもゼロに近い。
生きていたことが不思議だった。
空は快晴。
朝だ。
雲ひとつない、この一帯の本来の姿と言える。
これまでの状況判断の後、戦いは終わったと確信した。
村人の犠牲を払ってまで勝利した戦いと俺は考えて、気持ちが安堵した。
俺が目を開けて、生きていることを再確認すると、アナ、モナ、メイ、エバは傷だらけの俺の体に顔を寄せて埋めて来た。
さすがに痛いからやめて、と言いたいところだが、まあ、いいだろう。
今回は。
武装した村人たちは休んでいる暇なく、動き出した。
俺が指示することなく動かしていることを見るからに、成長したと俺は親心を持ちながら関心。
もう俺が指示することも、教えることもない。
おそらく、村周囲の確認を急いでいるのだろう。
まだ、敵がいるのかいないのか。
それに、今はチンタラしている暇は無い。
防衛力を高める必要がある。
まだ、本当の意味で戦いが終わったとも言い難い。
あとは頼んだ。
のちに半壊された病院に俺は連れていかれ、アナ直属に治療がすすめられた。
正直、記憶がなく、そこから日付が経過していった。




