第六十九話「抱きしめられたらそりゃー立つよねー」
俺は飛び上がって状態を起こした。
まさかなー
まさか本当に出てくるとは。
まあ、現れてくれるかなーとは考えていた。
現実となった今、彼女には聞きたいことが山ほどあるが、そもそも信用できるとも言い難い。
それに、お前のその格好、いや、姿はなんだ?
暗闇に染る周囲。
そんなところで相手の顔など見えやしないがなんとなーく、匂いでわかる。
それに声で。
きっと綺麗な女性なのだろう。
髪型は?
ショート?
ロング?
分からない。
おっぱいは?
でかい?
それも分からない。
彼女に触れて、彼女がどんな人物なのか知りたい。
「それはできないー」
「えっ!?」
「だから、それは出来ないってー」
「だって、そんなことしたらセクハラじゃん!?」
こいつはどうやら俺の心を読めているようだった。
「どうやらビックリしているようだねー」
俺は包みでる声を塞いで図星を防ぐ。
「心を読めるので?」
俺は聞いてみた。
興味本位だ。
「いーや」
「そんなことできないよー」
「そんなこと出来たらすごいよー笑」
いや、こいつは俺の心を読めるはずだ。
「だからー読めないってー」
俺の心の声が読めてるようだった。
「読めるというか、予想してる 笑」
彼女の笑顔は素晴らしい。
見えないが、ニタニタという微笑みが触覚、嗅覚、聴覚という五感のうち三つを震わせて来るのが伝わってくる気がした。
それで、素晴らしい笑顔の持ち主ということはわかった気がした。
「……」
でもどうやら、心が読めるというのは違うようだ。
単純に予想しているだけだという。
だとしても、なぜ俺の考えていることが予想できるのだ?
「だってーそれは……ひみつー」
彼女は激しく笑った。
俺は彼女について知りたい思いで聞いた。
「君は何者?」
「君の理解者」
俺は理解できない回答にイラッとして、立て続けに聞いてみた。
「お名前は?」
「そーねー」
「なんでもいいよー」
イラッ。
「じゃあ君の髪型は?」
「当ててみてー」
イライラッ。
もうやけくそだった。
「ここはどこ?」
「くらやみー」
「前言ってた、石盤とは?」
「とりあえず、行ってみー」
「俺は死んだのか?」
「あとで確認してー」
イライライラッ。
「じゃあ前みたいにMP回復してくれ」
「何のことー? 疲れちゃったー」
「俺はこれからどうすればいい?」
「それ前も言ったー」
彼女の口調もだんだん適当になっていることが窺えた。
「君のカップー!!」
「Eカップ!」
それからも何度か質問したが、わかったのは胸のカップ数のみだった。
疲れた。
会話を続けてどれくらいの時間が経過したのか分からないが、人との会話って楽しいって感じた。
なぜ、またこの暗闇にたどり着き、彼女が再び現れたのかは分からない。
疲れきった体を伸ばしてぐ~たらしていると再び助言をくれた。
「しょーがないわねー」
「そうねーあえて言うなら、あなたはこれからいくつもの試練に立ち向かうかもしれません」
どことなく、口調が穏やかになった気がした。
それは彼女が本気のお話ということが明らかだった。
「詳しくは言えません。言えないというか言わない方がいいのかもしれません」
「なぜなら、あなたが決めることだから」
「今はまだあなたには力が足りません。自分の力を把握し、意識しながら大都市 センティアにある石盤に向かってください」
「センティア」
聞いた事のある?無いような名だ。
俺の過去の記憶に眠っているのかもしれない。
「その石版には何が?」
「言うつもりは無いですが、まあ、いいでしょう」
「あなたの力が示されています」
「決して、過信してはいけない」
「そのセンティアであなたの力を示すのです」
コツコツっと、靴底が地面を叩く音と遠のいていく声。
それは彼女とのお別れを意味していた。
「もう…もしかしたらこの場で会うことは無いかもしれません」
「ちょっと待って……」
俺は手を伸ばして彼女を追う。
暗闇の中、あてずっぽの動作から恐怖すら感じず、とにかく彼女に触れたかった。
すると、彼女がキュッと靴をスリップさせる音と共に、触覚が際立った。
正面から抱きしめてきた。
この香り、石鹸の香り。
髪の毛は少し長い。
胸の辺りか?
胸自体もかなり大きい。
身長も俺の胸の位置くらいの高さ。
背中に腕を回されて、少し苦しかったが、自然と俺も彼女の体を抱きしめた。
やはり彼女は極上の女性なのかもしれない。
想像というのは恐ろしいものだ。
顔も知らない。
どんな人物かも知らない。
そもそも会ったこともないのだ。
それなのに人間の想像というものは良い方向に考えてしまう傾向にある。
それが俺の体の血を騒ぎだした。
そして、フル勃起した。




