第六十話「王級 炎系魔法 ハイライズフレイム」
暗闇でもこちら側の動きを把握出来る。
それは夜行性の獣人族によることだ。
それを理由に俺の居場所が的確にわかるように、ファイヤーボールを交わしたり、防いだりしていた。
それを逆手に取る。
逆に良く見えているという習性を活かしながら俺は戦うことにした。
周りに樹木がある中で走り回っているさなか。
ガバリオンが俺の事を一瞬見失う瞬間がある。
こちらも同じだが、それは樹木と重なる時だ。
俺が樹木に重なって一瞬見失う時、俺の姿は見えなくなる。
その瞬間を俺は狙った。
見えなくなる瞬間を見て、分身を何体か創造。
暗闇でも見えるガバリオンは走り回っている俺にしか把握していない。
そのため、意識していないところからの攻撃は交わしようがないはず。
分身を位置したのはガバリオンから見て前後左右。
本体の俺は走り回りながら撹乱。
分身にファイヤーボールを連発させて、防ぎようのない四方八方からのファイヤーボールであった。
そして、ファイヤーボールはガバリオンに衝撃を加えた。
その拍子に、次々放つ。
防いだところで、違う方向から迫ってくるファイヤーボールに防ぎようがない。
意識があるガバリオンなら、脚力を利用して上空に一旦逃げるか、真っ向的に直接ファイヤーボールを放つところに攻撃を畳み込むと思うが、ガバリオンの意識を奪っている刀剣にそんな考えはないようだった。
なぜなら、ガバリオンがどれだけ傷めつけられようが、刀剣にダメージはないと思うから。
どれだけ、ダメージを与えられているのかそれすら把握していないからだ。
そして、隙が生じた。
ファイヤーボールを分身に撃ち続けさせ、俺はガバリオンに目の前に寄った。
簡単だった。
なんの造作もない。
2メートルと距離を詰めたあと、ファイヤーボールは止んだ。
まだ、ファイヤーボールによる粉塵が残るさなか、俺はガバリオンの顔面に右腕を構えた。
ガバリオンの表情は変わらず、左腕以外全てが氷漬けになっていた。
氷の進行は着々だった。
ここまで氷漬けにされて動いていることすら疑わしいが、現実だ。
透明度の高い氷の内部にガバリオンの表情を受け取れるが生気がない。
やはり、刀剣に意識を持っていかれている。
変わり果てた姿に俺は少し恐怖した。
ここまで人格と姿を変貌させる刀剣に怒りが増した。
別にガバリオンに対して行うことではない。
どんな攻撃をしようと、こいつと戦うことはお互いに承諾した。
なんと言われようが、これは戦いである。
勝ちに徹した戦い方をした方が勝ちなのだ。
俺が目の前に来ていることに気づくまで、時間がかかっているように思えた。
嗅覚も感覚も奪われている中、ガバリオンの最大の強みはもうほとんど残っていない。
残っているとすれば、強靭な肉体。
俺は時間が許す限りためにためた。
右腕に魔力を最大限までに高めて、ゼロ距離から炎系魔法の玉を具現化。
赤色から青色に変化する玉は高熱を帯びている。
ゼロ距離からの攻撃は俺にも影響が出るほどの威力だが、そんなことは考えてなかった。
一応、魔法結界の魔法陣を張り巡らせたがダメージはそこそこくらうだろう。
周囲の氷がみるみるうちに溶けて、その高熱度を窺わせる。
まだ発射していないが、ほぼゼロ距離からの炎は、微量だがガバリオンの体の氷も溶け始めていたるように感じた。
俺は迷った。
本当にこれを放っていいのか?
いや、そんな余裕は無い。
どの道これを放たないと終わりがない。
甲高い金属音が響き渡り
俺は一発の炎系魔法を放った。
王級 炎系魔法
「ハイライズフレイム」
一直線に高熱を帯びた炎の光線がガバリオンに発射された。
体毛を焼き、樹木を焼き、周囲の氷を蒸発させながら、ガバリオンは光線により飛ばされた。
俺はしばらく魔法を解除しなかった。
跡形もなく、刀剣もろとも焼き切るためだ。
手応えは確実にあった。
戦友との別れ?
ある意味複雑だ。




