第五十九話「氷のフィールド」
一瞬のうちに開けた場所は氷の国へと変貌した。
無幻樹もそのうちの一つだ。
樹木全てが凍結し、まるで氷の剣山化。
氷柱垂れ落ちて、まるでこれこそクリスマスツリーだろう。
正直綺麗だった。
無幻樹に点っていた炎が氷で消火。
遺体や生き残っていた兵士も凍結した。
これで一応、村を襲った兵士は全滅と言える。
ところで、村のみんなは大丈夫なのか?
無幻樹の内部まで完全に凍結しているとは思わないが、扉も全ての表面が凍結している。
内側から出てくることは不可能。
まずはこいつを倒して、皆を救出。
と、言っている場合でもない。
俺は暗闇の森に姿を隠した。
木の影に背中を預けて息を潜めた。
白い息が出る。
冷気がここまで漂って寒い。
先程居た場所から500メートルまで離れた。
ここまで離れているのに、冷気が漂ってくるということは、広範囲すぎるということ。
近距離勝負にはやつに分がある。
いや、遠距離勝負にもやつに分があると言った方が得策だろうか?
真っ向勝負?
冗談だろ?
広範囲すぎる凍結魔法に俺は飽き飽きした。
くらったら終わり?
その通り、くらったら死ぬ。
樹木を陰に後方を確認。
見るからに暗闇。
聞こえてくるのは、パリンパリンと氷を割るような音。
それがどんどん近づいてくる。
暗闇から少しだけ光が差し込んだ。
歩く度に、足の裏から地面が凍結している。
ガバリオンだった。
表情は確認できない。
時折止まったりして俺を探しているようだっだ。
運良く風向きは追い風。
こちらの匂いはあちらにはいかない。
とにかく俺は息を潜めて状況を窺った。
すると、頬に冷たさを感じた。
なんだと思い、左手で拭った。
水滴?
俺の黒い服に白い結晶がふわりふわりと付着し始めた。
雪だった。
暗くてよく見えなかったが、だいぶ、暗闇に目が慣れてきた。
周囲の枝葉には白い雪が乗っていた。
天候にまで影響を与える強力な魔法だということが確認できた。
そして、雪と戯れるさなか、一瞬にして全身に鳥肌が立った。
天候の変化、気温の変化、恐ろしい程に緊迫したこの状況。
寒いからではなく悪寒がしたのだ。
木の影から再び後方を確認する。
そこには先程までなかった、毛深い足が確認できた。
足音すら聞こえなかった。
気配もだ。
毛深い足を辿って恐る恐る視線を上に向けると、
背にしている樹木から覗き入れるように、こちらをイカれた目つきで覗き込むガバリオンがいた。
まるでホラーだった。
すぐさま、女の子のように叫びを入れてやろうとしたがそんなことはしなかった。
というよりも、出なかった。
表情はヨダレを垂らして白目、意識が飛んでいるようだった。
先程まで、右腕と顔の半分が凍結したガバリオンだったが、右腕と顔は変わらず、ほぼ全ての胴体が侵食されている状態だった。
彼の意識はもう無いように感じた。
ブランブランにさせた右腕を大きくスライド。
刀剣を俺めがけて振った。
樹木を真っ二つにした後、樹木の断面はもちろん触れたら樹木が一瞬のうちに氷結ツリーへ。
続けて俺を襲う。
対角線に入らないことを意識し、持っていた刀剣で防ぎつつ、体だけ伏せて避けた。
すぐに交わった俺の剣も凍結化してすぐさまその剣を手放した。
何本創造しても、一度交わったら使い捨て。
これじゃあ戦いにならない。
腕力もガバリオンが上だっだ。
刀剣を防いだ衝撃に飛ばされた。
ガバリオンはもう一度大きく溜めて刀剣を振った。
次は直径1メートル程の大きな鋭くとがった氷柱が俺に飛ばされてきた。
まだ飛ばされて俺は空中にいた。
対応しきれないと思い、無詠唱魔法でファイヤーボールを生成後、撃ち放つ。
氷柱とファイヤーボールは交えた。
お互いの魔法が消滅後、ガバリオンは次の氷柱を間髪入れずに俺に向けてきた。
空中で交わすことができなかったが、つぎは交わせれる。
周囲の樹木を上手く使いながら交わした。
氷柱は樹木を粉砕後、氷漬け。
地面に突き刺さろうにも地面が氷漬け。
ここの森のフィールドを氷のフィールドへ変貌させようとでもしているようだった。
とにかく俺はガバリオンの周囲を走り回りながら撹乱。
暗闇からファイヤーボール連発。
最初は避けられていたが、徐々に当たり始めた。
それはなぜか、俺の作戦だ。




