第六話「埋め込まれた力」
数十分前
森の中――
アナ4歳。
倒れている青年にアナは自身の魔法を試してみることにした。
慌てることなく教えてもらったことを慎重に。
と、アナは考えていると
あれ?
回復の魔法そもそも教えてもらってないよ…
アナは冷や汗がダラダラと流れ始ていた。
【回想】
アナ「私がみます」
そんな勢いで言ってしまった言葉に少し後悔していると、青年の息がさらに上がり苦しそうにもがき始めた。
間に合わない。
どうしよう。
私が殺すようなもの。
さらに困惑するアナは深く深呼吸を三回――
とにかく落ち着いて。
と自分に何度も問いかけながら、回復魔法を見たこともやった事もないがやったことないのなら、やって見ればいい。
才能なんて関係ない。
人の命がかかっているこの状況下に弱音なんて履いていられない。
落ち着きを取り戻したアナは目を瞑りイメージから入った。
自身の魔力を感じながら魔力を治癒に物質転換し流し込んでいくイメージ。
治したい救いたいというイメージも込めて青年の胸に両手を置いた。
イメージ――
そしてこの青年を絶対に助けたいと願った。
少しでもみんなの役に立つ。私はやればできる子。
すると、アナの心から伝わる何か、燃える熱いエネルギーのようなものが心臓を伝わって両腕に流れているのが感じ取れる。
魔力だ。
恐る恐る目を開けると、黄緑色に輝く光が青年を包み癒しを与えていた。
アナは目を疑ったが、明らかに自身の両手から発せられている温もりとエネルギーが感じ取れた。
温かい―
なんて温かいんだ。
それに気持ちがいい。
健やかになっていくのが感じ。
これが回復魔法。
基礎魔法と感覚がまるで違う。
青年の傷や疲労、顔色が徐々に戻っていく。
時間はかかるかもしれないが落ち着いて。
アナは油断せず全力で魔力を注いだ。
×××
大男が歩く。
「ドスンドスン」
大男に全力で殴られ飛ばされた。
そして燃える家に飛ばされた。
ものすごい鈍い音とともに。
そして、大男は笑った。
慎重にも堂々と飛ばした家の前に仁王立ちしてやがる。
「くたばったか?」
そう口ずさんだ。
100%。
拳の威力が叩き込まれ、吐血。
燃える家に突っ込む。
普通に考えたら死ぬ。
大男にも手ごたえはあったようだ。
顔が喜んでいる。
体への衝撃波はそれほどのものだと自覚しているようだ。
だが念のため、念のために、くたばったことは確認しときたいと顔を歪ませていた。
大男の性格の上なのか、それとも少し違和感を抱いたのか?
普通の老害ではない俺を気にかける素振りを繰り出した。
二十秒ほど大男の仁王立ちが経過――
大男は額に出る汗をぬぐった。
そして一息。
安堵の表情と共に燃える家の残骸に向かって唾を吐いて立ち去ろうとした。
「ガタガタガタ ズドーン」
燃える家が崩れ落ちた。
その物音に「まさか…」と残骸に振り向く。
ただ崩れただけ、一瞬ヒヤリ。
だが、念のためまた二十秒残骸を凝視。
二十秒経過後――
再び安堵の表情と共に去る。
が……
「パンッ……パンッ」
俺はタイミングを見計らった。
服にこびりついた着いた炭や砂を払った。
また、燃える瓦礫の上を素足で歩いた。
三度目の振り向きと共に顔の毛穴から大量の汗がダラダラと流れてきている。
「はあー?」
俺は平気そうな顔をしながら大男の方へ歩いていく。
吐血した際の血液が口元に付着してしまった。
簡単に右手で拭う。
驚きはしているが、想定内の大男。
表情を取り戻した。。
「いやー今のパンチは効いたよ」
とりあえず相手を愚弄した。
肩を回しながらストレッチ。
服は破けてしまった。
そのおかげで皆に肉体美を見てもらえる。
瓦礫の上に乗って、高い傾斜から見下ろしてやった。
「殴られた時は普通に痛かった。死ぬかと思った。だが、弟子が色々とこの体をいじったみたいだ」
自動修正能力の向上(特系魔法)
ルーシーが仕掛けた魔法のようだ。
傷口から白い煙が発生。
体の傷、内部の損傷が治癒されていく。
受けた傷などある程度の外傷であれば時間の経過とともに治癒していく。
という言ったところか?
不死身に近いな。
「流石は私の弟子だよ。見たことない魔法ばかりだ」
一応、傷口がすべて治癒されていくのか組まなく確認。
「今まで気づかなかったが、こうしてダメージを受けたことによって覚醒したのか何なのか、今はなんでも出来そうな気分なんだ」
気持ちも治癒するようだ。
「例えば、ほら」
腕を燃えている家に向ける。
「イマジネーション ハリケーン」
家が吹き飛ぶほどの大竜巻を披露した。
巻き上がる残骸と風を操りながら、竜巻ごと残骸を大男に向けて飛ばす。
「こんなもの!」
残骸の石や魔物の骨、木材などが大男に向けて発射。
彼の拳の連打から繰り出される衝撃波が残骸を粉々に消し飛ばした。
北斗百裂拳をお見舞するように、何個にも残像する腕。
「苦手な系統魔法もこんな易々と…」
彼が残骸を吹き飛ばそうがそんなことは眼中になかった。
なぜなら、俺自身の力に見とれたからだ。
彼の存在を忘れかけそうになっていた。
「ハァハァ…」 流石に息切れ。
「ヘッ その程度の攻撃 俺には通用しねー」
「他にも色々と細工してくれてるみたいだ」
炎が点火する音に似ている。
「ボッ」という効果音と共に俺の周りに色とりどりの五つの魔法陣が召喚された。
水(水色) 炎(赤) 土(茶色) 雷(黄色) 風(黄緑)
五系統の魔法陣が上下左右に浮かび取り囲む。
そこから太く鈍い音とともに魔法陣の色が濃く変色。
エネルギーが溜まっていくのが見てわかる。
そして、俺は子犬のようにか弱く見える大男を見下しながら。
順番に魔法を発動。
特系魔法【五つの系統魔法を同時にしようする能力】
【水系魔法】
ウォータージェット如く、高水圧で発射された水が地面を砕きながら大男のへ一直線。
左肩を切断。
【炎系魔法】
青色の高火力の炎が渦を巻きながら大男へ発射された。
焼き尽くす。
左肩を切断され炎で焼く。
体から黒い煙が発生。
黒く焼かれた肌。
炎系魔法のおかげか、左肩の傷口はすぐに止血されているようだった。。
自身の命の終わりを確信し、抵抗はしない。これが力の差。
【土系魔法】
泥魔人の召喚。
魔法陣から放たれた光が大男のそばの地面に当てられた。
土で作られた人型の鎧を着た魔人が生成。
魔人は大男に覆い被さると自身の身体の泥を変形させ、大男へまとわり身動きの取れないよう、手足身体の動きを封じた。
【雷系魔法】
魔法陣が発する光が天高く、空へと打ち上がった。
そこから雲行きが悪くなる。
「ゴロゴロ」と雷模様を表し、「ドカーン」と高音を響きながら、雷の槍が大男と泥魔人の身体を三本貫いた。
そこから身体へ高電力の雷が大男を感電させる。
悲鳴などない。命の終わりだ。
最後は派手に風系魔法をぶっぱなそうと……
弁慶の如く、仁王立ちのまま心音が静かに……
まだ、微かに息がようだ。
ただ一点を見つめ、この後何をされようと動けない。
「もう終わりですか?」
優しく問いかけてやった。
「……」
「仕舞いですね」
何も発しようとしない。
発せられない。
「メキメキ」っと大男の身体から奇妙な音が。
「最後に、お前が飲み込んだ弾薬は少し特殊なものでして、魔力を吸収する能力を持つ弾薬だ」
体に異変が及んでいることを感じた。
苦しい。息が、、
膝が崩れ、力がどっと抜ける。
そして、魔力が吸収されることにより、筋肉や脂肪がやせ細り、図体だけが取り柄だった大男。
徐々にミイラのように骨と皮になっていく。
醜い―
五つの魔術を繰り出したが、今になってはその魔法を使用したことは無意味だったかもしれない。
どの道、最初に飲み込んだ弾薬で戦闘不能になっていた可能性が高いからだ。
それを見込んで力ただ確かめたかった。
敵とはいえ、そんなことは口が裂けても言えない。
言いずらい。
根嫌いだ。
ミイラ化した大男は最後の力らを振り絞った。
自身の身体を触って確認。
俺に顔を向けた。
一瞬。
俺は察して、男のそばについた。
男の目は見開いた
俺は落ちていた剣をゆっくり拾った。
これで片を付けよう。
しまいだ。
「お前は見た目と違い冷静だが、力の差がありすぎた」
「スパンッ」
男の首を切り落とした。
迷いはなかった。
これまでの一連を見ていた山賊の子分たち。
今になってやっと声を発した。
それもそうだろう。
割って入れるわけが無い。
レベルの違い。
「お頭が死んだ…」
山賊の残党たちが怯えながら走り去っていく。
中には、お頭に対して感情移入した者はいたが、すぐさま剣で真っ二つ。
俺は冷酷な表情で、逃げ回る山賊を確認すると空中に再び魔法陣を出現させた。
【召喚魔法】
直径三メートル程の魔法陣から「シャーッ」と鳴き声と光とともに天より舞い降りるニョロニョロ。
ベトベトと粘りが強い体液を地面に撒き散らしながら降臨。
赤い大蛇の魔物を召喚。
その使い魔の大蛇は山賊達のあとをものすごいスピードで身体を蛇行させながら前方を取った。
一人ずつ丸呑みしていくと、ものすごいアジリティで岩やせっかく作った塀を一部壊しながら山賊の残党たちを全て丸呑み。
最後は大男の亡骸を捕食。
「がぶり」と―




