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第五十七話「覚悟」


 人間から作られた刀剣というのはまだ謎が深い。

 ドワールの研究は間違っていなかったのかもしれない。

 その者が望むのであればだが。


 実験の数はどれくらいに上るものなのか分からないが、命を使い回す行為というものが、決してあってはならない。

 そう思うのは人それぞれ。

 ただそれは、使用者にとってそれなりのデメリットやリスクもあることがいま確認できた気がした。


 使用者にとって適合する刀剣というものは、馴染み、お互いを理解し合うように力の源になり得るのかもしれない。

 それは、刀剣は生きている。

 という、証明の元だ。


 以前、使用していた【刀剣・皇帝】は、ガバリオンに対し、非常にマッチしていたのかもしれない。

 今の刀剣と比べると明らかに共にしている年月というものが違う。

 体に拒絶反応というものは発生していなかった。


 自身と刀剣の魂というものが、意思疎通してやっとの思いで、拒絶反応をせずにベストの戦いを生み出すことが出来るのか?


 もしかしたら、これから今の刀剣を使う事に慣らしていけばいいのかもしれない。


 今のガバリオンを見てみると、明らかに拒絶反応と言える状態と見ている。


 右腕を完全に氷の結晶化。

 細部にまで研ぎ澄ませて見ると、首筋から顔にかけて氷が侵食してきているように窺える。


 まるで生きている氷だ。

 それもそうだ。

 人間から作っているのだからな。

 それだけ、その刀剣はガバリオンが嫌いなのだろう。

 昔なにか蟠りでもあったのだろう。


 この流れから時間と共に浸食し続けて、命を奪い取るまでに至るかもしれない。

 右腕が明らかに膨れ上がって赤く炎症を起こしている。

 凍結壊死。


 この人間から作られた刀剣というものは、メリットだけではなく、デメリットも多く、多大にあるということになる。


 つまりどういうことか。

 完璧ではない。

 主流になることも無く。

 多大で無駄な哀憫だ。


 俺はガバリオンが惨めだった。

 ある意味、お前がドワールの実験体では無いのか?


 実験体が実験体を使う。

 ただ単に、ドワールに踊ろされているだけではないか?


 本当にお前はそれでいいのか?

 プライドがピカイチに高い獣人族。

 お前の生きゆく場所はこんなところでは無い。


 そんな言葉をかけてやりたいが、プライドが邪魔をして聞く気にもならないだろう。

 俺を殺しに来ている。

 その為だけにお前は俺の前にいるのだろう?


 付け焼き刃の刀剣は話にならない。

 今のお前に敗北する俺ではない。


 目先の目的のために、リスクをおってでも狩り尽くすその信念は邪魔なだけだ。

 強き者が踊らされてはもう何も残らない。

 これからも歩むことすらできないであろう。

 今すぐ薄汚れた信念を捨てて戻ってこい。

 後戻り出来なくなる。


 何度も言うが、こんな言葉をかけてやりたいのは山々なのだが、逆効果であろう。

 なら、本当にこいつを殺すしかないのだろうか?


 たが、伝えないことには始まらない。


「忠告だ。命令や指図ではない。 今すぐその刀剣から手を離した方がいい。このままだとその刀剣に、心も体もお前の野望も全て取り込まれるぞ」


「そうだな……」


 ガバリオンは自身に取り付いている刀剣を一瞥。


 やけに素直だ。

 ガバリオンの反応に少し驚いた。


 ガバリオンは非常に息を切らしてきた。

 その息は白く濁っている。

 寒くもないのに。


 単純に考えるとこうだ。

 ガバリオンの周囲何メートルかの外気はおそらく真冬並みの温度になっているんだ。

 それも刀剣の影響。


 ただの人族ならとっくの昔に凍死していることであろう。

 モフモフの体毛がデカい図体を外気から熱を守っている。


 息を切らす理由。

 刀剣から魔力を吸い込まれるという訳では無さそうだ。

 そう聞いている。

 ならなぜ息を切らしているのか。

 寒さで体力を奪われやすくなっているのだ。

 低体温症。


 少しの動作でも体力が奪われやすくなっている。

 ここまで考えたらメリットやベネフィットがまるでない。

 デメリットとリスクしかないでは無いか。


 ただ単純に使用者を苦しめる死の異物。

 異端者だ。


「だが、どうやらこの刀剣から手を離すことはできないようだ。もう俺を取り込み始めてる」


「!」


「ガチガチに固まって動かすことも出来ない」

「まあ、これも一興。ただ強き者と戦い勝つことが俺の生きがい。だったらこんなことも我慢出来る。俺はお前と戦うことが出来ればこの命だってどうでもいいと思っている」

「最後まで付き合ってくれよ」


 ガバリオンの表情や言葉を見る限り、諦めの雰囲気を醸し出しているように感じた。

 自身の命がどうとか言っているやつに対して、俺はどうでも良い。

 そのものの自由だ。

 好きにすればいい。


 正式に決闘を挑まれたことに、ガバリオンの決意を感じた。

 死に直結する戦闘と言える。

 長く戦えば明らかにガバリオンの不利と言える。

 たとえ、瞬時に戦いが済み、俺が敗北しようが、ガバリオンはいずれ命を落とすことだろう。


 だったらこの戦いは無意味では?


 それは、ガバリオンにとって侮辱の言葉だ。


 せめてもの救い。

 俺がガバリオンと戦い最終的な決着をつけること。

 これが本当に最後。

 これがお互いにとっての条理。

 これが最後の戦いだ。


「どちらかの命が尽きるまでやりきろう」


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