第五十六話「氷結」
失態。
ガバリオンを見失った。
だが、姿と殺意は消している。
見つかりっこない。
それに、ガバリオンの頭の中には、俺は王宮へいることになっている。……はず。
俺がこの場にいることは予想してないと見ている。
ガバリオンが次出てくるとすれば、分身の俺へ攻撃する時。
俺の分身は触らないと分身だと分からないほど鮮明にできている。
おそらく、先に分身の背後を取り、叩く。
単純だ。
あいつの攻撃の道筋が分かる。
でも、念の為だ、あいつが今どこにいるのか把握しときたい。
あとの連隊は分身に任せて、ガバリオンの索敵に回る。
空間認識魔法で探そう。
……いや、待てよ。
ガバリオンは獣人族。
あいつはそもそも何を主体とした獣人族だ?
仮にネコ科動物と仮定した場合。
夜行性動物は夜でも鮮明に周囲を認識できると聞いたことある。
確か、わずかな光でも二倍にして、暗いところでも鮮明に見えるという……
いやそんな確率的な考え……
背後に殺意と気配。
俺の考えが的中した時だった。
背後に高速の突きが迫ってきた。
ビーストモード化したガハリオンだった。
空間認識魔法を使わずとも、殺気でわかった。
本体である俺の背後を取り、鋭く尖った爪で俺につき攻撃。
早く気づいてよかった。
俺は瞬時に登っていた木を盾に。
だが、恐ろしく強いその突き攻撃は、樹木も簡単に粉砕してきた。
こんなことは想定済み。
樹木のくずが俺に降り注いだが、空中で体勢を整えて何とか地面に着地。
着地と同時に兵士の死体を踏んでしまい、体勢を崩した途端、ガバリオンの次なる攻撃。
地面に散らばった、死体を俺に投げつけて、視界潰しと体勢の拒絶。
左手の鋭い爪で地面を削り取りながら、俺へアッパー気味のクロー。
申し訳ないが、投げつけてきた死体を間に挟みガード。
遺体が着ていた甲冑が瞬時に砕け散り、俺と死体を50メートルほど飛ばした。
三度目の畳み掛ける攻撃を予想して、俺は空中で右手に。
【デザートイーグル.50AE】を生成。
最強のハンドガンだ。
反動はデカいが、殺傷能力がある。
迫り来るガバリオンに引き金をかけて、五発発射。
「ドンッドンッドンッドンッドンッ」
全てかわされた。
「!?」
予測線を読まれた?
今のガバリオンの動きはおかしい。
俺の右手に違和感を悟ったように体の動き。
右手を銃のグリップに持つ形に入った瞬間、地面を蹴って左右に揺さぶる。
俺への対処も把握済みってことか?
魔法使いへの対処といったところ。
以前と比べ戦い方に冷静さがあった。
先程の怒号の始まりとは違い、俺との戦いは慎重に見えた。
獣人族のスピード桁違い。
左右に揺さぶるレレレ。
俺のエイムが追って弾丸を発射するが全て避けられてしまう。
足踏みの速さと、足の筋肉の発達により、可能としたアジリティ主体のインファイト。
デザートイーグルの弾薬数は9。
カチッと弾切れと見るや、左右に揺さぶる動きから、上下へ変更。
俺に詰寄ると共に、密かに腰に携えていた刀剣を抜剣。
俺へ振りかぶる。
俺はすぐにデザートイーグルを捨てて、剣を生成しガバリオンの刃と混じりあった。
さすがに馬鹿力。
俺は押しつぶされそうになったが、何とか耐えた。
ところが、ガバリオンの刀剣は不気味だった。
綺麗な水色の透き通る刃に、グリップには霜が降りていた。
よく見ると、刀剣を持っているガバリオンの右腕も霜が降りていて、右腕が赤く変色していた。
混じり合う俺の剣にも異変が起きていた。
冷気が漂い、俺の剣が凍り始めた。
異変を感じて、左足でガバリオンの腹を蹴飛ばしすぐさま距離を取った。
混じりあった時に迫ってきた冷たい感覚は、剣と俺の指先にまで迫っていた。
氷?
ガバリオンに一瞥すると、右腕の肩にまで、氷に侵食されて統一化されているようだった。
考える必要もなく、この刀剣の正体が一体何なのかわかった。
人間から作られた刀剣。




