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第五十四話「緊迫した瞬間からの一撃」


 ガバリオン到着後、現場は荒れていた。


「ここへいらっしゃるとは聞いてません」

「なぜここにいらっしゃるのです!」


「あなたの傷はまだ癒えてないはず、傷口がお開きになります!!」



 ガバリオンの傷はまだ癒えていないと思う。

 治癒力が半端のない化け物なら別の話だが、それは定かではない。

 国の兵士にまで、獣人族ということは知られていないのかもしれない。



「うるせぇー」

「あいつが国に捕まっている以上、俺はあいつに手出しできねー。だったらあいつの片割れの村の連中を俺が殺すまでだ」


「しかし、この門、想像以上に頑丈でビクともしません」


「だから、俺が来たんだろうが!!」


 兵士たちはたじろいでいた。

 ここへ来た安易な理由だ。


 厄介な人物が来たことに俺の計算が狂ってくる。

 どうすればこの現場を打破することができるのか。

 やはり、こいつが来た以上、こいつと再び戦うしかない。



 兵の後方が騒がしいことに気づいた隊長は、ガバリオンに堂々と近づいていった。


「なんですか? なんですかー?」


 二人は対峙した様子だった。

 身長差がありすぎるように見える。

 よく見るも、隊長の身長は低かった。

 150センチ程度であろうか。

 ガバリオンの身長はおよそ180センチ以上。

 体格差に差があったが、隊長は毅然とした態度。


 正直この隊長には権力はあるが力はないと見える。

 体格差はもちろん。

 こういう威張っているやつほど、弱いという相場が決まっている。


「ガハリオン殿。なぜここへ?」


「はあ? テメェーらがチンたらしてっからだろ?」

「さっさと門をぶちやぶれや!」


「いえ、至って順調ですが……」


 二人は睨み合っていた。


「どこが?」


「ええ、いま樹木を焼き払って出てきてもらおうと」


「お前バカか、時間がかかりすぎんだよ」

「どうせ殺すなら、豪快にやれ!」

「どいてろ。俺が門をぶち破る」


 やはりな。


「それは困るのですよ」


「はぁ?」


 ガバリオンは睨みをきかす。


「これは私に命令された役目。あなたごときご踏み込んで良いことでは無いのですよ」

「分かってはいると思いますが、あなたのダメなところは、その乱暴さですよ」

「いい加減大人になってください」


「いや、分かろうともしないですし、そもそもわからないですか!? そんな低い知能と脳みそでは……」

「ということで、さっさと国へ戻って【毛ずくろい】でもしていなさい」


 隊長は高笑いをしながら前線へ歩き出した。


 おそらく、その隊長の言葉が引き金になったのであろう。

 無能な指揮を執ることへもイライラが立っていたのであろう。

 ガバリオンの表情は無へ変わっているように感じた。


 一度対峙した俺にならわかる。

 ガバリオンの怒りの引き金を引いたことを。

 みるみるうちに獣型に。

 ビーストモードに。


 一瞬だった。

 ぺちゃんこだった。


 ガバリオンは味方であろう隊長の頭を、右腕で垂直に押し潰した。


 言うまでもなく、ハンバーガー状態で死亡。

 原型もなく、そもそも、こうなる前はどんな状況だったのかすら想像がつかない無惨な死に方だった。


 ハンバーガーからはソースと思われる血液がおびただしく出ていた。


 隊長が殺される一面を見ていた周りの兵士は恐怖し、生唾を飲んでいた。


「これで隊長はいない。ここからは俺が隊長だ」


 兵士から声は一言も発せられなかった。


「いいな!」


 睨みを利かした。


 ガバリオンの掛け声とともに一斉に声が出た。


 突然だった。

 この気を逃さず、タイミングを見ていた。

 ちょうど、殺そうとしていた隊長が死んでくれた。

 今が絶好のチャンス。


「!」


 ガバリオンのこめかみをかすめた。

 こめかみにはマイナスの傷が記された。


 ガバリオンは目を丸くしていた。


 多分気づかれた。

 この一瞬の出来事の間に、瞬時に自分が狙われていることに勘づいたと見た。


 俺は舌打ちをして、外したことを確認し、一斉攻撃の体制に入った。



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