第五十話「戦闘の跡地は残骸だった。惨い」
遺体の山が村を蹂躙していた。
さっき躓いたのは遺体だった。
それに死んでいるからサーチにも反応しなかった。
ここでは俺が来る前から戦闘が行われ、死者が出ていたということになる。
もう既に戦いは始まっていたのだ。
間に合わなかった。
でも、それは考えていたこと。
間に合わないと知っていた。
間に合わないならどうするべきか考えるべきだ。
俺は辺り一面に遺体があることがわかったため、いち早く確認しときたいことがあった。
魔法で複数の火の玉を発生させて、周囲をできるだけ照らした。
まるで、空飛ぶ蛍のように綺麗な雰囲気をかもしだす。
死んだものへの追悼と言ったところか。
完璧に村全体を照らすととまではいかないが、遺体の顔などを確認できるまでの明るさを灯せた。
アバウトだが、早歩きで遺体を踏まぬよう、村をぐるぐる回って遺体の確認を行った。
それであることがわかった。
ほとんどが、エレスティン王国の兵士の遺体であるということだった。
およそ600体程度の遺体。
だいぶ上手く堅守した、守り抜くという気炎が感じ取れる。
甲冑を着た遺体。
馬の死体。
黒焦げに焼かれた兵士。
剣が突き刺さったまま倒れている遺体。
死に方は様々であったが、およそ98パーセントは王国の兵士であった。
残り2パーセントは村人と判断できた。
あくまで、大凡の見解だが。
見た事のある村人の遺体も確認できた。
何より、確かではないが、普段から親交があった、エバやアナが現段階で確認できていないことが少しほっとした部分でもある。
それとは別に、逆に確認できていないということは、不安も残る。
一安心とは思ってはいけない。
犠牲者が出ている。
俺がもう少し早く到着していれば助けられたかもしれない命が、そこにはあったということ。
俺は村人の遺体に両手を合わせた。
村人への償い、兵士への祈り。
捧げる事に怒りがフツフツと湧いてくる。
別にエレスティン王国の兵士も好んで殺し合いをしている者は少ないと思う。
行ってきたことが正義か悪か。
それはその土地柄や、すり込みによって環境下が違うことが影響して、認識や捉え方ももちろん違う。
一概にこいつらが悪いとは決して言えない。
悪いのはそもそもの元凶である上層部の人間。
と言うよりも王族? なのか?
ドワールを始めとする全ての元凶に後始末を行うことを俺は心へ決めた。
でも、一旦そんなことは忘れよう。
今俺がするべき行動は生きているであろう村人を救うこと。
と言っても、そもそも村人達はどこへ行ったのか。
姿形。
気配すら感じない。
みんな逃げたか?
だとしたら、兵士はどこへ?
それとも捕らえられている?
こんな大群を連れて隠れる場所などない。
俺はこの場で起きたことを推測した。
ここが戦いの始まりの地だと考えた時。
ここで戦闘が始まり、防戦一方と思われた村人が意外にも優勢?
遺体の数からしても、エレスティン王国の兵士は全滅というわけでは無さそうだが。
苦戦をしているように感じている。
指揮系統にかなりのダメージも受けていることは間違いない。
村人の防衛力と反撃力があまりにも機能しすぎて、突破口を掴めなかった。
それで痺れを切らし、全軍で突入。
村人は流石に対応しきれず後方へ下がった?
あくまで仮説として考えた。
そこでもし、後方に下がった場合、村人が逃げる場所とすれば……
「……無幻樹か」
俺は泥沼化された足場を確認しながら走った。
火の玉と共に走った。
足を取られてしまおうが、ずぶ濡れになりようが、遺体が邪魔をしていようが関係なくとにかく走った。
走る事に破壊された村の家々が確認でき、惨状が顕になる。
雨で炎が干上がった家。
先程ではないがここにも兵士の遺体がちらほら見えた。
今のところ村人の遺体は確認できない。
もしいたら申し訳ないと思ったが、今は急がなくてはならないため、祈りをしている暇はなかった。
俺が寝泊まりしていた家も確認できた。
そこには念の為、家内を確認した。
もしかしたらと考えたからだ。
運良く、ここの建物は生き残っていた。
半壊していたが何とか扉から入ることが出来そうだった。
数年寝泊まりしてきた家もあり、崩れかけた家に対して、少しネガティブになった。
勇気を振り絞って扉を開けた。
予想通りの展開であった。
家具や寝ていたベッドなどは全てぐちゃぐちゃに破壊されていた。
思い出の品々が全て無くなった。
拳をギュッと握りしめた。
三十秒ほど思い出の家と語り合いながら、ここを後にすることを俺は決めた。
だが、
「ガタッ」
物音が聞こえた。
瓦礫の下からだ。
俺は息を潜めた。
可能性として二つ。
敵国の兵士の存在と村人の生き残りの存在。
暗闇から聞こえた音は何より怖かった。
そのため火の玉を家中に張り巡らせた。
恐る恐る、その物音がする場所へ歩み寄った。
正直怖かった。
右手を構えて、すぐさま魔法で反撃できるように体勢は作った。
緊迫していた。
恐らく人間が瓦礫にいたとして当事者も心臓がバクバクしていることであろう。
無駄な詮索はできない。
俺は勇気を振り絞った。
音がした瓦礫をどかすため手にかけた。
途端。
その瓦礫ではなく、左脇の瓦礫から黒い影が俺にナイフを向けて突進してきた。
両手にしっかりと持ったナイフ。
どう見ても、扱いが浅い握りからだった。
火の玉の光とナイフの刃先が反射して屈折して俺の目元へ刺さり、対応が遅れた。
ようやく第五十話行きました。
まだまだ貯めてるのでこのまま二日に一投稿ペースで上げていきます。




