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第四十八話「行こう!」


 俺は心が洗われた。

 思いは伝わった。


 抱きしめる時間は少し長かった。

 一分程度だろうか。

 その間、変態の感情はない。

 勃起もなかった。


 俺は無言のまま腕を解くとモナを見つめた。

 モナは俺を見つめてきた。


 お互いの心が通じあった瞬間でもあった。

 これはもしかしたら接吻をするべき瞬間なのだろうかと俺は考えた。


 俺もそうだと思うが、彼女も頬を赤くして、眉をへの字に曲げていた。

 瞳はウルウルさせて、いかにも待っている。

 もしかしたら、彼女は感情的になっているのだろうか。

 そして彼女も接吻をしたいのだろうと俺は考えた。


 ここはやはり男から接吻をするべきであろうな。

 でないと嫌われてしまうのでは?


 俺は拳をギュット握りしめた。


 勇気が必要だ。

 女性との接吻は人生で初めて。

 記憶の中では初めてだ。

 娼館ではあったっけ?

 まあ、それはいい。


 お互いの気持ちがピッタリ揃っている。

 ここで、拒絶、逃げていてはダメだ。


 ダメ。ゼッタイ。


 万が一こんな表情をしているにもかかわらず、求めているのが接吻ではなかった場合……


 いや、何も考えずに挑もう。


 左手を彼女の頬へ当てた。

 当てた時、彼女はビクッと反応した。

 そして、目線をずらした。


「ごめん……」


 なんだ今の反応。

 もしかして、本当に処女……?


 再び、彼女は目を合してきた。

 再び頬に手を当てた。

 今度は反応無し。


 ここで彼女が拒絶しなかったことに、キスへのいざないと感じた。

 そして、ゆっくり顔を近づける。


 心拍数が格段に上昇しているのが分かる。

 バクバクバクバク。

 体中に感じる。

 俺は緊張している。


 彼女も察したように、ゆっくり目を閉じた。


 OKのサインゲーット。


 俺は確信した。

 今この瞬間、この時、新たな世界へ飛び出す瞬間を。


 その時、やはり勃起した。

 俺の体は正直なようだ。


 たとえ、目を閉じて俺の表情が分からないとはいえ、キモい顔で接吻をするのはダメだと思った。

 かっこいい顔で。

 唇は尖らせず、スマートに。


 薄目を開けて、モナの唇の位置を確認しながらゆっくり唇を近づけていった。


 あと15センチ、10センチ、5センチと距離が近づくにつれて、どうしても唇が尖ってしまう。


 まあ、でも、それでもいい。

 彼女は見ていないだろうし、接吻をするのは変わらない。

 初めての接吻というものはこんなものだろう。


 俺は覚悟を決めた。


 あと、3センチ…………


 1センチ――


 ありがとう……。




「パリンッガシャン」


 突然、ガラスが破壊される音が響いた。

 俺の接吻は遮断された。


 えっ? はぁぁぁ~~!


 俺は接吻を一旦やめた。


 モナも体をビクッとさせて驚いていた。


 なんだと!?

 俺は音がする方に顔を向けるとフォーが機材に体をおもいっきりぶつけて倒れていた。


 はぁ~~?

 なぜ?

 フォーが?


 俺は理解できなかった。

 なぜここへフォーが?


 フォーは酷く息を切らせて俺に念話を始めた。


『やっ……やっと…見つけました! ゼェーゼェー』

『む、むら……が襲われています!!』


 どうやら、フォーは村が襲われていることを確認し、俺を呼び戻しに走って来たそうだ。


 俺は心をまとめるのに時間がかかった。

 パーティーな瞬間を邪魔されたことに対し、フォーを殴ろうかと考えたが、今思えば一刻の猶予もないことを再度思い出した。


 今はこんなことをしている場合では無い。

 俺は勿体なく感じた。

 また再度、この感覚、この雰囲気を作り出すのは俺には一苦労だ。


 でも、しょうがないこと。

 モナもそれを望んでいるだろう。


 モナと目が合ってお互い恥ずかしそうにそっぽを向いた。


『はやく……はやく村へ……ゼェーゼェー』


 俺は、恥ずかしそうに期待していたモナの表情を受け取り、頭をポンっと撫でた。


「どうやら、行かなくてはいけなくなったようだ」


 モナは笑顔で頷いた。


「行ってくる」


 笑顔でモナへ答えた。


 するとモナも少しためた後、


「うっざぁ……行ってらっしゃい!」


 そう言ってくれた。



 気を取り直す。

 心機一転。

 気持ちを切り替えよう。


「フォー! 疲れているところすまないが村へ送ってくれ!」


 フォーは息をゼェーゼェーさせながら頷いた。

 だいぶきついだろうに。


 モナには反逆罪の可能性が出てくることも考えて、ドワールの対処を任せることにした。

 逃げてくれてもいい。

 ていうか、逃げてくれ。

 逃げた後、どこかで落ち合って、この続きはしよう。

 ウへヘヘ。


 まあ、そこは任せる。

 そこに関して俺は口出ししない。

 自分のやりたいようにしてくれと。


 伏せて少しでも体力の回復をしようとしているフォーに対し、回復魔法を行った。


 青い光が俺の右腕から、フォーの体包む。


「少しはこれで体力を回復してくれ」


 フォーは委ねるように包まれる。

 徐々に息の荒さが消えていく。

 時間がかかりそうだ。

 気休めにしかならないかも。


 俺の回復魔法ではアナのようにはいかないが、多少の変化はあるだろう。


『ここからどれくらいで村へ到着できる?』


『えーと…… ここに来るまで全力で40分くらいかかりました……』


『なら、20分で行ってくれ』


『わかりました……なんとか20分で……』


 フォーは驚きを見せていた。

 だが、断りはしないだろう。

 断れないからだ。


『すまない。頼む』


 俺は、心からフォーにお願いと頼み込む。

 今できる回復魔法を行ったのち、フォーは立ち上がった。


 俺はフォーの背中に勢いよく乗った。


「それじゃあ。またあとで」



 その意味は、あとでまた落ち合おうという意味なのか、接吻の続きをという意味なのか、どちらとも取れるが、俺は接吻の続きの意味で言った。

 感じ取ってくれたのだろうか?

 接吻の続きの約束を確約させたかったから俺は聞いてみたのだ。


 五秒間ほど、モナを見つめて、答えを求めた。


 するとモナは、勇気を振り絞ったのであろう。

 渾身の一撃を繰り出した。

 右手を自身の唇に軽く添えて、チュッと俺に投げかけてきた。

 これが【投げ接吻】というものだ。


 きたーーーー。

 確約きたーーーー。


 そして、モナは優しく手を振りかえしてくれた。


 俺は恥ずかしながら、投げ接吻の心に受け止めて平常心を保った。

 表情には出さず、心で納めているという感じだ。


 まだ、モナとは色々な話をしたい、ゾクゾクしている。


 手を振り返して

 俺とフォーは駆け出す。



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