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第五話「山賊との戦い方」

 悲鳴――


 黒い煙が村を包みつつある中、家々に炎が移り、建物の一部が焼け落ちる。


 魔物の毛皮を着た山賊達が村人を強引に襲っている。


 金目の物、食料、女性たちを次々と強奪し一箇所に集めていた。

 それを指揮している明らかに図体が違う筋肉に覆われた大男。

 黒い髭がパーマをあてたようにカールしている。

 それに長髪を後ろに束ね、ポニーテール。


 胸毛などの全身体毛が著しくうねりをあげる。まるで生きているようだ。



 この大男は絶対に童貞だ。




「奪えるもの全てを奪え!女も全てだ!」


 その大男の太く濃い掛け声と共に子分達が一斉に声を合わせた。




 抵抗する若い村の男達は自身の剣や魔法で応戦するも山賊一人一人が村人の力を凌駕し太刀打ちできない。


 抵抗できないまま時間だけが過ぎ、次々と殺される。




 以前のか弱い柵から丸太の壁に変貌をとげた村の障壁だったが、大男の力の前では小枝程度の強度のように丸太の障壁がぶち壊される。

 そこから山賊による奇襲が行われたと窺える。


 高台があるとはいえ、本来絶対の信頼を置いていた丸太の障壁がいとも簡単に破壊されるとは思っていなかったため警戒を怠ったのが原因だろう。




 蹂躙、殺人、強盗。


 ここまでされて我慢ができない。


 そう感じたのか一人の女性が大男の頬をいきなり平手打ち。

「バチンッ」とこだまするそのビンタはある意味効いただろう。

 大男の頬は少し赤く腫れた。


 実際のところ大男はこの程度の攻撃、簡単に避けられただろう。

 ただ、ここまでの犯罪を繰り返してせめての見返りと言わんばかりで大男は微笑んだ。


 そして、女性に対し気持ちの悪い顔で変顔。

 愚弄。



 平手打ちしたのは俺とひとつ屋根の下で暮らす一人の女性。

 惨劇を見ながらの平手打ちは勇気がいる。


 怯えて一箇所に集まる女性たちは皆思っただろう。



「もうやめて!」


 その叫びに一瞬時が止まったように、子分共々はその光景を凝視―


 大男は笑った。


 何も発さず、片手で軽々と女性の両手を掴み持ち上げる。

 この怪力。




「なにー?もう1回言ってみてー?」




 大男は女性の顔を自信のデカい顔に近づけた。

 その距離5センチ。




「臭い!やめて」

 女性を顔を避ける。




 それもそうだろう。

 山賊は風呂を入らないという。

 汗くさくてたまったもんじゃない。

 口臭も相当なものだ。

 ゲロより臭いという噂だ。




 近づけた顔を背ける女性の頬をベロベロと舐めまくる。

 性癖か?

 女性の顔はヨダレまみれ。

 不快。


 また、そのヨダレが乾いたあとそれ以上の激臭がするだろう。




 唾液攻撃によってダメージをくらったか、女性は弱々しい声で、

 「…やめて」


 汚く醜い行動に他の女性たちが声を荒らげて大男を静止させるが、山賊の子分たちがこれを静止。




 大男はさらに女性の両腕をさらに軽々持ち上げ、大男の顔が女性の胸元に

 Fカップ。


 そう、この女性はFカップの子。

 俺とひとつ屋根の下で暮らすFカップの子だ。



 大男はそのFカップに顔をうづめた。

 Fカップの嫌がる悲鳴に周囲の山賊の子分たちも下半身が熱くなる。




 弾みをきかすFカップが羨ましく美しい。

 大男が胸に顔をうづめ続けることによって、Fの横乳が徐々に顕に――


「いいね、いいね、その表情」

 Fは顔を赤らめていた。



×××



 壊された丸太が地面に散らばるその物陰に俺は村の状況を確認。

 大男に視線を寄せる。

 焼かれた村に、横たわる遺体たちがこの村の惨劇を物語る。




 あれが頭か。

 この状況下においても冷静かつ沈着に行動をすると決めている。




 ひとつ深呼吸を加え、目立つその図体に狙いを定める。




 身体を伏せ、両腕を構えた。左手は支えるように伸ばし、右手は引き金を構える。

 狙撃の体勢に入る。

 俺が構えている腕からホログラムが収縮し物体化。


 Accuracy International AS50 (高火力スナイパーライフル)の形成。




 スコープから俺の瞳が映り込み拡大される。

 標的の大男の頭部がスコープのレティクルに入った。



 ドカンッ(狙撃音)



 バカでかい射撃音と火花――

 魔法で作られた特殊な弾薬が赤黒く光ながら標的に発射される。

 コンマ何秒の世界――




 高速にジャイロ回転しながら頭部に近づく弾薬。

 一瞬の出来事だ、気づけるわけが無い。

 俺は殺害を確信し微笑んだ。




「ガチンッ」




 俺は目を丸くしてしまった。



 大男は気づいていた。

 狙撃されていることを。

 俺が頭部に打ち込んだ弾薬は大男の強靭な前歯で挟まれた。

 弾丸よりコンマ数秒速く首を振ったのだ。




 大男は変顔。

 俺を嘲笑う。


 大男は女性の腕を離し射撃を外した俺に向けて、バカにしながら捕獲した弾薬を舐めまわし、ヨダレだらけのまま飲み込んだ。



 弾丸にまで愚弄。




 俺はすぐさまは起き上がり、次の体制へ移行。

 SRを再度ホログラム化し、解除。




 炎系魔法の黒い煙幕を敵周辺に出現させる。

 空高く周囲広くに発生させた煙幕だが、俺には見えている。

 黒い煙幕から漏れる俺の光る目。


 魔力を目に集中させ敵のエネルギーを人影として確認。

 危機管理能力。




 大男は黒い煙幕で覆われた村を見渡した。

 当たりが見えない大男であったが、大体の場所は予想のであったのだろう。

 村人の女だ。


 大男は瞬時に俺がこの煙幕を撒いた理由を把握し、間髪入れずにバカでかい図体を空中に浮かせジャンプしやがった。

 重力の力を借りながら、ぶっとい腕を捕獲した女のいる場所に打ち込んだ。


 せっかく捕獲したがどうだっていい。

 とでも思ったのだろう。




 地面が震源地から次々とひび割れ、衝撃波が辺りに響く。

 爆風とともに子分たちが数人吹き飛ばされていた。

 それと共に黒い煙幕がはける。




「くそが」

 どうやら手応えはないらしい。


 大男は再度周囲を確認し始めた。




 しばらくして、煙幕が完全になくなり周囲が確認できるようになると、大男は捕獲した女性や金目の物などが全て無くなっていることにようやく気付いたようだ。




 大男は前方20メートルほどに視野を広げていた。

 女性を含め金目の物全てが俺の足元へ。

 全て回収させてもらった。



 舌打ちと共に大男は場を繋ぐ。

「お前…名は…」



 次の行動をどう動くべきか、俺は相手の先方を探る。

 おそらく、大男の方もそうだろう。


 こいつ見た目はジジイだかなかなかやる。

 そんな風に思っているのだろうか?


 狙撃から瞬時に目くらまし、大男より速い動き、なおかつ全ての人質と金品の救出。

 場数が違うと俺は感じ取った。


 だか、大男も自身の力に絶対的な自身を抱いているように窺える。

 敗北の可能性は見つけていないようだ。




「村を襲う山賊達よ。尊い命を失う悲しみを感じないのか?」




 大男は唾を吐き出した。

「俺らは山賊だ!奪ってなんぼ、強いものが弱いものを狩る。それが常識ってもんだろ?」




「その常識はこの村では通用しない。死にたくなければすぐに立ち去れ」



「すぐに立ち去るさ そこの女どもと金品を頂いてからだ」



「ゲスが」



「お前もその残骸の一部にしてやる」



「残骸だと…」




 俺は周りに横たわる遺体を再度確認した。

 一人一人の遺体が目に入る度に悲しみを通り越して怒りが心をズキズキと傷つける。




 俺は回想した。

 年月としては短いかもしれないが、数年一緒に暮らし、尽くしてくれたこの村の住人たちの笑顔と平和。

 もうそれが見れないということを再認識し、目付きをキツく鋭く。

 怒りの形相に変貌させ、相手も睨みつけてくる。




 怒りの形相で睨む顔が辺りを威圧しているように感じ取れた。。

 威圧とオーラー、俺の魔力が身体から漏れ出すのが見てわかる。

 俺の周囲の地面にひび割れが発生しているのもわかる。




 いつもと違う雰囲気に村の女性がザワザワと感じ取り始めていた。

 明らかに違う今までの俺のオーラと威圧感。

 もう一人では止められないのかも。

 この怒りを敵全員にぶつけて解放したいと俺は心の底から思っていた。




 すると、

 衰弱しているFカップの女性は俺の袖を掴んだ。

 涙ぐむその綺麗な顔と怒りの形相とが対峙。




 Fカップはこの惨劇と俺の怒りを感じ取り、涙を流してくれていたのだと。

 この状況が早く終わって欲しい。だが、俺の怒りも収めたいと、、

 



 涙ぐむ心配の表情に俺は心からポワンと浄化されていくのを感じ取った。

 この女性が抱く今の感情が心に染み渡った。


 ここで怒りの如く力を振るうのは良いだろう。

 たが、その後どうする?

 敵に力の限り絶望を与えることだけに何の意味がある?




 俺は優しくFカップの手を掴み、頭を撫でた。

 俺の顔は和らぎ、自然に笑顔。

 それを見た女性たちも不安が少し解消されたように見える。




「大丈夫…ありがとう。村は私が守るから安心してください」




「君たちの安産は必ず保証します」

 Fカップの女性は顔を赤くして照れていた。




 この女性達はいずれ結婚し、子供を産み家庭を持つ。

 その意味合いで俺はFカップに言ったのだ。




 俺は一度深呼吸。

 これからの戦闘の描写を想像し、相手の構造、戦闘スタイル、攻撃パターンや攻撃回数などを想像し、数パターン頭に思い描いた。


 それにより攻撃に先手を打つ。




「そこの脳筋、お前も多少は魔法を使えるみたいだなー」


「お前の身体…特にその右腕にかなりの魔力を感じる」


「魔力を圧縮して攻撃力特化の脳筋。諸刃の剣じゃないのか」




「さすがだ」


「だか、俺の肉体は諸刃の剣じゃない」


「生まれ持ってこの強靭な肉体よ。どんな攻撃も効かない」




「なるほど、外部からの力はその自慢の肉体が防御してるわけか」




「そうよ。つまり俺は最強」




「だが、内部からの攻撃だとどうだ?」




「それはやってみないと分からねーなー」

 大男の咆哮―




 大男は地面を俺の角度に合わせて力いっぱいに拳を打ち込んだ。

 砂埃と破片が俺達を襲う。


 目くらまし?


 だが、関係ない。

 全て見えている。




 一瞬の出来事だった。

 デカい図体の割にこのアジリティ。

 左懐に飛び込む大男。

 右腕を振るい、俺に打ち込もうとする姿が見えた。




 身体に全力で打ち込む単調な攻撃に、避けることなど造作のないこと。

 俺は身構えた。




「…」

 身体が動かない――




 どうした俺の体?

 突然硬直して動かない。

 なんだ?




 徐々に脇腹に近づいてくる大男の拳がスローに見える。

 大男は笑顔だった。


 最初の一発目…目くらまし、陽動、違う

 衝撃波!




 俺は現在も硬直した体を動かすことが出来ない。


 覚悟した。この一発は確実にもらう。




 少しでも攻撃の軌道と威力を流すため、俺は防御シールドの魔法陣を自身と大男の間に召喚。




「ガチン」とぶつかり合う魔法陣が電撃を帯びながら俺の身体を守ってくれた。


 防御シールドの頑丈さに、大男の腕は反発。



 大男は微笑んだ。不気味な笑み。



 魔法陣が震え始めた。

 その振動が伝い、俺の体を揺らした。

 遅れて発せられる内部への攻撃。

 衝撃波。


 大男から放たれた拳から魔法陣を通り抜け、人体へ直接ダメージを与えてきたのだ。

 脳が震える。

 身動きが取れない。


 魔力が維持できない――

 魔法陣が消えていく。

 間髪入れずに大男は腕を再度振り込んで、二発目を打ち込んできた。

 単純な大男の拳の威力と衝撃波が人体へ100%叩き込まれてしまった。



 吐血――


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