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第四十五話「突きつけられた宣告……」

 

 異常なまでの恐ろしさ、気持ち悪さ。

 異質な違和感を覚えたのはガバリオンとの戦闘時だった。


 ガバリオンの本来の力は認めよう。

 腕が立つ。


 それ以上に、所持していた刀剣はやはり異常だった。


 なんかこう、刀剣から伝わる怨念というか。

 刀自体がまるで生きているような、自分の意思で動いているという感覚。

 そういったものが刃を混じえながら感じ得た。


 それに頑丈だった。


 俺が使っていた剣もチート級のものだと認めるが、約一日中俺の剣と刃を交えながら、刃こぼれ程度で済んだ。


 最終的にダメージが刀剣内部に蓄積されていたのか。

 回収した時に瞬間ポキッと折れてしまった。

 普通の剣ではありえないことなのかもしれない。




 人間ソウル鉱石――


 俺は錬金術というワードを考えた。

 何かを元に、それ以上のより完全な存在に錬成する。


 メイの父親との会話を思い出した。


 ガバリオンから受けとった素材。

 興味本位。

 見たことの無い素材を刀剣にしたと言っていた。


 俺は冷や汗がでてきた。

 鳥肌もたった。

 吐き気がする。


 名前から察するに、ある程度の予想がついた。


 もしそうだとしたら、色々と聞きたいことがある。


 俺は言葉より先に体が動いた。

 ダガーナイフを右手で生成後。

 隠れていた体を呼び起こし、無音のスピードで暗殺者ののようにドワールの背後を取った。

 後ろからナイフを首元に近づけた。


「こちらは振り返るな。何も話さずそのまま聞け」


 ドワールが両手に持っていた手術器具の動きが止まった。


 ドワールはおびえていた。

 ナイフを突きつけられたから?

 誰かわからないから?


 いや違う。

 唐突に声をかけられたからだ。

 こんな辺鄙な場所に誰も来るはずがないと思っているはずだ。


 ドワールは振り返ることも出来ず、ただひたすら正面を向いていた。

 声を聞いても誰だかわかっていない。

 キョトンとしている。


 俺と会話をしたことがあるとはいえ、そんな一度っきりの会話で解読することは不可能だと思う。


 脳裏に選択肢として俺の顔も浮かんでいることだろう。

 牢獄にいると言うことで選択肢から消えているのでは?


「器具を手から離して、何もするな」


 なかなか器具を置かないドワールに対し、ナイフをさらに首元へ近づけた。


 脅迫の影響で器具から手を離した。


 聞きたいことは山ほどあるが、時間をかけるつもりは無い。

 的確に答えのみを知りたい。


 俺が何から聞こうか数秒迷った時、ドワールはその間に入り込んだ。


「あなたは?」

「こんなことをして命があるとでも?」


「喋るなと言った。 次はない」


 俺の口調は少し激しくなっていった。

 モナの気持ちが少しわかる。

 こいつのウザさが。


「人間を鉱石にしているのは本当か?」


「……」


 ドワールは俺の言われた通りだんまりを決め込んだ。


 俺のイライラが増した。

 

「人間を鉱石にしているのは本当か?」


「……」


 質問の回答がないドワールに対して、俺の頭の血管がプチンと鳴った。

 どうやら頭に血が上っているようだ。


 首元に突きつけたナイフをドワールの右腕上腕二頭筋へ突き刺した。

 ナイフが肉を裂く感覚が手から感じた。

 でも、これは対して快感とは言えない。

 魔物などは油や肉質が良く正直な部分がある。

 豊満では無いこいつの体は正直不愉快だ。


 素早く刺して、素早く抜く。

 再び喉元へ突きつける。


「ヴヴヴゥアアアァー」


 あまりの痛みに変な叫びと共に、背中を丸めて頭を落とし膝を崩した。

 左腕で刺された所を自身で圧迫止血。

 その拍子に、痛みに耐えながら顔を背後に傾けてこちらに目線をよこした。


 ドワールの瞳に映ったのはもちろん俺だ。

 なぜここへと、

 目をまん丸にして俺の目と重なった。


 確認された。

 見られたからにはどうすることも出来ない。

 ドワールの上に覆いかぶさり、眉間にナイフを向ける。


 俺たちの慌ただしい動きに、様子を見ていたモナが飛び上がってこちらに近寄った。


 バカ!


 俺は焦った。

 見られたことによって、この後こいつにすることは確定したようなもの。

 少し声を荒らげてしまうが、三度目の正直を放った。


「人間を鉱石にしているのは本当か!!」


 ドワールはモナと俺をスライドしながら見ると。


「ほぉ~ 君たちはグルでしたか」

「だったら、今牢獄にいるのは誰ですか?」


「質問だけに答えろ!」

「人間を鉱石にしているのは本当か!!!」


 四度目の正直だ。


 ドワールは圧迫する右腕から血を流し、鼻で笑ってから言った。


「いや、少し違う……」


 優しく首を横へ振った。


 俺は言葉の続きを待っていたが話さなかったため、刃先を眉間に2ミリ突き刺した。

 眉間から流れる血液は右腕と同じ赤色。

 俺の脅迫で早く次のステージに進めたい。


 上腕二頭筋とは違い、眉間にあまり痛覚がないようだ。

 2ミリという深さだが、痛がりもしない。


「人間を鉱石に……? そんな残酷なことはしない」

「正確に言えば、人間の魔力を鉱石に変えている……とでも言おう」


「魔力を鉱石に……?」

「どういうことだ」


 ドワールは観念したように体をだるーとした。

 手術台の足にもたれかかり、ため息。


 俺は冷静になって次のステージに進めた。


「原理は?」


「原理? 私は研究者、そんなこと造作もない。 君には分かりますか? この神秘を」


「……」


 分かるわけが無い。

 バカなのか?

 イカれてる。


「続けろ」


「君も少し考えれば分かることでしょう。それとも私の頭が優秀なだけでしょうか?」

「研究を重ねてできたのが、魔力を鉱石に変える力。私は今までこの国の兵士が他国を圧倒する力というものを研究しておりましてね。それがこの結果ですよ」


「どうやって? そんなこと聞いたことがない」


「だから私は天才なのですよ!」

「バカですかあなたは!」


 俺は目の前の鬱陶しさにナイフで右手の甲を突き刺してすぐさま抜いた。


「おぉまえぇぇぇーー」


 今度は左手で甲を圧迫止血。


「この天才研究者の腕を二度も!」


 ドワールは頭を汚い地面に擦り付けて悶えた。


 俺はこれ以上話が進まない未来を見てしまったため、魔力を鉱石に変えるという原理については聞かないでおいた。

 時間が無い。

 めんどくさい。


 本人が言うように何らかの力と研究能力によって魔力を鉱石に変える方法を導き出したと答えた。

 ただ、どうやって魔力を変換したのかそれは話そうとしなかった。


 分からないが、周りにある研究機材を使って魔力を凝固させて個体化させているのか?

 あるいは、錬金術? また、魔法?


 俺の体に不思議な力が働いているように、人間そのものの力を増幅、変質など、科学や魔法の進歩などによって色々と変わってきているのかもしれない。


 年月が経つということは文明も進歩しているということ。

 ならば俺の認識が間違っているのかもしれない。

 戦争などにおいて、相手国より強力な武器や戦闘スタイルを開発、発明、考えたりすることはどこの国も同じことだろう。

 争いがある以上どこかで達成している事だ。


 現に、手術台に寝転がる二人の遺体。

 いま気づいたが、体中傷だらけじゃないか。


 もしかしたらこいつは戦いによって失った命を、研究のために再利用しているのではないか。


 そのつながりから、無詠唱の俺に焦点を当てたのではないか。


 俺はドワールの残り少ない髪の毛を掴んで。

 もう少し詳しく聞いた。


「なぜ人間の鉱石を使う? 自然から採取した鉱石と何が違う」


「このような頭の悪い人間と付き合うというのは本当に不愉快ですね。ガバリオンと同じだ」


 俺はナイフをドワールの左手眼球に近づけた。

 今度は目を頂くと脅した。


「そこらの対して評価のない鉱石なら別の話ですが、自然の鉱石の入手は非常に難しい。より強固で伝説級の軍器を作るというのは、素材が良くなければならない。なら元々上質な鉱石を作れば良いのではと私は考えた。人間の魔力から作った鉱石というのはやはり違う」


「なにが……?」


 ドワールはこちらを口角を上げ、不気味に表情を向ける。


「人間の意識が残るのですよ」

「人間の意識が残るということは生きていた時の力が軍器に働くということ」

「つまりは、生前の魔法や能力が軍器で使えるということなのですよ」

「詠唱無しで…」


 ドワールの説明はこうだ。

 例えば生前、炎系魔法を主体とした魔法使いがいたとする。

 その人間が運悪く死んでしまった場合。

 その人間の魔力を鉱石にし、それを剣に生成した場合、

 その剣は生前の魔法使いが得意としていた炎系魔法を宿し、使用することができる。

 剣の使用者がいとも簡単に魔法能力が使えるということ。

 それは、使用者の魔力を消費することがなく。

 剣が元々秘めている魔力が使われるからだ。

 それに、使用者の魔力を駆使しないということは、詠唱もいらない。


 魔法が不得意な剣士がそれを使った場合、安易に炎系魔法が使えることが出来るということ。


 技術の発展とはすごいものだ。

 果たして、それが慶事なことなのかわからない。


 ならば俺の魔力を鉱石に変えて軍器へ?

 いや、そんなことなんの意味もない。

 これまでの話から俺の魔力を軍器にしたところで能力の威力は上がるかもしれない。

 ただ、どの人間鉱石も詠唱が省略される以上、俺の魔力を鉱石にするメリットがほとんどない。

 それに、仮に俺の魔力を鉱石にしたところで生成される軍器は一つ。

 そんなこと、他国への脅威になり得るのか?



 一体、俺を捉えた理由はなんなのだ?


「それで、私を捉えて何をしようとしていた?」


 ドワールは圧迫止血をやめた。

 少し間隔をあけて、ドワールの方が小刻みに上下した。

 左手を額に当てて俺を嘲笑ったのだ。


「なぜ笑う?」


「いやいやおかしくて……」


 イラッ!

 俺は本当に眼球を突き刺そうと考えた。


「何が……」


「いい加減、気づいて欲しくて……」


「は……?」


「選択肢……どちらをお選びで?」


 選択肢とはあれの事だ。

 俺はもう気づいていると言っていたこと。


 無詠唱を他の者に付与。

 そんなこと俺がするわけが無い。

 俺の魔力を鉱石に。

 そんなこともするわけが無い。


 ならば選択肢とは?


「お前の言う選択肢とは俺には分からない…」

「無詠唱の付与。魔力を鉱石に。共に俺は協力するつもりは無い」


「いやいや、あなたは協力するしかない」


 何を言ってやがる?

 協力する気は無いと言っている。


「昨日、エレスティン王国の戦闘兵がある村を滅ぼすために出陣しました……」


 俺はある村と言う発言に心当たりがあった。

 俺とこいつが知っている共通する村と言えば考える必要も無い。

 俺の体の血液は一気に冷たく下がっていることに感じた。

 口が乾燥した。

 手汗が出た。

 顔が青ざめて肌が冷たい。


 皆がいる村だ。



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