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第三十八話「元凶ドワール」


 湿気が多く非常に居心地が悪い。

 天井から水滴がポツリポツリと垂れ落ちて小さな水たまりができていた。

 薄暗く、カビの匂いがたちこめて、ここで住むには相当の覚悟がいるかもしれない。

 ここは地下室の牢獄。

 主に犯罪者などが収監される場所だ。


 白熱灯が数える程度にぶら下がるも、これくらいの明かりでは周囲を完全に照らすには程遠い明るさだ。


 それに、俺の隣の牢獄からは壁を挟んで誰かいるのを感知できる。

 恐らく囚人であろう。

 一体どんな悪さをしてここへ投獄されたのだろうか。


 壁には湿気のせいか苔が生えていたり、鼠や蜘蛛が蔓延っている。


 四角形の六畳程のその部屋は左右後ろは壁、前は鉄格子。

 窓はなく換気が悪い。

 そんなところに俺は収監されていた。


 俺は現在そんな汚いところで横に倒れて寝ていた。

 全身を拘束具に覆われて、フードを被られて、素肌が見える場所と言えば足の甲くらいだ。

 さらには、足枷のおまけ付き。


 まあ、それもそうだろう。

 魔法使いは両手を塞がれればほぼ何も出来ない。

 それを考えてのこの厳重な拘束具だろう。


 だか、まだ気づかれてはいないようだ。

 俺は気を失った振りをしている。こちらからあえて捕まったことも、作戦のことも。


 しばらくすると、数人の足音が聞こえてきた。

 どうやらこちらに向かっているようだった。

 コツッコツッとブーツでも履いているのか?


 そして、足音は俺の目の前に止まった。

 俺の感知能力により、おそらく三人俺の目の前にいる。

 そのうち二人は兵士。なぜなら、金属が擦れる音も聞こえたからだ。

 もう一人は……


 鉄格子を挟んで、俺に問いかけてきた。


「君が無詠唱魔法使いだね?」


「……」


 俺は気を失っている。

 無言。


「もういいですよ。気がついているのでしょ?」


 こいつはどうやら感が鋭いようだ。

 俺の心情を読む能力でも持っているのか?


 そんな発言に顔を見渡す兵士二人。


「別に今は何もしないですよ」

「あなたとおしゃべりしたいのです」


 こいつに嘘は通らないか……

 俺は観念したように体を起こした。


「ヨイショッ それで、あなたは?」


「ドワールと申します。研究者です」


「研究者? 何の用です? こんな所に私を幽閉して」


「こんな扱いをしてしまって申し訳ないと感じております。ただ私は研究者の立場から研究熱心でしてね。あなたにとても興味を持っております」


「私に興味?」


 探りを入れてやる。


「ええ、あなたは無詠唱魔法を使えるというではないですか」

「それは本当でしょうか?」


「無詠唱? 無詠唱魔法のことですか?」


「それ以外に何があると?」


「さあぁ?」


「話すつもりはないですか? 一応調べは付いていますので話さなくても構いませんが……」


「私が無詠唱魔法使えるかどうかについて話しても構わないですが、ここから出していただけると助かるのですが……」


「ええ、そのうちに……」


 話の内容がまるでない。

 無詠唱魔法が使えるか使えないか?

 そんなこと疾うに知っているのだろう?

 ならなぜ聞く?


「無詠唱……使えると言ったら?」


「もしそれが本当なのであれば我々はあなたを丁重にお扱いいたします」


今の状況を作っておいてよく言えた口だ。


「あの事件以来あなたを超える無詠唱魔法使いは存在しません」


 モナが言っていたことは本当だった。

 国が俺を欲している理由、それは無詠唱魔法使いという世界でも珍しい存在ということ。

 それが俺。


「無詠唱が使えたところでなんですか? 別にこれといって詠唱がない魔法が使えるということ以外、メリットはないと思いますが……」


「いやいや、隠そうとしていますか? 全て知っているのですよ。もう一つあるではないですか、最大のメリットが……」


「…」


「無詠唱魔法を人に付与。できるのでしょ?」


「…」


「あれ? ちょっと動揺していますか? あなたは非常に賢い。目を合わしてなくても分かります。感覚で」

「だからもう気づいているのでは? 私がしようとしていることを…」


「…」


「私はただの研究者。国がどうなろうと本当の意味ではどうでも良い。ただ、そこに研究材料がありながら研究をしないというのは私にとってimpossibleありえない


 ドワールは鉄格子を両手で掴み、俺に顔を寄せてきた。

 興奮ているようだった。


「ぜひ、あなたのお声、聞かせてください」


 ドワールは横にいる兵士にフードを取るように命令した。

 錠を外し、一人の兵士が鉄格子の中へ入ってきた。

 そして、勢いよく外した。

 もう少しゆっくり外してほしいものだ。

 兵士は再び錠をかけた。


 俺とドワールの目が初めてあった。


「ほう、かなりの経験を積まれているお顔だ」


 俺は睨みを利かした。


「あなたは俺に何をして欲しいのですか?」


「先程も言ったように、あなたはもう気づいている」


「……」


 俺とドワールの無言の会話がしばらく続いた。

 どちらも耐久力が凄まじい。


「……無詠唱魔法をこの国の兵士に付与。ということですね」


「二日間あげます。その二日間で選択してどちらかを決めてください」


「……」


「もしかしたら、あなたにとっては究極の選択とも言えるかもしれませんね……」



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