第三十六話「潜入」
朝食を終え、俺たちは歩き出した。
打ち解けたこともあり、俺たちは気を使うことなく会話が可能となった。
昨日とはまるで違う。
モナの表情はとても健やかだった。
会話の内容は俺たちの村のことを聞いてきた。
逆に俺はどんな旅をしてきたのかを聞いた。
お互い余計な詮索はしなかったが臨機応変に対応。
昨日の敵は今日の友。
俺たちにピッタリの言葉だ。
俺は隣にこんな美人を置いて堂々と歩いていることに自信を持っていた。
隣に置かれているのが太陽なら俺は影だ。
太陽が目立つなら影も目立つ。
誰もいない森の中で俺は胸を張る。
誰に見せつけるのでもなく俺は誇らしいだけだった。
道中、魔物にも遭遇することは無かった。
とても安全な旅だ。
ある程度、森を抜けた途端大きな白い外壁が立ちはだかった。
レンガを骨組みにコンクリートで周りを固められた外壁。
高さは50メートル、厚さも10メートルあるか。
これがエレスティン王国。
俺とモナはとりあえず茂みに伏せて状況を確認。
外壁の上には50メートル感覚で兵士が高台から監視している。
また、巨大な出入口の門がある。
そこから入るようだ。
昔とは大きく変わって国の防衛力が見に染み渡る。
俺はこれからこの国に挑むのか?
少しゾクゾクする反面、緊張もしてくるものだ。
先程の作戦会議でもちゃんと話したが、作戦は至ってシンプルに。
国の入口でもある大きな門の前には見張り番の兵士がいるものだ。
そこで旅人や商人が出入りしており、通行証と入場料を支払うことで入門できるはず。
そこの兵士に俺は連行されるという作戦だ。
そこでは、モナとの連携も大事なことは重々わかっている。
戦闘不能の俺を兵士に引き渡すという超簡単な演技だ。
モナがこちら側の人間と気づかれず、あくまで俺を捕まえて連行してきたという演技をする。
だが、モナにははっきり言おう。
「あなたは演技が下手だ。尋常じゃないくらい下手だ」
「えっ!? あんたいきなりなんなのよ?」
「もう一度言う! あんたは演技が下手だ」
「うるさいわねぇ! あの兵士を騙すことぐらいできるわ」
並んで茂みに伏せる俺たち。
草や木がモナの髪の毛にぶら下がっている。
お茶目な部分もあるようだ。
「いや無理ですね」
「初めの第一歩、超初級ミッションは失敗です」
「ちょっと失礼にも程がある」
「何度でも言いますよ! あなたは演技が下手だ」
「耳元で大きい声出さないで!」
「出してません。あなたは演技が下手だ」
何度も同じことを言う俺の言葉が心に染みたのか、少し涙目になっていた。
これから起こりうるいくつもの超高難易度のミッション。
クリアしないといけないのに、開始まもなくミッション失敗する。
演技? こいつにできるわけが無い。
昨日の黒尽くめの一件でも終わっていたのに。
「大丈夫よ! 昨日だってちゃんとできていたわ!」
俺はモナに軽蔑の視線を注いだ。
どこからそんな自信が……
できていたと豪語しているのも逆にすごいと思う。
まあ、でもここまで来たらやるしかない。
後戻り出来ないこの状況、全てをモナに託ししかない。
俺は決心した。
「もうこの時点で後戻りは出来ないのでやりますが、自然に自然にお願いしますね!」
俺は念入りに言葉をかけた。
「わ、わかってるわよ」
「自然よね自然」
モナは自然という言葉を何度も何度も小声で唱えていた。
そして俺は目を細めて再び軽蔑の視線を注いだ。
× × ×
門の前には兵士が二人いた。
甲冑を纏った力のある兵士のようだ。
作戦通り、俺は両手と身体に縄をぐるぐるに巻き付けられて兵士の前に放り投げられた。
意識を失っている振りをしながら、周囲の状況を確認。
てか、あいつ乱暴すぎる。
顔を地面に打ち付けてしまったじゃないか!
そのいきなりな状況に兵士は持っていた槍を構えた。
「なんだ……」
そしてモナが現れた。
「もっ、戻ったわぁ~……いや、戻りましたわぁ~」
モナの声は全てが裏返っていた。
詰んだ――
「おおう!モナ殿か!」
「お戻りで」
「こいつは?」
「あっあの~……先日の任務で頼まれた代物です~」
そういうとモナは俺の体を踏みつけてグリグリと踏みつけた。
どことなく、演技をバカにされたお返しと言わんばかりに、モナは必要以上に俺の体をグリグリした。
よし、後でぶん殴ろう。
女の子に手を出すのは男としてどうかと周囲に思われると思うが、俺は決めた。
こいつをぶん殴ろうと。
「ん?」
二人の兵士は顔を合わして、挙動不審のモナに違和感を持った。
「あのモナ殿大丈夫ですか?」
「顔色が悪いようですが」
モナの顔は青ざめていた。
天下一品の演技力。
もうこのまま嘘がバレてもいいとちょっぴり思った。
なぜならこいつがいつまでたっても俺を踏み付けるから。
あとは、演技力の無さにイラついているからだ。
たが、これは仕事だ。
バレてしまったら意味が無いと踏みとどまった。
俺は冷や汗が止まらない。
ダメか、もうダメか…
「なにかいつもと違う…」
「ええ!? そう? 私は大丈夫よ~」
「私のことはいいから早くこの者を連れていってくれる~」
「早急な任務だから早くしないとあなた達怒られちゃうかも~」
「あっはい!」
この国の悪事を物語っているのか、兵士二人はモナの異変を感じ取りながらも、国への恐怖からすぐに作業へ取り掛かった。
俺は安堵した。
気づかれないように深く深呼吸。
心臓がバクバクしていた。
どうやら任務成功のようだ……
兵士二人は、俺の顔をじーっと注視した。
俺は平然を保ちながら、息を殺しながら感覚を無の領域へ誘った。
二人は本当に気絶していると確認し、俺を抱えて門へと向かった。
抱えられている俺は薄目で背後に視線をやると、モナが笑顔で手を振っていた。
これも演技、作り笑いだろうがなんと自然な笑いなんだと、俺は彼女と最後の別れはアイコンタクト。
最後だけは褒めておこう。
今の笑顔は完璧だ。
彼女には申し訳ないことをした反面、感謝もある。
俺は感謝の意を込めて親指の指弾で直径3センチ程の餞別を飛ばした。
光り輝く金の玉。
インゴットドラゴンの一部だ。
俺からの感謝と仕事を離職する立場から金は必要だろうと高額買取されている金を送ったのだ。
モナは飛ばされた金の玉を両手で受け取った。
モナは俺の意図を読み取り会釈した。
ありがとう、モナ。
またどこかで会えたら、今度は君のFカップを触らせてくれと願った。
だが、その場を後にする兵士の一人が立ち止まった。
「そういえばモナ殿、この男の状況説明とこれからの対応についてモナ殿から話して頂きたいのですが? さすがに私たちだけでは説明が出来ないのでお願いします。なのでもう少しお付き合いを」
「えっ!」
俺もモナは同じ反応。
別れは一瞬の出来事であった。
【ジャスミン(作者) 身近なニュース報告欄】♯20
花火大会の夏。
今年こそ花火大会に行きたいと思っていましたが
コロナの影響でどうなるのやら
感染急拡大で開催しないかもですね。(可能性として)
開催しなくていいから花火どこかでやってほしいな。
ああ、手持ち花火で自分でやればいいのか。。
第36話です。
宜しくお願い致します。




