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第三十話「乙女の日常ライフ」


 語りかけても何の反応もない。

 ただ、風の音が聞こえるだけ、俺も女も互いの次の一手を読もうとしている。

 さて、これからどうする?

 とっ捕まえて尋問してもいいが、風貌を見る限り十代前半~後半。

 こんな可愛い子に一体何があればこのようなことを?

 俺をただ暗殺しに来たのか?

 俺は頭の中をぐるぐるさせて予測と仮説を立てた。


 最近起こった出来事と言えばガバリオンとの戦闘。

 そういえば、あいつは言っていた無詠唱集団である我々を皆殺しにすると、そう考えると十中八九ガバリオンが関係してくる。

 だとすれば、あいつは洞窟の崩壊から抜け出し生きていた。

 ガバリオンの命令の元、国の要請で俺に暗殺者を寄こした……という感じか?


「あなた、私を殺しにきた使徒……?」

「それはガバリオンが関係していますか?」


「察しがいい」

「ならどうする? 私を殺すか?」


「やっと話してくれた」

「ありがとうございます」

 俺は笑顔で対応した。


「ふっ…」

「今の一瞬の戦いでわかった。あんたは私より強い、私では敵わない」

「だが、私も命令には背けない理由がある」

「適わなくとも力ずくであんたをエレスティンに連行する」


 目的は暗殺ではなく連行。

 彼女にも事情があるようですね。

 例えば、何か大切なものを握られている……とか

 別に彼女はやりたくてやっているということでも無さそうだし、だとしたら元凶は彼女に指示している。


 エレスティンとはガバリオンのいる国だろう。

 全くめんどくさい事に巻き込まれたものだ。

 ガバリオン、あいつ面倒くさっ。

 正直いって彼女を逆にとっ捕まえて国のねじ曲がった悪の部分を吐かせるのは簡単だが、まずは状況を把握しときたいな。

 今騒ぎを起こすのは得策ではない


 しかも、村は発展途上のこの段階に国との争いはタブーだ、目的は俺のようだしここは様子を見るしかないだろうか?


「いいでしょ」


「……えっ!」

 アナと女は俺を見た。


「大人しくお縄につきましょう」

「あなたも色々とあるようですし……」


 アナは念話が使えたな、アナにだけは伝えておくか。

念話――

「アナ、申し訳ない。ひとまずこの女について行こうと思います」

「おそらくガバリオンは生きていて、村を襲うつもりかもしれません」

「ひとまず私が様子を見て調査してきます。このことは村の人達には内緒でお願いします」

「アナは村へ帰って待っていてください」


 アナは首を激しく横に振った。


「大丈夫すぐに戻ってくる」


 女はゆっくり警戒しながら俺に近づいてきた。

「そんなに警戒しなくても抵抗しませんよ」


 女は俺の両手にロープを巻き付け、ギュウギュウに縛り付けているから手首が痛いな。


「娘! お前は来るな」


「アナは付いていきません」

「そうだよな アナ」

 念には念だ。アナには村で大人しくしてもらおう。


「私しか行きませんって」

 俺と女はお花畑を後にした。



× × ×



 左右が森林の並木道。

 日差しが照り返すこんな真昼間に男女2人で散歩か……

 良い休日だ。

 俺は空を見上げて言った。


「エレスティンまであとどのくらいですか?」


「……」


「あなたのお名前は?」


「……」


「年齢は…17歳くらい?」


「……」


「彼氏はいますか?」


「……」

 質問しては無視の繰り返し。

 俺にとってこんな縛り、簡単に抜け出せるし、女は女で俺の驚異にもならない。

 正直お気軽な気分だ。


 だが、さすがにしつこすぎる俺の質問攻めのおかげか、ついに女は言葉を発した。

「あーもう! うるさいうるさいうるさーい!」

「少しは黙ってくれる!?」


「あっ! やっと口を開いてくれたー」


 女がイライラしているのが表情と拳から感じとれた。

 すごい怒ってる。


「彼氏がいるかどうかまでは言わなくていいですからせめて名前だけでも教えてください」


「あーもう! ホントにうるさい」

「なんなの!」

「うっざっ」


「私はアーサーです」

 ついに女は俺に拳を向けできたが、かろうじて心に押えたようだ。

 無防備の俺に手を挙げるなどこんな美しい顔の持ち主はそんなことをやらないだろうと思っているが、次は容赦なさそうだ。


 俺の質問攻めに疲れたのか、女はため息をつきながら川のほとりに陳列する岩に腰掛けた。

 俺は辺りを見渡した。

「ここがエレスティン?」

 女は睨んできた。


「冗談ですよ(笑)」


「ひとまずここで休憩よ。あんたも休みなさい」


 腕を縄で縛られている状況下で休めと……なんてツンが激しいのでしょうか……


 女は川の水をすくった。

 どうやら飲める水なのか、きれいな水なのかを確認しているようだ。

 安全な水だと確認すると、水を両手で再度すくい喉の奥へ流し込む。

 それほど美味しかったのだろうか、少し笑顔がこぼれたようで、笑えばこの子も可愛い。

「ところであんた……」

 女は俺に顔を向けた。


「なんですか?」

 俺は丁寧に対応。

 女の言葉が詰まり、顔は驚愕していた。

 なんでお前そこにいるんだ、やってしまったという感情が女からにじみでていた。


「あんた嘘でしょ……」

 そして、女の顔は青ざめていった。


「へ?」

 俺はポカンと。


 女が飲んだ川の水は下流、2メートル離れた上流で俺は歩き疲れた足を癒すため川に足をつけて冷やしていた。

 おそらく女は潔癖症なのだろう。

 上流側から流れるきれいな水は俺の足により汚染され、下流側に行きつき、汚染水は女の体内へ吸収されたのだ。

 女は自力で胃から水を吐いた。

「おぇ~~」


「ハハハハ」

 俺はつい笑ってしまった。


 女は涙目になりながら俺を睨み、顔面に一発拳を入れてきやがった。

「グヘッ」


「ホントにサイテー」

「うっざっ」

 俺は倒れた。

 老害の足はさぞ汚かろう。


「!」

 女は異変を感じ取った。


「やっと気づきましたか? 結構前からつけられてますよ」

 殴られた衝撃から頭がまだクラクラと余韻を残すが、ゆっくり立ち上がった。


「あんたまさか……」


「そんなわけないでしょう。俺の仲間じゃないですよ」


 空間認識魔法。

 俺は縛られている両手から、かすかに動かせる指を地面に当てた。

 そこから赤外線の波紋が俺を中心に半径50メートルまで伸びていった。

「7、10、13と言った所でしょうか」

「落ち着いて、挙動でこちらが感知したことがバレてしまいます」

「自然に……落ち着いて……」


「わっ……わかったわ……」


 終わった。

 女は演技がものすごく下手だった。

「ところでアーサー殿…今日はお天気が良くて、気も、気持ちがいい…ですねー あははは…」


 はあ…俺は頭を抱えた。

「お嬢さんところでお名前は?」


 彼女の顔はとても引きつっていた。

 こりゃダメだ。


「わたくし…モナっていいますのー…あははは」


「!」

 俺は瞬時にモナの上に覆いかぶさり彼女の目見つめた。


「えーーー!」

 モナの顔が真っ赤だった。


【ジャスミン(作者) 身近なニュース報告欄】♯14

健康診断の結果。

食生活に問題があるようです。

それ以外はオールAでしたww


第30話です。

宜しくお願い致します。

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