第十三話「腐りきったゴブリンを排除」
武器の生成魔法。
自身の魔力を元に作り出される武器。
より良い精密かつ強力な武器を作り出すには、卓越した魔力コントロールの他に精神力と緻密な魔法技術が必要。
鍛冶屋に頼んで武器を作り出すことも可能だが、自身の魔力のみで生成された武器はそのものにとって扱いやすい。
その代わり魔力の消費が激しく長く維持できない者もいる。
そもそも、魔法使いが剣術を使うこと自体まれなこと。
基本的に魔法か剣、どちらかを主体とした戦い方が好まれるため、魔法使いが剣術を集中的に行使するものは少ない。
また、魔法使いは遠距離型を好むことが多いため近距離の剣術はあまり得意ではないものも多い。
そのため、前衛に剣士を置いて後方で魔法で援護というパーティーが主流だ。
その逆も同じ。
剣士が魔術を行使することもある。
それはあくまで陽動や簡易的な初級魔術、あるいは中級魔術と言ったところ。
魔法と剣どちらも同じレベルに仕上げる猛者などそういない。
いるにはいるかもしれないが、それはどちらも長い年月の鍛錬などが必要であって、簡単ではない。
どちらかに偏る系統にある。
俺がこれまで作り出してきた剣とスナイパーライフル。
それに魔法、近距離、遠距離と卓越した力が発揮されているのが窺える。
そして、ジャイアントゴブリンの咆哮が洞窟内に響き渡る中、そのうるさすぎる咆哮で俺を含めた仲間たちが耳を手でおおった。
そんな咆哮はただの威嚇。
コゴブリン達を失ったことについてジャイアントゴブリンの感情はゼロ。
仲間のコゴブリンとはいえ、ただの手下。
自身の身の回りの世話や指示に従うただの下僕と言ってもいい。
ジャイアントゴブリンはそのバカでかい図体をのしのしと動かした。
脳筋の考えることは単純だ。
ただ真正面の攻撃。
単調な攻撃に俺は嫌気を出し始めた。
魔法で作り出した剣を解除。
ここまで弱すぎるとは。
統率も取れな。
攻撃に余裕がなく弱い相手に情けも必要ない。
メイとフォーは少し離れた場所から弓を構えて俺の指示を待つ。
いつでも射撃可能という体制。
メイは仁王立ちする俺の後ろに隠れて、俺ごしにジャイアントゴブリンを観察。
「弱すぎる。なんという弱さ」
ジャイアントゴブリンは大剣を掲げ、俺にのしのしと詰め寄る。
「ジャイアントとという名をもらい、その恵まれた図体を持ちながらこの弱さ」
「部下への統率も取れず、自らの戦闘能力もない弱き者」
「お前はこのゴブリン達のキングだろ!? 自分を磨き鍛錬を忘れずこの組織を守ることも出来ない無能なゴブリンだ」
「…ここより滅びろ」
そんなことを言ったところでこいつの耳には通らないだろう。
自身の弱さがこの場を生んでいる。
自業自得――
俺は無能すぎるキングに対して罵倒し、このゴブリンたちの弱さはジャイアントゴブリンにあると言い放った。
これまで、虐殺と窃盗を繰り返したゴブリン達。
ただ弱き者に対しておこなった行為。
自分より強気者には決して挑まず、腐りきった性根を根絶させる。
俺は右手にドシッと重みがのしかかる。
ホログラムが俺の手の周りに集まる。
Accuracy International AS50
(高火力スナイパーライフル)の形成された。
そして、立ったままスナイパーを構えてエイム。
重みからかレティクルの中心からぶれる。
山賊の大男の時は伏せて支えがあったため、ブレずに合わせられたが今回はぶれる。
と言っても、この距離からの射撃。
50メートルと言ったところ、造作のないこと。
そもそもこの距離からスナイパーを使う事自体どうかと思うが、高火力のこのスナイパーなら簡単に仕留められる。
標的とされた敵も苦を惜しまず逝けるだろう。
せめてもの償いだ。
俺は何故ここまでジャイアントゴブリンに対して、怒りが込み上げてくるのか、それはコゴブリンを抜刀していた時に遡る。
× × ×
コゴブリンを次々と抜刀。
「ごめんなさい 助けてー」
両断―
「ギャー」
断つ―
次々とコゴブリンを両断していくうちに一つ疑問に感じた。
なぜ、ゴブリン達は人間の言葉を話せるのか……
最後の一匹のコゴブリンを殺す前に問いた。
「お前達はなぜ人間語を話せる?」
「ゴブリンはそういうものなのか?」
コゴブリンは怯えながら答えた。
「そんなの知らねーよ」
「俺たちは生まれた時から喋れたんだ」
「仲間の中に魔人語や獣人語だって喋れるやつもいる」
「どういうことだ?」
「わかんねーよ。でも俺たちを産んだのは捕らえた若い人間とか獣人だ」
「おそらく遺伝しただけだ」
俺は虫唾が走った。
そして、目の前にいるコゴブリンの胸を間髪入れずに剣で突き刺した。
子供を産める適正年齢に達した人間などの女を誘拐し、ゴブリンの子供を産ませていたのだ。
何度も何度も体内にゴブリンの子を宿らせ、使い物にならなくなった時、無惨に殺す。
それがジャイアントゴブリンのやり方だったのだ。
残虐非道とはまさにこの事だ。
× × ×
ジャイアントゴブリンは自身の組織の繁栄の近道が子を増産させて、数で圧倒するという考え方だった。
無能でも数で応戦できると踏んで人間などの女から強制的に子を産ませていた。
俺はレティクルから除くその瞳は怒りが込み上げる。
このジャイアントゴブリンを殺したところで、残虐非道な行為はおさまるとは思わない。
各地に散らばる他のゴブリンたちがその可能性もある。
ただとりあえず、いま目の前にいるゴブリンを殺し、このイカれた行いを正す。
それが今の俺の使命だ。
「死をもって償え」
「ドンッ」
洞窟内をこだました――
とりあえず、13話終了ですww
宜しくお願い致します。