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第十二話「ゴブリンの巣窟」


 それからというもの。

 いくつかの簡易的なトラップは確認。

 だがそれは対して驚異ではない。

 簡単に回避できる程度の物ばかりだ。


 俺はこの程度のトラップの意味と利便性に問題視した。

 ゴブリンごときが考えそうなトラップだ。


 見え見えの錆びついた槍が飛んできたり、浅い脅威にならない落とし穴。

 何なんだこれはと正直あきれた。


 洞窟内――

 暗闇に光る四つの光が三人と一匹を照らしながら進んでいる。


 奥には俺の魔法とは違う灯火が見える。


 どうやら洞窟の奥に明かりが灯る場所があるようだ。


 ゴブリンの巣では無いかと考えられる。


 トラップを掻い潜ってここまで来たが、ここからどうする?


 引き返すわけにはいかず、とりあえず、俺は宙に浮く四つの灯火を鎮火。

 物音を立てず、光の元へ近づく。


 すると、声が聞こえだした。

 汚い声だ。

 ガラガラに干上がった低い声。

 ゴブリンだ。


「お前ら飲めー」


 姿勢を低くして足音を最小限まで小さくし。

 俺たち一行は岩の影からゴブリンを確認した。


 どうやらゴブリン達は酒盛りをしているようだ。

 全身緑色の体に人間から奪ったと思われる古びた防具や刀剣などを身に付けているのが窺える。


 数で言えば三十体ほど。

 緑色の顔は頬が赤く染って少し酔っているようにも窺える。


「もっとだーもっと酒を持ってこいー」


 ひときわ大きな声、大きな体、大きな防具に腰に大剣。

 こいつが頭か。


 体長2メートル程か?


 腐って今にも壊れそうな玉座に座り、その大きな体に大量の酒を流し込んで腹がブヨブヨだ。

 どうせ、防具など全てにおいて人間様から盗んだものだろう。

 あの程度の魔物俺の驚異にもならない。


 巨体のゴブリンを汚いものを見る目で確認していた俺は、ふと、玉座の後ろに奥に続く道を確認できた。


 あそこが奥に繋がる道か?

 ここを通りたいが素直に通してくれるものなのか?

 そんな律儀なゴブリンいるわけが無い。


 引き返すか?

 せっかくここまで来たのに。

 俺一人ならこいつら何とかやれると思うが…


 アナとエバ、フォーを確認。


 アナとエバは戦闘に不向き、フォーは戦えるとして、こいつらを守りながら行けるのか?

 もしものことがあれば…

 いっその事、でかい魔法でやるか?

 それも厳しい。

 洞窟内でそれは禁句だ。


 迷い、不安が交錯しどうして良いか分からない。


「ポンッ」

 不安な表情にアナは突然俺の頭を軽く叩いた。


「師匠の考えていることだんだん分かるようになってきました」

 ニッコリと笑った。


 その笑顔が癒される。

 どれだけ助けられたんだこの笑顔に。

 かわいい。


「私たちは大丈夫です」


「私だってー鍛冶屋の娘だけど自分の身は自分で守れるよ」

 エバは弓と矢を構えた。


 フォーも頷く。


 俺はこの子らおかげでものすごく心が晴れた。


 信用してなかった。

 今思えば、だって仲間じゃん。


 この信用と落ち着き、仲間の大切さを身に感じながら、ここを突破するための作戦を練った。


 なるべく戦わなくていい、とりあえずこの通路を突破して無傷で終わらす。

 戦いはできるだけ俺がやればいい。


「アナは私のバックアップ、エバはフォーに乗ってその弓で打ちながら動き回って相手を撹乱してくれ」


「はい」


「おっしゃー」


「ウォン」


「戦闘開始だ」



×××



 ゴブリン達一行は酔ってなのか多少の足音ですら気づかず、索敵が完全に疎かになっていた。


 ゴブリン同士よって剣を振り回し、遊んだり、仲間同士に斬り合い、腕を負傷するものも現れた。

 なんて醜い生き物なのだ。

 俺はそんなだらしないゴブリンたちを見物し、ゴブリンの玉座を中心を意識して頭上に巨大な魔法陣を発生させた。


 黄色く輝くその魔法陣はゴブリンのボスを含め数匹のゴブリンを手中に収めた。

 神々しいく輝く頭上に気づき目を細めながら視線を向けていくゴブリンのボスと子分達。


 なんだ? と、認識するまでに多少の時間がかかった。


 なぜなら、ここまで来るまでにトラップを複数仕掛けていたし、そもそもこんな辺境な場所に侵入してなんの得が? とゴブリン達は思ったのか、多少の時間がかかっている。


 俺はゴブリンならこの程度の魔法で十分だろう。

 そもそもこんな洞窟に対して大型呪文は避けようと考えていたため、魔力量を必要最低限に抑えた魔法陣の大きさにした。


 魔法陣の中心から光り輝く球体がゆっくりと出現した。

 ゴブリンたちはなんて綺麗なんだと少しだけ見入っていた。


「すまんな。ゴブリン達よ」

「ライジングサン!」



 言葉と共に黄色い球体から雷撃が発生。

 ゴブリン一匹一匹を的確に射止めた。

 感電してまた次へ派生していく電撃である。

 そのため、いくら小さい電撃でも、次々ゴブリンの身に付けている鉄の鎧に派生していって、電撃が通じ合う。

 魔法陣の真下に居ないゴブリンたちにも影響していく。

 人様から盗んだ鎧が仇となったな。


 そんな、感電死していくゴブリン達をよそに攻撃のパターンにいち早く気づいたゴブリンのボス。

 通称【ジャイアントゴブリン】は古びた玉座で身を守った。



【ジャイアントゴブリン】

 族をまとめるゴブリンのボス。

 体調2メートル程度。

 緑の胴体に筋肉が浮かび上がった素晴らしい肉体。

 上半身裸で泥などで汚れたハーフパンツを履き、ベルトには人や魔物の頭蓋骨が腰をおおっている。

 討ち取った頭蓋骨だろう。

 顔面は目の周りや頬にかけて赤いタトゥーが入ったイカつい顔だ。

 耳にはピアス。

 髪の毛は黒。

 ソフトモヒカン。

 腰には大剣を所持している。



「あいつはこの程度じゃだめか」

「知能が少し高いな」


 ジャイアントゴブリンは辺りを捜索し、岩陰に隠れる俺たちを認識するとその汚い声で命令した。


「お前ら! 侵入者だ! 殺せー!」


「フィー」

 小さいゴブリン 通称【ココブリン】達は抜剣し、襲いかかる。



【コゴブリン】

 族のボスを自ら目指す小型のゴブリン。

 体調70センチから1メートル程度。

 緑色の体に筋肉はあまりなく、素早さ重視の戦い方が好まれる。

 顔はキリッとした目付きに、耳にはピアス。

 仲間意識が高い。

 武器は毒を塗った短剣や斧。



 俺は即座に剣を召喚。

 ホログラムが発生し剣が物体化していくと、その剣で襲いかかってくるコゴブリン達を両断していく。


 コゴブリン達の通う赤い血が飛び散って地面や俺の体に付着。

 その後ろでアナは俺をサポート。

 俺に魔法を付与。アジリティと攻撃力のアップに解術魔法。

 ゴブリン達の剣に毒が塗ってあることも考えて、毒が付着してもすぐに解毒されるように魔法を付与。


 メイとフォーは、

 フォーが快速を飛ばし、メイがそれに合わせて、矢をココブリン達の脳天に射撃。

 フォーのスピードについていけるわけもなく、ココブリンたちが次々と倒れていく。


 そんなやられっぱなしのジャイアントゴブリンはついに動き出す。



 ジャイアントゴブリン 怒りの咆哮――



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