第十一話「洞窟内の散策」
何年何十年何百年と長い年月が経過し、蓄積された水流の働きによって洞窟が形成される。
一滴一滴垂れ落ちる雫が晶出し針山のように天井や地面から咲いている。
至る所に水溜まり、湿気が半端ないが涼しい。
寒い程だ。短期間の居座りなら問題ないが、長時間は凍え死ぬかも。
と、考えながら俺たち一行は洞窟内にいた。
洞窟の暗闇に光るあたたかい光。
火山の頂上とはうってかわり、気温が反転し、薄着だとかなりきつい。
タンクトップのメイはシャツを着直している。
素晴らしい美ボディーなのにもったいないと俺はメイをそんな目で見ている。
日光が入らないこの場所で三人と一匹は辺りを捜索していた。
四つの炎の球体が三人と一匹のそばに一つずつ居座り、生命が与えられたように、ご主人のそばを照らしている。
炎系呪文で四つの火の玉を形成、灯りの代わりにした。
こんな暗闇に広々とした空間にこの程度の炎じゃ5メートル先も見えたものじゃないが、こんなところで爆裂魔法レベルの魔法を出す訳にもいかない。
とりあえず様子見だ。
一緒に同行している狼に攻撃されて飛ばされたが岩との衝撃とともに発掘した洞窟。
飛ばされた側の俺は、狼に対して格下と見ているため、そう恨むことも無くいつの間にか仲間になっていた。
まあ、戦いの際はほんのちょっとだけ油断したがな。
メイが岩と岩の間にスペースを見つけ、その奥が空洞になっていた。
その空洞に俺はいた。
こんな空洞は明らかに何かあると、狼との戦闘よりもそっちのけ、興味を持ってしまったのだ。
人の命より金か?
死にかけていたメイからしたら何してんだと言いたいことだが、狼が良い奴だとわかった段階でそんな感情はメイ自身も忘れていた。
アナとメイと狼が洞窟内で俺と合流し、先程まで戦っていた。
飛ばされた俺自身も最初は狼が普通にアナとメイと共に行動していたことに驚いたが、三人の顔を見ると直ぐに状況を理解。
少ない灯火と共に辺りを捜索。
「なるほど、その魔物(狼)は誰かを探していると…」
アナと狼が頷いた。
狼は人の言葉が分かるのか?
「恐らく、フォーちゃんは誰かを探していると言っています」
「フォーちゃん?」
俺とメイは聞き覚えのない名に割って入る。
「しっぽが四つあるからフォーちゃん」
馬鹿げたあだ名だ。
何だそれとツッコミたくなる。
「それでそのフォーが誰か探してるって言うのはなぜ分かるので?」
「フォーちゃんがそう言ってます」
「わたし、フォーちゃんの傷を治している時にフォーちゃんの声が聞こえたんです」
「なんかこう…心に話しかけられたみたいな…」
念話?
以前、死ぬ前に弟子のルーシーとの会話でも念話を使用していたことを思い出した。
さっき言っていた、アナの癒しの力……
色々と頭の中で考えた。
「もしかしたらアナは動物と会話できる能力があるかもしれないな」
馬鹿にした感じで言った。
「ホントだもん!」
「別に疑ってないよ」
「そしたら聞いてもらっていいか、誰を探しているのか」
「分かりました」
アナは言われるとおり、フォーと見つめ合い眼球に力を込める――
脳裏にピキンッと何かが走ったそうだ。
『アナちゃん、アナちゃん』
「聞こえました!」
思わず声を出した。
もう一度、
『アナちゃん、ワタシの子供が攫われたの』
『誰に?』
『分からない。ワタシが子供たちのご飯を探してるうちにいなくなって』
『子供は探したのですか?』
『もちろん! でも見当たりません』
『巣穴が荒らされて争った形跡があったので、もしやと思い、近くを捜索していたらアナちゃん達を見つけて、犯人と勘違いしてしまいました。ごめんなさい』
アナは念話が終わると直ぐに俺とメイに事情を説明した。
× × ×
事情を聞いたメイはフォーに抱きつき「ごめんなさい~」
涙を流した。
「子供が攫われたなんて知らなくでごめんなさいー」
「私酷いことをー」
フォーも抱きついて泣いた。
こんな二人を見てアナはなんて仲がよろしいのでしょうかともらい泣きをする反面、俺はバカバカしい顔を馬鹿げてる二人に向けた。
すると、アナは俺に放った。
「師匠!フォーちゃんの子供を探しましょう!」
「えーーっ」と心の声で叫ぶが言い出せなかった。
「そっそうだなー 一緒に探そう…」
魔物の子供より金山だろと言いたいがやはり言えない。
しょうがないからどっちも探すことになった。
× × ×
火の玉が周りを照らしながら進むと奥に繋がる道が発見された。
「おいみんなー 道がありましたー」
やはりここには何かあると認識し奥に行くことを進めた。
こんな洞窟に何も無いわけがなく、人工物の形跡もないことから未発見の洞窟と考えていた。
金に一歩近づいた。
辺りの地面を見渡すと、かなり小さいがやはり砂金がある。
手に取るとって持ち帰るレベルでは無いため放置だが、望みが現実になりつつある。
暗闇の一本道をさらに進んだ。
×××
天井が近寄ってきた。
自分が巨大化したか?
鳥肌が立ってきた。
さすがに寒い。
洞窟散策から三十分。
道が狭くなってきた。
先程まで天井までの距離が2メートルあったものの、今は1メートルもない。
歩きづらい。
こんなところで小型の魔物なんかに出くわしたら大変だぞ。
そして、メイの文句は始まった。
「ね~寒い せまい~ 窮屈~」
洞窟内では声が反響。
でた、ロリっ子巨乳ギャルのわがまま。
俺は鬱陶しさにため息。
「我慢してください 皆同じ気持ちです」
それにしてもアナは大人だ。
文句も弱音も吐かない良い子だ。
人一人やっと通れる道幅に前から順に俺、アナ、メイ、フォーの順に縦列。
もしもの場合、前から沸いた敵は俺が。
後ろから沸いた敵はフォーが監視する為の配列になっている。
って言ってもこんな狭い洞窟の通路に入れる魔物なんて限られているがな。
油断――
「ピキンッ」と何かが光った気がした。
「止まれ!」
後ろにいる仲間に制止を呼び掛けた。
「トラップだ」
足元にピアノ線がピーンと伸ばされ道を阻んでいる。
辺りを確認すると、横に阻むピアノ線とは別に一本道のずっと奥に繋がるもうひとつのピアノ線。
この二本のピアノ線は繋がっている。
おそらく、この横に阻むピアノ線にかかると奥に繋がるピアノ線に伝わり、侵入者を認識するものと思われる。
トラップと言うよりは索敵。
「みんな見てくれ、これに引っかかっちゃだめですよ」
狭い道なため、前が見えない。
アナとメイは俺の背中に乗りかかってピアノ線を見ようとする。
左肩には未発達のぺったんこの体が密着。
右肩にはEカップのおっぱいがのしかかり、肩に寄りかかるためおっぱいの形が変形。
横乳が最高。
そんなピアノ線よりも背中に寄りかかる女が気になって頭の中は女だらけになった。
そして少し勃起。
だが、気を取り直して。
「これにかかると、奥に繋がる糸に振動が伝わって俺たちの侵入が分かるってことだ」
「ということは誰か人がいるってこと?」
「いやそれは考えづらいです」
「こんなところで暮らす人なんてまず居ないと思うし」
「恐らく魔物、多分ゴブリンだ」
「ゴブリンならこの狭さの洞窟は容易いし」
「ゴブリンは性格の悪い生き物だから」
「こわーい」
アナが怯える。
怯えるアナの頭をポン。
「大丈夫 私がいる」
「師匠……」
アナの頬は赤く染った。
メイはそれを見ていてほっぺをプクッと膨らませてお怒りモード。
「アナばかりずるい~」
キザな言動を取ってしまって恥ずかしくなった。
「メイも」
今度はメイの頭をポン。
メイの頬が赤く染まる。
それを見ていたフォーが順番と思ったのか、メイの後ろに並び頭をポンとされるのを犬のように下をハアハア出しながら待ち構える。
「お前にはやらん」
「フォーン」
フォーは泣いた。