第二十二稿その3
これからの目的は防衛拠点の作成と兵士の育成だった。
私は兵士の育成なんてしたことないから、兵士の育成はパクチー君とルッコラ君とバジルちゃんに任せることにした。
私とクレソンちゃんは防衛拠点の作成を指示した。
「さっきのパセリちゃんの話しだと、ここの拠点を強固にしたいってことだったけど、それも後回しにしましょ」
クレソンちゃんが私に言う。
どういうことかしら?
「ここの拠点って既に柵の中でしょ? もしも掌握軍が私たちの土地を狙ってくるとしたら、ここの拠点を狙うかしら?」
狙わないの? だって拠点だよ?
「戦略ってものを分かってないわね。拠点はあくまでも拠点。そこを潰さなくてもその村を潰せるなら拠点は狙わないわよ。拠点攻撃には大きな戦力が必要だしね」
「あ、そっか。拠点をスルーして町の中枢を狙えばいいのか」
なるほどね。確かにわざわざ拠点に足を運ぶ必要はないわね。
「そゆこと。もちろん、サラダ村を狙うにしろレタス村を狙うにしろ、この拠点に戦力があるということは背後を討たれる心配があるけど、土地を奪い返すのが目的ならばこの拠点は放置でいいわけ。そもそも掌握軍にとってレタス村もサラダ村も不毛な土地なわけだし、大きな戦力を伴う戦闘をしてまで獲得しようと思わないわ」
人差し指を立てながらクレソンちゃんが説明してくれる。
「だからサラダ村とレタス村の間に作るのは防衛拠点じゃなくて輸送拠点にするの。武器や食糧、人員を輸送する拠点。傷ついた仲間を治療したりもできる最前線の場所にしとく。ただ、私たちの土地は拡大することを見越すから、ベッドとかも全部簡易的なものでいいわ。最終的には備蓄庫として活用するから」
クレソンちゃんがテキパキと言う。
物凄く頭がいい。正直怖いくらいだ。
「でも、防衛拠点は必要でしょ?」
どこに作るつもりかしら?
「防衛じゃなくてただの軍事拠点を最前線に作りましょう。その方が手っ取り早いわ」
クレソンちゃんが言いたいのは、つまり私たちの領土と掌握軍の領土の境界線である最前線の防御を強固にして、敵から攻めにくくすると同時に物資や人員を集める拠点を作ると言うわけか。
もはや拠点というより砦だね。
「各町から輸送拠点に人員や物資を定期的に輸送。そこから最前線の軍事拠点へ人員と物資を輸送する流れよ」
クレソンちゃんの言う通り、最前線の砦化が始まった。
と言っても、掌握軍と衝突しているわけではないから、砦を作ることは容易だった。
まずはぐるりと全ての村を囲っている柵の内、一番掌握軍の土地に近い箇所の柵を強化する。
具体的には何十にも柵を増やすということ。
更に物資を保管しておく保管庫の作成と水源の確保、田畑の作成をする。
「水は隣の川から簡単に確保できるね」
川の水を汲みながらクレソンちゃんに私が言う。
保管庫や田畑も村のみんなが手伝ってくれるから楽だしね。
ここの拠点が終わったら、後方の輸送拠点の作成に入る予定だけど、輸送拠点を作っている間に私たちは掌握軍に攻め込む予定だった。
「後は宿舎ね。みんなが休む場所と怪我を治療する場所が必要よ」
クレソンちゃんが次々に必要なものを指示する。
結局前線の砦は西側が川岸まで広がってしまい、そこから後方へとやや縦長の形となった。
「念のために拠点をぐるりと柵で囲いましょ」
クレソンちゃんは油断しないんだなぁー。
あ、そうだ。大事なこともあったね。
「大きめの櫓を囲ってる柵にいくつか作りたいんだ」
「見張るために?」
私が言うと、すかさずクレソンちゃんが聞いてきた。
見張りという概念がなかったのにすぐに理解してるのはさすがだね。
「見張りもそうなんだけど、攻撃の支援にもなるでしょ?掌握軍へ攻める時に弓矢で攻撃してもらうの」
クレソンちゃんは、なるほど。っとにやついた。
そして何を思いついたのか意地悪っぽい笑みも浮かべた。
「この拠点、かなり強くなるわよ」
そう言うとクレソンちゃんは、妖精魔法を使って田畑の食物の成長を促し、更に砦の中に小さな林を作り出した。
砦は北道の終着点に作ってる。つまり、レタス村へ渡る橋の場所だ。
クレソンちゃんは、隣を流れている川を削って、砦の前面にまで川を作ってしまったのだ。
もちろん小さな川だけど、その川を砦に引き込んで池を作ってそこを水の貯蔵庫にしてしまった。
もう凄すぎてよくわかんないレベル。
その上、作った川の向こう側に溝を作っていた。
「柵、深い穴、川の三重の防壁よ」
えっへんと胸を張ってるけど、うん。凄いよ。
「こっちから攻めるには拠点の横か後方から出陣することになるけどね」
唯一のデメリットをクレソンちゃんが言うけど、そんなの問題ないよ。
むしろ守るべき箇所が東側と南側だけになったのは大きいよ。
「南方と東方に多めの櫓を作ってね」
クレソンちゃんが村人の大工にそう指示を出す。
「川側の櫓は他の箇所より高くして?」
私も指示を出す。
高い方が遠くまで矢を飛ばせるからね。
こうして私とクレソンちゃん指示の元、軍事拠点が徐々に作成されつつあった。
これが完成したらいよいよ掌握軍と本格的に戦争が始まる――




