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第三稿その1

私たちは港のある町を後にして、山の向こうの都市を目指している。


文字通り山越えがある。


それは大変じゃない。


大変なのはむしろ別の部分。


例えば私とナポリタンは性格とかキャラが全くの正反対。


ただでさえ私は女だ。


つまりアヤメの中の人は女なわけだけど(実物がデブスとかは関係なしに)、ナポリタンは人懐っこい性格と言うか、ビックリするくらいに距離が近い。


何かあると顔のどアップが目の前にある。


今まで色んな女をそれで落としてきて、色んな男との関係も良好だったのだろうけど、元ヒキコモリもといラノベ作家にその手は通用しない。


苦手なんだそういう陽キャのノリは。みんなで集まってウェーイとかイェーイとかヒャッハーとか、はははーとかね。そんな大声で笑うのは家でお笑いの番組やアニメを観た時くらい。喜びの声を上げる時は、ゲームで難しいステージをクリアした時くらい。


誰かと一緒にやったーとかは言わない。まぁ、チャットでヤッターとかは打つけどそれだけ。声には出さない。


つまりナポリタンは私とは丸っきり別の世界の住人なわけ。


もっと正直に言えば苦手なんだ。こういう人種が。


はっきり言って現世では見下してた。何の役にも立たないクズが!って。


でもいざ一緒に冒険してみるとどうよ?役に立つどころかウザいだけ。私がおしっこしたい時だってなぜか一緒についてくるし。(「アヤメ便所?オレもオレも~。連れションしよーぜー。」)


何でだよ!ただでさえおしっこする時に、頑張って自分の下半身を見ないようにしてるんだぞ?空気読めよ!誰が好き好んで他のやつと一緒におしっこしたがるんだよ。


しかも!冒険中はトイレないんだぞ?私に野外放尿の性癖があればいいけど、あいにくそんな性癖持ち合わせていない!何が悲しくて苦手な男の放尿シーンを見ながら、私の放尿を苦手な男に見せにゃあかんのだ!


あれか?ツイッ〇ーとかで見る、オナ見せとか相互オナとか言うやつの進化版か?私にそんな趣味はないぞ!


カラアゲさんはカラアゲさんで、めっちゃ堅物。うちのお父さんよりも堅物。


風呂と飯は仲間皆で食うものって聞かないんだよね。


いや私も男性の裸には興味あるよ?年頃だし乙女だしね?でもさ、こちとら慣れない異世界生活の上、女が男に変わってるんだよ?その上、他の男と一緒に風呂とか死んでも無理だから!


まぁ、カラアゲさんには逆らえないから入ったけど…


何だろう…カラアゲさんもナポリタンも堂々としていて前を隠そうとしないのに、私だけ隠してるからさ、


「何だお前は!女じゃあるまいし!」


とか言って隠してたタオルを剥ぎ取られたんだけど…


いや女だし?ブスには隠す価値すらないってか?なんかさ、ドMに目覚めそうだよホント。


裸の付き合いって言うけどやめて欲しいよね。私からしたらただの羞恥プレイだよ。


寝る時はカラアゲさんのいびきはうるさいし、ナポリタンの足は臭いし、自分の脱いだ服は男くさいし、ほんと大変。


そんな感じで戦闘は一回も無かったのに、とてつもなく疲れて山の向こうの都市へたどり着いたんだ。


宿では1人1部屋だからやっとゆっくりできる。


そう思ってたのに…


「部屋が1部屋しかないなんてめっちゃ繁盛してるっすねこの宿。」


にこにこ笑いながらナポリタンが言う。


いらん設定作ったの私だー!


特に意味もないのに、この宿常に満室で、偶然勇者が泊まる日だけ1部屋空き室がある。って感じにしたんだ。


「田舎町とは違って人が多いんだろうな。」


カラアゲさんがご飯をガツガツ食べながら言う。


カラアゲさんがカラアゲを食べ、ナポリタンがナポリタンを食べるという謎シチュエーションを作ったのも私だ。


「で、これからどうするんすか?」


口の周りをケチャップだらけにしながらナポリタンが訊く。


何気にお茶目なところがあるのがまた、気に食わない。


「当初の目的通り、船で行きつくはずだった、漁港が盛んな街へ向かう。そのためには羊が多い村へ向かう必要があるな。」


あぁ、羊が多い村か…またドラゴンが現れる場所ね。


…ってちょっと待ってそこはまずい!


「あ、あの。他のルートから行きません?」


「なぜだ?一番近いルートが羊が多い村だぞ?」


私の提案に当然の疑問で返してくる。


なぜって…私はこの先の展開を知ってるのよ?


この後その村で起こるできごとも!


でも…そんなのどうやって説明したらいいの?実はこの世界は私の創造の世界でしたって?誰が信じる?


「アヤメは何かビビってるけどオレは全然平気っすから。」


あぁもう!何でこの男はこういう余計なことを言うかなぁー。


「うむ。当初の予定通り、羊が多い村へ向かう。いいな?」


ほらもうー。カラアゲさんお得意の、文句を言わせないいいなが出ちゃったよー。


仕方なしに私は頷いた。


この後に起こる出来事に落胆しながら。

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