第二稿その4
ゴゴゴゴゴゴ。
静まった港のある町を轟音が襲う。
やっぱり来たか。
最初に感じたのは大きな縦揺れ。
地震かと間違ったけど、窓の外を見て地震とは違うことに気づいた。
確か私が書いたラノベではそんな感じで表現していたはず。
うん。そのまんまだね。
でもね、地震じゃないんだよね。
「ドラゴンだぁー!」
町の人々の叫び声が部屋まで聞こえる。
そうなんだよね。
理由は分からないけど、この町にもドラゴンが襲ってくるんだよね。
で、勇者が倒すけどドラゴンのブレスで船が焼けちゃって、仕方なく陸路を選ぶって展開なんだよね。
「さてと、行きますか。」
おっと、うっかり独り言が出てしまった。
1人が多いと寂しさからか、たまに独り言とか出るよね?これ、共感してくれる人いないかなぁ?
ってそんなことはどうでもいいか。
まずは準備していた魔法の杖!何でか私の小説ではここから勇者は魔法の杖を使ってるからね。だから私も町の道具やで買っておいた。
「勇者殿はすでに魔法が使えるのでは?」
とか武器屋のおっちゃんに言われたけど、しょうがない。私の小説ではこれから先勇者は杖を使って魔法を放つんだから。
たぶん、普通はそのまんまじゃ魔法を放てないから、媒介として杖を使うとかそんなんなんだろうね。
「みんなは逃げて!」
かっこよく私が言う。
だって、そう言うセリフがあるもん。
「「アヤメ!」」
カラアゲさんとナポリタンが同時に叫ぶけど私は、大丈夫。と一言。
「自分が描いたやつだけどさぁー。こんな綺麗な景色を消すのはないんじゃないかな?」
私の本心だった。
生まれて初めての夜景を消されるのは気分のいいものではなかった。
そのままいつもみたいに消えろ!と叫ぶとドラゴンは消滅した。
でもやっぱり私が描いたラノベの通り、私が向かうまでの間に暴れたドラゴンのせいで、船は炎上。
仕方なしに私たちは歩いて、山を超えて山の向こうの都市を目指すことになった。
この道中でまた騒動があるんだよなぁ。
憂鬱な気持ちで私は、港のある町を後にした。