第十九稿その2
「シーナル!あなた待機してるんじゃなかったの?」
驚きながらシャルディが言う。
「いつまで待っても貴方たちが来ないから私がやって来たのではないですか。」
返事をしながらシーナルと呼ばれた男は、鏡で自分の顔を見てうっとりしている。
たぶんじゃなくてももしかしなくてもあいつはナルシストだ!
「うん。やっぱり私はどの角度から見ても美しい。そうは思わないかい?」
…
こっちに問いかけてきてるけど、あれって私たちに訊いてるのかな?
「ほら、返事してあげなさいよ。」
バジルちゃんがひそひそと私に言ってくる。
「おい。あれは美しいのか?」
どうやらパクチー君とシーナルの美的感覚は違うようだ。私もどちらかと言えばパクチー君寄り。
確かに顔立ちは整っていると思う。
世に言う美系男子だろうね。
でも性格が無理!私もよく言われてきたけどキモい!
「えぇーと…」
「んん!?」
ひぃ!私が答えようとしたら突然両目を見開いて近づいてきた。
めちゃくちゃ手入れされた両手でほっぺを触られる。
ひぃぃー。なんか怖いよこの人。
「勇者様~。」
ルッコラ君が情けないような声を出すけど、私はそれどころじゃない。
シーナルには周りの声が聞こえていないようだ。
じろじろと私の顔を見る。
目を合わせたら襲われそうだから、私はシーナルの手を見ることにした。
「パセリを離せ!」
パクチー君が走り出そうとするのをシャルディが止める。
「やめなさい。」
水色の涙で私たちの動きを止められてしまった。
シーナルの動きは止まってないから、このままじゃ私やられちゃうよー。
それにしてもほんと手入れされてる手だなー。
すらっとして長い指に、しっかりと磨かれた爪。
ハンドクリームとかちゃんと塗ってるのが分かる。すべすべだ。
「貴方、女性ですね?」
…は?
「私には分かります。こんな格好をしていますがその中身は女性。そうでしょう?」
「え、えぇ。まぁ女だけど」
「やはり!」
また私の言葉を遮ってシーナルが言う。
なんかクルクル回り始めた。
「あぁ。また私は罪を犯してしまうのだろう。分かりますよ。貴方は私に惚れてしまったのでしょう?」
は?何言ってるのこの人?
「無理もありません。私の美しさは本物です。この美しい顔に惚れてしまうのは、生物学上仕方のないことです。」
「えっと。あのー?」
「そうでしたか。そういうことですか。」
だめだこの人。自分に酔いすぎてて人の話を聞いてない。
困惑した私がバジルちゃん、クレソンちゃん、ルッコラ君、パクチー君の方を助けを求めるように見た。
4人とも苦笑いをしながら首を左右に振るだけだ。
そうだよね。助けられるわけないよね…
そうこうしている内にもシーナルは、私の両手を握ってぶんぶん上下に振ってくる。
「この私を一度どこかで見かけたのですね?そしてその私に会いたいがために、サレやシャルディを困らせていたと。ですが私にはこれからやらなければならない大事なお仕事があります。それが終わりましたら再びお会いしましょう。」
そう言うと、行きますよ、シャルディ。と声をかけてすたすたと歩いて行ってしまった。
シャルディもそれに従っている。もしかしてシーナルの方が上とか?
「さっきのあれ、どういうつもりだったんだろ?」
困惑したまま私がみんなを見る。
「クレソンが思うに、パセリちゃんがあいつに惚れたんだと勘違いされたんだと思う~。」
分かりきってることをクレソンちゃんが言ってくる。
言わなくていいよ!フォローしてよ!
「でもまぁ、とりあえず掌握軍が引いたことは間違いないよね?」
バジルちゃんが明るく言う。
確かにそうだね。私たちはとりあえずパクチー君と一緒に再びレタス村に行くことにした。




