第十七稿その4
「妖精魔法、浮遊!」
私の方へ矢がスローモーションのように迫って来るのが見える。
そんな時にやや遠くからバジルちゃんの叫ぶ声が聞こえた。
「血祭、硬質化!」
ルッコラ君の声まで聞こえる。
「何やってんのよ!さっさと逃げなさい!」
あれ?死に際に見れるスローモーションの世界じゃないの?
本当に矢が遅くなってる。
私が鎖を外そうともがいていると、クレソンちゃんのぷはぁ!という息を吐く声がした。
その瞬間、矢のスピードが戻った。
クレソンちゃんが妖精魔法、遅延を使ったのだと後から知った。
バジルちゃんの妖精魔法、浮遊でしばらくの間私は空が飛べるようになっているらしかったけど、今はまだ鎖に繋がれてるから意味ない。
ルッコラ君は血祭、硬質化で腕を硬くして私の前に来てくれた。優しいね。
そのまま全部の矢を受け止めてくれた。
「もう無理ぃ~。」
へなへなへな~とクレソンちゃんがへたり込む。
妖精魔法、遅延はかなり消耗するらしい。しかも息を止めている間しか発動できない魔法らしい。
私も前作で魔法を使える勇者だったけど、魔法って意外と奥が深いんだね。
「なんだぁー?」
サレはまだ状況を理解できていないらしい。
「あんたはほんと役立たずな上に世話が焼けるわねぇ!」
文句を言いつつも鎖をしっかりと外してくれるあたり、バジルちゃんの面倒見の良さがにじみ出てる。
ルッコラ君の血祭はパクチー君の血祭同様に、自分で解除するまでその効果は持続するっぽい。
「フェアリーにバンパイアだと?オカマ!てめぇーまさか本物の勇者か?」
サレが私を睨む。
「だからオカマじゃないっての!まぁ勇者だってのはほんとだけど…」
何度も何度も私のことをオカマって言ってほんとに失礼なんだから!
「勇者様を悪く言うなー!」
ルッコラ君が叫んだところ初めて見たよ。
私を凄く庇ってくれるじゃん。
「あ!こら待ちなさいよ!」
私に巻き付いていた鎖を無造作にほっぽり投げて、ルッコラ君の後を追った。ほんと仲良いねー。
「パセリちゃん。その鎖を動かしてるヘビを倒しておきましょ?」
フラフラに立ち上がりながらクレソンちゃんが言って、ヘビに向かって近くに落ちてた木の棒を突き刺した。
「あいつの偉才で出てきたなら、何が仕掛けてあるか分からないからね。」
力なく微笑む。
「クレソンは私のカバンに入ってて!」
肩からかけるポーチのようなカバンにクレソンちゃんを押し込んで私もルッコラ君とバジルちゃんの後を追う。
「てめーらが来たってことは、レタス村に向かってた俺の部下たちもこっちに来たってわけだ。タイミングが悪すぎだな。」
サレがちっ。と舌打ちをする。
私にとってはサレが仲間を呼んでくれたおかげで助かったから良かったけど、サレからしたら私を倒す期を逃しちゃったね。
「選択ミスってやつよ。普段からゲームしていれば、こういうのを避けられるものなのに残念ね!」
ドヤ顔で言ってやった。普段からゲームしてれば先を見る力が身につくものよ。
ここで仲間を呼びに行ってもいいのかどうかとかね。
まぁ、私がサレの立場だったら仲間を呼びに戻すかどうかは分からないけど、呼んだ結果がこうなるとは予想できないけど、そこはいいの!何回も人をオカマ呼ばわりしてきたんだから、ちょっとはこっちの方が立場が上って分からせないとね!
「ここにはパクチーもいるしな…仕方ねぇ。小将軍の俺の実力を見せてやる!」
サレが大きめの箱を取り出した。
箱には禍々しい雰囲気が纏っていた。




