第十七稿その3
パクチー君の言う通り、後続の軍はゆっくりと攻めてきた。
その数はなんとたったの3人!
それだけ掌具や握器、偉才の力は絶大ってことか…
「おや?蹂躙部隊が全滅してるぞ?ってありゃパクチーじゃねーあ。あいつにやられたのか!おい。レタス村に向かった連中を呼び戻せ。ターゲットはこっちにいたってな。」
真ん中の男が右隣の男に言うと、無言で右の男はその場を去った。
どうやら、今回の襲撃はパクチー君を狙ったものらしいね。
「ようパクチー。この前は俺の部隊が世話になったな。今回も俺の部隊はお前のせいで全滅だぜ?どうしてくれんの?これ?」
長い鉄棒を肩に担ぎながらさっきまで真ん中だった男が言う。
騎馬隊はこの男の部下ってことかな?
それにしても自分の仲間がやられたってのに、何も感じてないように見えるのは気のせいなのかな?
「またてめぇか…サレ。何度も言ってるだろーが。俺はてめぇの下になんかつかねぇーよ!」
言い終えると同時にパクチー君が飛び出した。
伸ばした爪で、サレと呼んだ男を切りつける…いや、切れてない。上体を反らしてサレが避けたんだ。
しかしパクチー君の方が一枚上手だ。
今パクチー君はジャンプして右手を左上にひっかいた。
その攻撃をサレは上体を反らして避けたわけだが、そのままパクチー君は器用に右足を蹴り上げた。
右足はサレの反らしきれていない上半身へ当たり、少しだけ蹴り飛ばした形だ。
突出した力…さすがだねぇ。
「相変わらずいい動きすんじゃねーか。ますます俺の部下に欲しいぜ。」
敵もかなりやるね。
蹴り飛ばされても体制を一切崩さず、そのままほんの数メートル後方に下がっただけ。普通なら尻餅でもつくだろうに…
「言っておくけど、この騎馬集団をやったのは俺じゃねぇ。こいつだ。」
はぇぇ!?何言っちゃってるの?パクチー君!
ちゃっかり私のことを指さしてるけど、なんの裏切りよこれ!
「ちょっとどういうつもり?」
怒る私にパクチー君は、はぁ?とすっとぼけた顔をしてくる。
「ほんとのことだろーが。」
「たっ、確かにそうだけど。わざわざ言わなくたっていいじゃん!」
私とパクチー君が言い合っていると、ほう?とサレが反応した。
ほら見なさいよー。
「そこの間抜けがやったのか。」
「だーれが間抜けよ!」
失礼な男ね!
おかまかよ。とか言われたけどそんなのはどうでもいい。
この失礼男が~。
「お手並み拝見!」
サレが私に向かって鉄棒を構える。
「その握器、前見たのと変えたのか?」
「パクチーに壊されたからな。今回のはあれと比べると使いにくいし火力も低いが致し方あるまい。」
そう言って鉄棒で突いてくる。
え?なに?掌具とか握器って壊せるの?
とゆーかこの人なに?棒術の達人かなにか?攻撃めっちゃ速いんだけど…
「わっ、わっ、わっ…」
あれ?でも私意外と対応できてる?やっぱパセリ君は運動神経かなりいいんじゃないの?
「なるほど。」
あ、サレがにやりと笑ってる。絶対何か仕掛けてくる。
「気をつけろ!そいつは箱の偉才を持っている!」
パクチー君が忠告してくれる。
箱?
とゆーか助けてくれてもいいじゃないー。って無理か。なんかもう1人と戦い始めちゃったし。
箱の偉才とか言ってたっけ?それ何?とゆーか偉才自体よく分かってないんだけど。魔法みたいなもん?能力とか?
パクチー君の言葉に反応したのか、サレがその通りと言ってどこからか小さな箱を取り出した。
箱を私の方に放り投げてくる。
「…?」
何これ?くれるのかな?
そう思った瞬間、私の5歩くらい先に落ちた箱が開く。
中からは弓矢の矢が飛んできた。
「おいオカマ。俺の偉才は箱だ。箱の大きさは自由で中身もある程度自由に詰め込める。気を付けな!」
私が矢を全て盾で防いだのを見て失礼男サレが言う。
何それ!反則級じゃない!とゆーか私はオカマじゃないし!
そう思っていたら今度は3つの箱を放り投げてきた。
「この偉才の欠点は消耗が激しいことだ。」
この人何なの?いちいち説明してくれるのはありがたいけど、馬鹿なの?それともよほど自信があるの?
3つの箱が開くと、1つ目からはたいそうな煙が出てきた。
「見誤るなよ?」
2つの箱とサレが煙に隠れた。
まずい…さっきみたいな弓矢攻撃だったら反応できるかわかんない。
私はひとまず煙から距離を取った。
念のためにさっきと同じ直線上からも移動しておく。
さっきと同じ弓矢が飛んできた。
「全く同じ手?そんなの通用するわけ――」
同じ攻撃じゃなかった。
煙の中からサレが飛んできて鉄棒で殴ってきた。
『あれが本命の攻撃だったか…』
ホーリーシールドガードのおかげでダメージは受けなかったけど、やっぱり馬に飛ばされた時と同じように体中に衝撃は走る。
内部へのダメージにホーリーシールドガードは効果がないのだ。
「言っただろ?この偉才は消耗が激しいって。見誤るなともな…」
鉄棒の先端を私に向ける。
そうか。握器ってそういうことか。
見た目はただの鉄棒だけど、これの場合先から弓矢を撃てるのか…ボウガンみたいになってるんだ。
「見た目が全く変化しない握器ってのは貴重なんだぜ?本来ならボウガンの形に変形するからな。」
そう言ってたくさんの矢を撃って来る。
そうなんだ?
さっきからこの人は色々と説明してくれるけど、きっと戦いに自信があるからなんだろうね。
「でもさ、そんな遠くからじゃ矢が当たらないのはさっきので分かってるはずでしょ?」
私がそう言うと、サレはにやりと笑った。
「だからよぅ、見誤るなよ。」
は?え?
サレが手に持つ鎖を引くと、地面に這っていた太い鎖が私の体中に巻き付いてきた。
「2つ目の箱の中身はこいつだ。飛んだ矢は俺の握器の矢だ。分かったか?」
くそ!最初の攻撃で箱の中身が矢だと勝手に勘違いしてた。
あいつが私の前に現れたのは、鎖に注意がいかないためだったのか。
見れば鎖の先端をヘビが一生懸命に引いていた。
なるほどね、3つ目の中身はヘビだったわけだ。こいつを操って鎖を私の周りまで持っていったわけか…
幸いにも聖盾が一緒に巻き付けられている。つまり、これを離して私だけ脱出することがきっとできる。
「ぐむむむむ…」
盾を何とか動かして鎖を緩めようとするけどできない。盾と体が密着しすぎて盾だけ残して脱出するのができない気がしてきた。
「さて…チャンスを逃すほどお人好しでも馬鹿でもないんでな。」
盾に邪魔されない位置まで移動してサレが矢を放つ。
1発だけではなく何発も放っていることが、私を生かすつもりがないってことを物語ってるよ。
もうだめか…
私は自分が作ったラノベの世界で死ぬんだ――




