第十七稿その2
「進めぇー!」
先頭の馬に乗った大柄な男が叫ぶと、背後からおぉー!と怒号が聞こえてくる。
むさくるしいなぁー。って以前は思ってたんだけど今はそんなこと思ってらんない。
先頭の大柄な男の後ろには馬に乗った何人もの騎馬隊が隊列を組んで進んできている。
先頭の男を頂点に三角形の形を崩さずに進んでくる。
「しっかりとまとまってるんだね。」
本音が口からこぼれた。
人民掌握軍って名前から、私のイメージでは、末端は自由に虐殺とか行っている集団って感じだったんだよね。とゆーか、そんな感じでラノベで書いてたもん。
上層部は世界をいい方向に変えるために全ての国をまとめようとしてるけど、末端はそんな思想なくてやりたい放題って感じに。
「あぁ。てめぇが作ったその内容はちょっと前までだ。何でも掌握軍の上層部にハグレってやつが入ってからしっかりと統制されるようになったんだとさ。そういやハグレってやつの名前を聞くようになってから掌具や握器も登場したな…」
つまり、それまでの人民掌握軍は偉才と普通の武具を使ってたってことだね。それを変えて更に強大な組織に仕立て上げたのがハグレって人物か…
私のラノベにも登場しない謎の人物…
ってゆーか、ここに来て私が書いたラノベと全然違う方向に物語りが進んでいるんだけど何でだろう?
「先頭の騎馬隊は掌具も握器も持っていない本当にただの兵隊たちだろう。先頭の男だけ何か持ってるかもしれんが他のは雑魚だ!」
「何で分かるの?」
「最近の掌握軍の戦い方はいつもこうだ。先頭に大勢の騎馬隊を送り込み、敵の前線を蹂躙させる。その後に強力な掌具や握器、偉才を持った軍がゆっくりと侵攻して来やがる…」
ギロリとパクチー君が先頭の大柄な男を睨む。
その距離はもう10歩もない。
大柄な男は手に槍を持っていた。確かに私がよく読んだ漫画とかでも馬に乗っている人物の武器は槍だったな。
「舐めんな!爪伸!」
パクチー君が叫ぶと私と戦った時のように爪が見る見る伸びる。
素早く走り出してパクチー君の爪と先頭の大柄な男の槍とがぶつかる。
ガギンッ!
爪は鉄ではないはずなのに、金属同士がぶつかるような音が辺りに響く。
瞬間――
ドドドドドッ!
パクチー君と大柄な男が騎馬の波に飲まれた。
「パクチー!」
私が叫ぶも返事はない。
もっとも、戦闘中だから返事なんてできないだろうけど。
それよりも今度は私の番だ。
騎馬の集団が迫って来ている。
これを止めないと全てがバンパイア村に向かってしまう。
村では戦えるバンパイアもいるだろうけど、その前に私が倒す!
「はぁ!」
気合と共に聖盾をかかげると、ホーリーシールドガードが発動した。
私と恐らくパクチー君の体の表面を薄い膜が覆う。
騎馬の数は20程度…
「止めてやる!」
盾の内側に身を隠すようにして、盾を地面に立てる。
先頭の騎馬2頭が盾に突進をして私の後方に跳ね飛ばされた。
物凄い衝撃が腕から体中に伝わってくる。
次の3頭の騎馬の突進で私は横に弾き飛ばされた。
ホーリーシールドガードのおかげで私はかすり傷1つ負っていないけど、衝撃で体中が痛む。
「よくやったパセリ!」
パクチー君の声に顔を上げると、パクチー君の伸びた爪が血だらけだった。
「ちょ!大丈夫なの?」
「これか?これはあいつの血だ。よゆーで倒して来たぜ。」
ペロリと爪についた血を舐めながら言うのが、何だか悪役っぽい。
どうやらパクチー君はあの大柄な男を倒したらしい。
私の方も先頭を走る騎馬が転んで、後続する騎馬がそれに躓いて転び、転倒が転倒を呼んで全ての騎馬をひっくり返していた。
ちゃっかりパクチー君が全ての敵を倒していた。
殺すことないって思うかもしれないけど、村が狙われてるんだし仕方ないよね。これが現実。これが戦争。
「後続軍が来るぞ。これからが本番だ。」
そう言うパクチー君の表情は、どこか楽しそうだ。
あぁ。何となく気が付いていたけど、パクチー君っていわゆるヤンキーって部類のタイプで戦いとか喧嘩とかが好きなんだろうね。




