第二稿その3
「いやー!見た目と違ってアヤメって大胆なんだなぁー!」
酔ったナポリタンがウザ絡みしてくる。
鬱陶しい。
あれから何もないことを知っている私が、どんどん先を進み、その日の内に港のある町に着くことができた。
おかげで、せっかくの準備が無駄だったとカラアゲさんが言っていたけど、私の知ったことではない。
恨むなら、先の展開が分かるつまらないラノベに私を転生させた神様か願いが叶うお守りを恨んでほしい。
「まぁだがそのおかげで早くこの町に到着できたのも事実。」
渋々という感じではあるが、カラアゲさんも認めてくれた。
本当に異世界転生していたなら、この町に来るまでの間だけでも、ドキドキの冒険だったのだろうけど、今の私は全ての展開が分かる。
ドキドキなんてものは全くない。
そして実感すればするほどに、訳の分からない内容だったことに気づかされる。
これじゃあ誰からも共感されないよねぇ。
はぁ…
「どうしたん?アヤメ。」
こっそりとついたため息を目ざとく気づいて、ナポリタンが訊く。
こーゆーところが、モテ男と非モテ女の違いなんだろうなぁ。
「別に。」
それだけ言って私は寝室に戻って行った。
ちょっと無愛想だったかな?
でもね。この先の展開も知ってるし、そのための準備をしておかないとでしょ?
まぁ、理由とかは別にしてもこの町で起こる出来事は、物語的にはまだマシかなー。
部屋の窓から外を見ると、私が想像して描いた時以上に綺麗な景色が広がっていた。
2階だからそんなに高くはないんだけど、この町に高い建物がないからか、遠くまで見渡せる。
港の灯台や色んな灯かりがまるでライトアップのように美しい。
レンガ造りの家々から漏れるオレンジ色の灯かりもとっても幻想的。
イルミネーションとか夜景とかライトアップなんて見たことのない私だけど、この町の夜景はとっても綺麗だった。
生きて元の世界に還れるか分からないけど、もしも生きて還ることができたなら、どこかの夜景に見に行ってみようかな?