第十六稿その3
驚いたことにパクチー君がいるという場所は、クレソンちゃんがいた林の近くだった。
もっと驚いたことに、そこには妖精の里とバンパイア村があるんだとか。なんともご都合展開だね。まぁ今は関係ないか。
とりあえず私たちはバンパイア村に向かったんだけど、どうやらパクチー君は1人で人民掌握軍へ勝負を挑みに行ったらしい。
「何やってんだか…」
とバジルちゃんが漏らすのも仕方ない。
うーん。私が描いたラノベとは全然違う設定だけどまぁ仕方ないか。
というわけで私たちにはパクチー君が人民掌握軍と衝突する前にパクチー君を止める必要性が出てきた。
バジルちゃんとクレソンちゃんが、飛んでパクチー君を探してくれると言ってくれたのがとってもありがたい。
これまた驚いたことに、クレソンちゃんがパクチー君を見つけて何とか人民掌握軍とぶつかる前に引き留めることに成功した。
…んだけど、今度はパクチー君の怒りの矛先がこっちに向いてきた。
「何だてめーら?俺のやり方にケチつけんのか?」
あれ?喋り方がどことなくナポリタンに似ているような…
「俺はなぁー。掌握軍がバンパイア村に攻めてくるって情報を受けて迎え撃ってるだけだぞ?」
ギロリ。と睨まれた。
そうなの?それならパクチー君悪くないじゃん。むしろ村思いのいい子じゃん。
でも私たちも後がないからごめんよ。
「えぇっとさ。レタス村でご飯を食べた時にお金を払わなかったことあるでしょ?」
「お金?んだそりゃ。」
そりゃそうだよね?だって私もさっき知ったけど、フェアリーとかバンパイアにはお金って概念がないんだもん。
「えっとね。私たち人間の間では、ご飯を食べるのにお金っていう、うーん。アイテムが必要なんだ。お金とご飯を交換して貰うの。でね、パクチーがご飯を食べるだけ食べてお金を渡さなかったからレタス村の人が困ってるんだ。」
「てめぇ…何で俺の名前知ってやがる?まさか敵か?」
「違う違う!」
私はクレソンちゃんにも分かってもらうために、この世界が自分が作ったラノベの世界であることを説明した。
「よくわかんねぇな…けど迷惑をかけたってんなら謝るぜ。」
私のことはよく分かって貰ってないけど、お金が必要ってことは理解してくれたようだ。
「けどよ。その前に掌握軍を倒すぜ?」
「そのことなんだけどさ。私たちも掌握軍を倒したいって思ってたところなんだ。もし、仲間になってくれるならバンパイア村も助けられると思うんだけどどうかな?」
「あぁん?俺は俺よりも弱いやつとは組まねー!特にそこのルッコラみたいな泣き虫は大っっ嫌いなんだよ!」
ルッコラ君の隣でバジルちゃんが猛烈に頷いてるけど、納得してんじゃないわよ!
「強いとか弱いとかじゃなくて助け合おうって話しなんだけど」
「問答無用!爪伸!」
私の言葉を遮ってパクチー君が叫ぶ。
瞬間、パクチー君の爪が異様に伸びた。
「あれが噂に聞く血祭ね。」
私の隣でいつもののんびり口調ではない口調で、クレソンちゃんが言う。
血祭?何それ?
「あんたばかぁ?私たちフェアリーには妖精魔法が使えて、バンパイアには血祭が使えるの。常識でしょ?」
バジルちゃんがなぜか胸を張ってるけど、知らないし。そんな設定作ってないし。
とゆーかパクチー君すごく速いんだけど!
「死ぃね!」
右手の長い爪で私のことを右下から左上へと引っ掻く。
咄嗟に聖盾をかかげる。
ホーリーシールドガードが私とバジルちゃんとクレソンちゃん、ルッコラ君を包む。
爪は盾で弾かれた。
「その盾…掌具か?」
私の盾を見てパクチー君が目を細める。
掌具?何それ?
聞いたこともない言葉に反応したのは、意外にもバジルちゃんだった。
「そんな訳ないでしょ!これは勇者の印の片翼!聖盾!」
「ならばてめぇは勇者ってわけか!勇者を倒せば俺が世界最強だろ?」
にやりと笑って今度は左手の伸ばした爪で正面から突いてくる。
さっきの右手の攻撃で私の盾は若干右上へと上がっている。要はガードに隙が空いている状態だ。
その隙間を正確に突いてくる。
急いで盾を戻すけどパクチー君の攻撃の方が速い。
――ガッ!
ホーリーシールドガードが私を守ってくれたみたい。
薄い白い膜が体を覆ってくれてそれが鎧のようにパクチー君の爪攻撃を受け止めてくれた。
けど…
膜にひびが入ってる。
「確かに聖盾のようだな。その防御力は大したものだ。だがそれだけじゃ俺は倒せない…?」
パクチー君が途中が話しを止めた。
「勇者様をいじめるな!」
ルッコラ君!あんた何て頼もしいの。別にいじめられてるわけじゃないけど、いざという時に頼りになるのはいいね。
ルッコラ君がパクチー君を後ろから抱きつく形で止めてる。
「てめぇ…そんな血祭の使い方しかできねーから、弱虫とか言われんだろーが!」
どうやらルッコラ君も血祭を使ってるらしいけど、どんな力を使ってるのかよくわかんない。力が強くなるとかそんなのかな?
それよりも。
「ねぇバジル。掌具ってなんなの?」
「はぁ?あんたばかぁ?」
はい出ました。バジルちゃんのあんたばかぁ?
「掌具は握器と対になる掌握軍の特殊な武具よ。握器が武器で掌具が防具。物によっては武具に見えないタイプもあるって話しよ。」
「それにね~、それぞれが特殊な力を持っているらしいわよ~。」
クレソンちゃんがバジルちゃんのセリフを盗んだ。
「あんたねぇ!私のセリフを返しなさいよ!」
シャーっとバジルちゃんが怒ってるけどクレソンちゃんは、いいじゃな~い。と相変わらずのほほんとしている。
それにしてもふーん。そんなものがねぇ。つまり、その特殊な武具を使って人民掌握軍は領土を拡大してるってことか。
なるほど。私のつまらないラノベも作り込めばここまでの物になるのか。
「ここで私の妖精魔法よぉ~成長促進~。」
クレソンちゃんがサラダ村にもってこいの妖精魔法を使って、木の根っこを急成長させた。
根っこでパクチー君を捉えて降参させた。
「勇者ってだけはあって、ルッコラだけじゃなくてフェアリーまで味方につけているとはな。その代わり約束しろよ。必ず掌握軍を全滅させるってな。」
降参した割には上から目線だね。
でもまぁ、私が描いたラノベの通りなら人民掌握軍は全滅というか全壊させなきゃいけないから言われなくてもそのつもりだけどね。
とりあえず私たちはパクチー君を仲間に迎え入れた。
レタス村の食べ物屋の店主と話をつけないとね。
しかし、目の前から砂塵が上がっているのが見えた。
何かくるね…




