第十三稿その3
私が2つ3つの陣地を潰したら、人民掌握軍は逃げて行った。
そんな内容だったはずなのに、そもそも1つを潰すのですら大変。
そして陣地がどうしてちょっと離れた箇所に、不思議な形をして配置されているのかを痛感した。
他の陣地と連携が取りやすいみたい。
私の書いたラノベではあっさりと全ての陣地を落として人民掌握軍が逃げるはずなのに、1つ目で既に詰んでる気がする。
まずやや登り坂で攻撃をしかける私の方が明らかに不利だし、他の陣地から何やら応援部隊が出てくるし。
「ほらまた敵が増えた!どうするんの?」
そう言いながらもバジルちゃんは妖精魔法、発光を使ってめくらましをしてくれてる。
物凄く強い魔法っていうわけじゃないけど、便利だ。
一瞬でもできた隙をついて攻撃することもできるしね。
まぁ私の場合攻撃するって言っても木の棒で叩くだけなんだけどね。
それでもバジルちゃんが脅してくれるから、人民掌握軍は私に攻撃された者は逃げて行く。
「あいつに攻撃された者はここを逃げた方がいいわよー!あいつ人の皮を被った悪魔だから!攻撃はマーキングの印だよー。人民掌握軍から抜けないと知らないよー?」
誰が人の皮を被った悪魔だよ!
私は人間だって。
いやまぁそれで、敵の数が減ってるならいいけどさー。私の評価だだ下がりじゃない!
少しずつ減ってはいるけど、減る数よりも増える数の方が多い…
囲まれたら終わりだ…
「そこまでだ悪魔!」
誰が悪魔よ!
あぁ。囲まれちゃったか…
私とバジルちゃんは人民掌握軍に囲まれて弓矢を構えられた。
「私は関係ないからね!」
あっ!バジルちゃんずるい!
パタパタ飛んで逃げて行こうとしてる!
「ちょっと待ってバジル!」
そう私が叫んだのと人民掌握軍の1人が弓矢を放ったのが同時だった。
反射的に私は盾を掲げて身を守った。
瞬間、盾から眩い光が迸った。光はすぐに消えたけど、私の体の周りを薄い白い膜が覆っているのが分かる。
「なっ!何よこれー。」
真上を飛んでるバジルちゃんの体の周りにも白い膜が覆っている。
「なっ!何だ?」
弓矢を放ったやつが困惑の声を出す。
最初に放った矢は見事に盾に命中して地面に落ちた。
放てー!の号令と同時に周囲から一斉に弓矢が放たれた。
――あぁ。終わったな…
そういえば、異世界で死んだらどうなるんだろ?私の描いた方のラノベが変わるとかあるのかな?
って、勇者が死んだら意味ないじゃん!どんな物語だよそれ。
そんな、まるで走馬灯かと思えるような感じで全ての事柄がスローモーションで進んだ。
かと思ったら弓矢が私の体に出来た白い膜に弾かれて地面に落ちた。
なるほど、これ鎧の効果を発揮してるんだ。
「さぁ!反撃するよバジル!」
「お?おぉ!」
私が無事だったのを見てバジルちゃんも再び威勢を取り戻した。
「本物の悪魔だー!」
失礼なことを言って人民掌握軍が逃げて行った。
私を死なないゾンビか何かと思ったのかしら?
「最終兵器を出せー!」
何やらそんなことを言って逃げて行ったけど、あれは明らかにバンパイアだね。
「たかがバンパイアが何よ。私たちフェアリーの方が格上だし!」
何でかバジルちゃんは嫉妬してる。
とはいえバンパイアって普通に考えたら強い種族だよね?私の小説でも強い設定だし。
…強い…よね?…
なんか、ヒクヒクしてるけど…
目元に浮かんでる液体は血?…じゃなさそう…
「なにバンパイア。あんた泣いてんの?」
バジルちゃん相変わらず容赦ないよー。
確かに私も泣いてると思ったけど、まさかバンパイアが泣くとは思わないじゃん?
「う…」
バンパイアが口を開いた。
う?
「うぇーん!」
泣いたよ!バンパイアが泣いたよ。
え?何?バンパイアって泣くの?
「僕はルッコラ…人民掌握軍に捕まってたんだ…いざという時の戦力のためにって。でもこの通り僕は気弱だから囮として使うって言われて…うぇーん。」
泣きながらルッコラと名乗ったバンパイアが言う。
ルッコラねぇ。
私が作り出したバンパイアもルッコラって名前だけど泣き虫なんて設定は付けてない。
バジルちゃんと同じでルッコラ君も私が作ってない設定が付けられているようだ。
何はともあれ私たちは、人民掌握軍の拠点の1つを占拠した。
こうして私は、口悪い系フェアリーのバジルちゃんと泣き虫系バンパイアのルッコラ君を仲間に加えてレタス村に戻って行った。




