第十稿その4
業火エリアとでも名付けようか。後ろは大雨でどちらかと言うと寒い。でも目の前は暑い。
暑さと寒さが交互にやってきて、体の感覚がおかしくなる。
カラアゲさんが睨んだ通り、途中途中で左右から炎が出てくる。
私の苦手なタイミングゲーだ。
「天変地異の間で炎って何だよ…炎は自然災害じゃないのに…」
「なーにブツブツ言ってんだアヤメ?」
何度目かこんがり焼かれそうになって、ぶつくさ文句を言っていたら、後ろからナポリタンに指摘された。
「文句も言いたくなるわ!高度はどんどん高くなるし炎は暑いし。ってわっ!」
後ろのナポリタンに気を取られていた。
立ち止まるカラアゲさんの背中に思いっきりぶつかってしまった。
はぇー。男の人の背中って案外たくましいんだねぇー。
でもどうしたんだろ?
「何かあったんですか?」
そう言いながら、カラアゲさんの体の横から前方を見た私は絶句した。
「え――」
み…道が無くなってる…
そんな…だって私が描いたラノベだとちゃんと少しずつ上り坂のはずだよ?
「そんな…どうして…?」
「アヤメ落ち着けって。」
慌てる私をナポリタンがなだめるけど、落ち着けるわけないじゃん!だってこれじゃあどうやって魔王の元まで行くのさ!
「道はある。」
短くカラアゲさんに言われて私は我に返った。
よく見ると、急な下り坂になっていた。
しかも道が凍っている。
忘却の間は3階のはず。
凍っている道が向かう先は、隣の部屋?
「滑って下るしかなさそうだな…」
そう言ってカラアゲさんがスキーでもやるかのように、すい~と鮮やかに滑る。
「先行くぞ。」
ナポリタンまで鮮やかに滑る。
運動音痴の私は滑り台を滑るように座って滑ることにした。
カーブを丁寧に曲がらないとトゲの床に落ちちゃうよ~。
何度目かのカーブを過ぎると、真っ暗な部屋に到着した。
「よくぞここまでたどり着いた勇者よ。」
渋みの声がする。
うーん。魔王の城って割には簡単すぎるな。天変地異の間も結局トラップだけだし…
もう少し違う形を考えた方がいいかもしれないね。
「ここの階段を登れば我がいつもいる部屋にたどり着くことができる。」
その言葉にはっとした。
忘却の間だ――
「だがその部屋に来ることはおすすめしない。今からでも遅くない。引き返すがいいぞ。」
「こんなところで退けるか!」
ナポリタンが食って掛かる。
「うむ。俺たちはお前を倒すためにここまでやって来たのだ。」
カラアゲさんもナポリタンと同意見のようだ。
まぁ、当たり前か。
「やはりそうか。後悔することになるぞ。」
高笑いを残して魔王は自分の部屋に戻って行った。
そりゃそうだよね。
記憶を奪って世界を支配しようとしているんだから。
「ここから先は僕が1人で行くよ。」
そう言って歩き出そうとする2人を止める。
「そんなことはさせないって言ってるだろ?」
ナポリタンが先へ進もうとするけど、今度は譲らない。
「ダメ!魔王がいる部屋は忘却の間!一歩進むごとに記憶がランダムに失われていくの…」
意を決して私は全てを告白することにした。
そうすることで2人を止められるなら安いものよ。




