第十稿その2
「今度は何だ?」
相変わらず吹き付ける暴風に顔をしかめながらナポリタンが私に聞いてくる。
けど私だってこんなエリアは知らない。
私の設定は雷エリアと暴風エリアだけだから。
暴風エリアをある程度進んでも風は一向に止まなかった。
それどころかここから先はなぜか床が濡れていて雨が降っている。
途中で私達はロープを何度か替え、何度か落ちかけながら少しずつ順調に進んでいた。
誰かが落ちそうになった時は、他の誰かが反対側に落ちることで全員の落下を防いでいた。
さっきナポリタンが言ってたロープを引っ張るってこのことなのかな?
落ちそうになる誰かさんとは、もちろん私のことだ。
カラアゲさんとナポリタンの2人だけならもっと早く進んでいただろうに。
私が確実に足を引っ張っているのに、2人は何の文句も言わない。
ありがたい限りだよ本当に。
最初の頃は自分が作り出したキャラ、単なるキャラの1人。それくらいにしか考えていなかった。
旅をしている間にそりゃ情も沸くし、やられりゃ不安になるし騙されれば一緒に怒る。
自分が作り出したキャラだから愛着が沸いたとかそういうのとはまた別の感情を、私は今この2人に抱いている。
――離れたくない。私を忘れて欲しくない。
例えこの世界が偽物で作り物の世界だとしても――
忘却の間に着く前にちゃんと話をしないといけないね。
「あのさぁ2人とも。」
ちょうど区切りもついてるし、提案するにはいいタイミングでしょ。
ナポリタンは怖いもの知らずなのか、この大雨の中を突き進もうとして私を振り返った。
「何?」
すっとぼけたような言い方に私の決意が少し揺らぐ。
「さっきも言おうとしたけど、やっぱり2人ともここで引き返して。これ以上先はかなり危険だから…」
「あのなアヤメ。さっきも言ったけど、オレ達はアヤメに何を言われても引き返すつもりはないからよ。」
何をいまさらという感じでナポリタンが私に言う。
ポンと後ろから肩を叩かれた。
「カラアゲさん…」
「大丈夫だ。俺もナポリタンもそんなにやわじゃない。」
そう言ってカラアゲさんはナポリタンよりも更に先を歩いた。
――あ…
「そういうことじゃないのにな…」
ポツリと呟いた私の呟きは、絶対に誰にも聞こえてないはずなのに、なぜかカラアゲさんもナポリタンも振り返った。
「ん?」
「どうした?」
ナポリタンは相変わらずキョトンとした表情、カラアゲさんはやや困った表情。
「っぷ。」
思わず吹き出しちゃった。
「変なの。」
アハハと笑いながら私はそう言った。
忘却の間では私が先頭に立てばいい。
そうすればカラアゲさんもナポリタンも私を忘れない。
私は自分の作品を読めば2人を思い出せる。




