第九稿その2
「あぁあんたら勇者たちか。この都市は他の街と比べると平和だと思うよ。何せ魔王が守ってくれてるんだからなぁー。襲ってくるモンスターもいなければ、魔王に虐げられることもない。平和そのものよ。」
酒場のおっちゃんがそう言いながら隣のゴブリンに、なぁ?おい。と同意を求めている。
「ん?あぁそうだそうだ。本来ならオイラたちモンスターは人間に襲い掛かるんだけども、そんなことしたら魔王様に怒られっからな。この都市では仲良くやってんだわ。」
ぐびーっとお酒を一気飲みして、ぷはー!と息を吐く。
へぇ。ゴブリンって美味しそうにお酒を飲むんだぁ。
「でもよう。勇者は魔王様を倒しに行くんだろう?」
ゴブリンの横でジュースを飲んでいたトロールが話しに参加してきた。
トロールは甘いものが好きなのかな?あ、もしかしてお酒が飲めないとか?
「あぁ。まぁ、それがオレ達の役目だしね…」
気まずそうにナポリタンが答えるが、非難する者は誰もいなかった。
注意深く周りを観察していたカラアゲさんが、ナポリタンと私を店の外へ促した。
「先出てて。」
そう言って私はさっきのトロールに声をかけた。
「あの…何で僕たちが魔王を倒しにやって来たのに誰も怒らないの?」
「あぁ。魔王様がやられるとは思えないってのが1つ。」
ズズズとジュースを飲み干してトロールは更に続ける。
「これが運命ってこの都市に住んでいる人みんなが知っているってことが1つだな。」
運命?そんな曖昧なこと?
魔王を倒されたくないなら、今ここで私を襲えばいいのに…
「この世界に勇者が誕生したという噂が流れた瞬間に全員が悟ったよ。あぁ、運命が動き出したんだって。魔王様と勇者は相容れない存在だろう?どちらかが滅ぶまで戦いは続くはずだ。それをみんなが知って受け入れた。ただそれだけだ。」
私が困惑した顔をしていたからか、トロールは更に詳しく教えてくれた。
それでも私には理解できない…
運命とか受け入れたとか…
「つまりよぅ。魔王様が勝つって信じてるから今あんたらを攻撃しないのさ。魔王様のメンツをつぶしたくねーからな。」
がっはっは。と笑いながらゴブリンが大ジョッキのサワーを飲み干して言う。
ふーん。私達の負けを願ってはいるけど、それはあくまでも魔王の手によってってことなのか…




