第七稿その5
「やられた…」
火の手が上がった場所に着いた時に思わず私は口走った。
この炎上はいわば陽動。本当の目的が別にあった。
さっき私が遭った2人組。あの2人が私と別れた瞬間に火を放ったのだ。
町は燃えやすい木を使った街並み。
火は見る見る内に燃え移り、町を次々に飲み込んで行った。
私があの2人と行動を共にすればこっちの火が燃え移っていた。
カラアゲさんとナポリタンを芸術の町に向かわせたのが間違いだった。
犯人を捜して捕まえるよりも火を消すことを優先するけど、どう考えても火の方が早い。
やっぱり私が作った設定を変えることはできないのかもしれないね…
「芸術の町に避難しましょ!」
悔しながら私が音楽都市の住人に提案する。
なだれのように住人が隣の芸術の町に避難すると同時に、上空に黒い影が現れた。
やっぱり私の描いた流れのままね。
ドラゴンが芸術の町を襲った。
真っ黒い鱗に覆われた巨大なドラゴンのブレスが芸術の町を包み込む。
「消えろドラゴン!」
…私の魔法もここからじゃ届かないのかしら?それとも芸術の町が燃え尽きるまでドラゴンは無敵とか?
「勇者殿!」
走り出そうとする私を引き留めたのは、まだ都市に残っている住人たちだ。
私が困惑した顔を見せても動じずに住人たちは私に告げる。
「この町を見捨てるおつもりですか?」
いや。そうじゃないよ?違うけど今はドラゴン退治が先でしょ?だってあのブレスがあと数回吐かれたら芸術の町は完全に燃え尽きちゃうんだよ?カラアゲさんとナポリタンもいるんだよ?
「聞けば芸術の町には勇者殿のお仲間がお二人いるそうではないですか!」
そうだよ!だから心配してるんでしょーが!
「勇者殿のお仲間ならきっと大丈夫です。あのドラゴンも倒せますよ!勇者殿はどうか、この町の火を消したり住人の避難を手伝ってください。」
倒せないよ!カラアゲさんとナポリタンじゃドラゴンは倒せないの!
そりゃこの町の人達のことも心配だよ?でも被害を最低限に抑えたいでしょ?この先の展開を知ってるのは私だけなんだから。
「ドラゴンをさくっと倒してくるからさ、とりあえずみんなは火をくい止めておいて!」
そう言って立ち去ろうとすると、まだ引き留めてくる。
今度は私の腕をしっかりと掴んでいる。
一体何なの?そう思って引き留めてくる数人の人達の顔を見て私は気が付いた。
「君たちまさか!」
そう私が言うと、私を掴んで離さないこの人たちはにやりと笑って私を無理やり近くの納屋に閉じ込めた。
「申し訳ないですね勇者殿。我々としては、芸術の町は滅んで欲しいと願っています。今勇者殿にあのドラゴンを倒されるわけにはいかないのです。」
やられた!芸術の町が音楽都市を滅ぼそうとしていることは知ってたけど、その逆もあり得るのか…
ドンドン!
納屋の戸を叩く音がすると同時に、私を押さえつけていた腕が離れた。
「勇者殿。どんなお咎めも受けます。」
私を押さえつけていた数人の男がその場で座り込むけど、今はそれどころじゃない。
きっとさっきの戸を叩く音は合図。芸術の町が完全に焼け落ちたかなんかの。
必死に謝る男たちを無視して納屋の外に出ると、ドラゴンのブレスが広大な芸術の町をすっぽりと包み込んでいるのが分かる。
「消えろ!」
怒りのままに叫ぶと、それだけでドラゴンは消滅した。
やっぱ、芸術の町を焼き払うまで無敵って設定だったのね。
「急いで火を消して!水はバケツリレーで運んで!」
残っている人に指示を出して燃えている町の救出を試みる。
確か燃えやすいものを壊して炎上を防ぐ方法があった気がする。
「火の近くの家を全部壊して!これ以上火を燃え移らせないようにして!」
そう言って芸術の町の方を見ると、向こうからカラアゲさんとナポリタンの大声がする。
良かった。とりあえず2人は無事だった。
町の大きさが小さいから火の大きさも小さい。
ひとまずこの町は大丈夫そうだ。
私は後を任せて芸術の町へ向かった。
でも私は2人になんて謝ればいいんだろう…私のせいで2つの町がめちゃくちゃになったのに…




