第六稿その3
「馬鹿な!」
なーにが馬鹿な!だよ。そういうの偏見って言うんだよ?覚えておきな。
って私が人のこと言えた身じゃないけど。
今私達は一番近い武器屋に入ったわけだけど、カラアゲさんが惚れ惚れするような剣が飾られていて、店主が若くて綺麗なお姉さんで、カラアゲさんが絶句しちゃったわけ。
気持ちは分かるよ?
こういうの作るいわゆる職人さんって、頑固親父ってイメージだもんね?
「何かお探しですか?」
店主が訊ねてくる。
「この店の物は全部君が作ったのか?」
驚き交じりにカラアゲさんが聞く。
「えぇ。女だからって舐められないように毎日必死ですよ。」
にこりと笑いながら言うが、女の私には分かる。
あれは営業スマイル。
カラアゲさんの真意を読み、女の自分にこんな立派な剣が作れるわけがない!と言われたことに気づいている。
「む。そうか…失礼したな。俺は今の今まで、こういうのは男の仕事だと思っていた。だが、どうやら俺の考えは間違っていたようだ。」
「良かったら工房の様子、見てみますか?」
「うむ。頼む。」
あれぇー?ここで私1人で行動するのかなぁ?そんなシーンないけど?聞いてないけど?
「済まぬなアヤメ。俺はどうしてもやるべきことができた。」
何が済まぬなだよ!やるべきことって若い娘さんと2人きりになることか?スケベ親父が!まぁカラアゲさんに限って間違いは起きないけど、けどさぁ!私だって女だよ?見た目は男だけど。いやいや、違くて、1人で何しろと?
「勇者様、役場はこの先の広場を左に曲がって突き当りの大きな建物です。ささ、おじさまどうぞ。」
なんなんだよこの店主もー!
女としての力量も負けた気がするし、いや別に女は現世で捨ててるからいいけどさ。
何だろう…
個の世界に来てから初めてぼっちになった気がする。
前の世界では当たり前だったぼっち。
人がいることに慣れてしまうと、ぼっちに戻るのが辛い。
まぁ仕事はしないとね。
私は1人で寂しく、娘店主に言われた通りの道筋を進んで役場へ向かった。




