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第一稿その1

どういうシステムかは分からないけど、私はどうやら異世界に転生してしまったようだ。


ほっぺをつねっても痛くない。


夢じゃなく紛れもない本物!


いや、死んでないから異世界転移か。でもここでは便宜上異世界転生と言わせてもらおう。


さて、ラノベ作家が本当に異世界に転生(転移)してしまったわけだが、まぁ私としてはこの世界で一発逆転を狙うのも悪くないと思っている。


とはいえ今の私は実に無防備だ。


部屋着、いや普段着と言うべきか、いつも愛用している(いつ洗濯したかも分からない)ジャージのみで武器なんてありもしない。実に無防備。


いるか分からないけど、モンスターなんかに襲われたらそれこそ最悪だ。



ほら見ろ!言ってるそばからモンスターだ。って異世界転生してすぐにドラゴンはさすがにないんじゃないかな?


「逃げるしかないじゃんー!」


「勇者殿。逃げるのですか?」


「ふぇ?」


なんか知らないおっさんが私のこと勇者とか言ってるんだけど。


てゆーか兵士めっちゃいるじゃん。なにこれ?私逃げられない感じ?


てゆーか勇者1人に戦わせないで、兵士も一緒に戦えよ!


「ささ、勇者殿。」


ささ。じゃないよ!戦い方とか知らないし。


えぇい!どうなっても知らんぞ!


とりあえず魔法を撃つなら手を前に出すべきだよな。


「滅びよドラゴンよ!」


え?嘘でしょ?私異世界来てすぐに魔法使えるの?


これ何魔法?


何か知らないけどドラゴンが爆発したんだけど。


「おぉー!さすがは勇者殿。」


はぇ?何がどうなってるの?私いきなり魔法使ってドラゴン倒しちゃったけどいいの?


「どうぞ勇者殿。我らの村でゆっくりして行ってください。」


「ちょ…ちょ…ちょっと…」


私の戸惑い無視ですか?


半分兵士に引きずられるようにして連れていかれた村は、かなりさびれていた。


「うわぁー。」


「魔王のせいでこの有り様です。」


魔王ね…まぁありきたりっちゃありきたりか。つまり私が魔王を倒せばいいわけだ。さっきの魔法を使えば余裕っぽいけど。


チート能力を手に入れて異世界転生したってことでいいのかな?


「お前が勇者か。俺は戦士のカラアゲだ。よろしくな。名前は?」


「あ、えと…アヤメ…ですけど…」


めっちゃ大男じゃん!筋肉もやばいし、怒らせたらまずい人だ。


「アヤメだと?随分女らしい名前だな。」


え?女ですけど?もしかして男に転生してるとか?


そう思って鏡を見た私はびっくり!以前のデブスの私とは大違い!なんとハンサムな男に転生していたのだ!


喋り方とかにも気をつけないとね!


…というよりも、カラアゲなんて変な名前。確かに私が書いてたラノベにはそういうキャラクターが登場するけど実際にそういう名前の人を目の当たりにするとちょっと引く。


それにしても…


なんだろうこの既視感は…


いや異世界なんだから見たことないのは分かってるんだけど、なんていうか…


私が書いてボロクソの評価を受けたラノベにそっくりなんだよね。


私が書いたやつもいきなりドラゴンが現れて魔法でラッキー勝利おさめるし、魔王のせいで寂れた村に案内されて突然カラアゲとかいう筋肉モリモリ大男が仲間になるけどさ…


私が書いたラノベだと確かこの後カラアゲと主人公がゴブリンの山に向かうんだよね。


「というわけでアヤメ、ゴブリンの根城であるゴブリンの山に向かうぞ。」


というわけってどういうわけだよ!


あぁそうか。


どうやら私は自分が書いたラノベの世界に転生したらしい。


みんなにボロクソに言われてた理由、こうして自分が体験してみるとよく分かるよ。


突然すぎる場面展開、いきなりすぎる展開、キャラクターの性格がぶれぶれ、読者を置いてけぼりにしている。


ほんとそのまんまだな…


何でゴブリンの山に向かうのかも分かんないし。まぁ私は作者だから分かるんだけどさ。この村はね、ゴブリンの山に住んでいるゴブリンが悪さをしてることが原因で寂れちゃってて、ゴブリンは魔王の手先って設定なんだよ。


あ、でも小説の中で全く説明してなかったなぁ。読めば分かるでしょ!で押し通しちゃったもんなぁ…


しかもゴブリン山での展開も自分が体験すると分かるなら、めちゃくちゃなのが分かる…


あぁー。どうすればいいのよ!

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