第四稿その5
星降りの丘――
夜には晴れてさえいればいつでも満天の星空を見ることができる美しい場所。
星に近い場所とも呼ばれている。
別に標高が高いからとかそういった理由ではない。
いつでも星が見れるのは私が描いたこの世界では、ここしかないから。
まぁだからって何があるわけでもないんだけどね。
星が降る街もこの丘にあるんだけど、一番の星が見えるスポットが要はモンスターに占拠されてるってこと。
そこを占拠しているモンスターは確か…
「あれっすか?」
ナポリタンが指さす先には、天を仰ぐカンガルーのような獣がいる。
そうそう。天仰袋鼠って名前を付けたっけ。
「なんか弱そうっすね。」
そう言って意気揚々と天仰袋鼠に向かうナポリタン。
「ちょっと待って!」
と言った時には既に遅かった。
近づくナポリタンに警戒心を表した天仰袋鼠が、脅威の速さでピョンピョン移動した。
移動しながらナポリタンを蹴り飛ばす。
「いってぇー。カラアゲさん、アヤメ!気を付けて!こいつら結構やるっす!」
私にも注意を促すあたり、意外と優しい。
「集団行動を取っているようだな。」
カラアゲさんの分析通り、天仰袋鼠は集団で生活している。
私は実際のカンガルーを見たことはないけど、何となく集団で暮らしてるイメージだったからそんな設定にした。
そしてカンガルーは怒ると攻撃的になると聞いたことがある。だから天仰袋鼠も攻撃的なモンスターに設定した。
「ナポリタン。陽動しろ。」
カラアゲさんが短く指示を出す。
つまり囮になれってこと。
ナポリタンは、了解っす。と言って再び駆け出した。
今度はさっきみたいな反撃を受けない。一度スピードを見たから天仰袋鼠の速さが分かる。分かりさえすればナポリタンがモンスターに遅れを取ることはなかなかない。
さすがは勇者の仲間だねぇ。
ナポリタンに気を取られている隙に、カラアゲさんが数匹の天仰袋鼠をまとめて倒した。
残りは私の出番。
「2人とも離れて!」
私は片手を前に出して手のひら大きく広げる。
「はぁ!」
お腹にぐっと力を入れるだけで、残りの天仰袋鼠が消滅した。
ま、私だけでも十分なんだけどね。
私の描いたラノベだと、カラアゲさんとナポリタンの見せ場がここであるから仕方ない。
「ふぅ。」
息を吐く私の頭をカラアゲさんがポンと叩く。
「おつかれ!」
ナポリタンは私の隣に来て、片肘で私を小突く。
なんか、運動部っぽいノリだなー。
デブスの私には縁が全くなかったノリ。
でもこうしてみんなで力を合わせてってやつ、意外といいかもしれないね。




