第三稿その3
羊が多い村に到着した。
とうとう到着してしまった。
道中ゴブリンとかちょっとしたモンスターには出会ったけど、カラアゲさんとナポリタンが全部倒してくれた。
この村にドラゴンが現れるんだけど…どうしよう…
「では暫く自由行動にしよう。」
そう言ってカラアゲさんは酒場に歩き出した。
あぁもう!私はお酒飲めないのに!
「アヤメー。あの子可愛くね?ちょっとナンパするからついてきて。」
は?ちょ、なんで私があんたのナンパについて行かなきゃいけないのよ!私はカラアゲさんと一緒にいないといけないの!
「オレってほらモテるじゃん?ナンパの成功率を上げるには、アヤメみたいな引き立て役が必要なわけよ。タイミング見てどっか行ってくれよ?」
物凄くイラッとした。誰が引き立て役だ!こちとらそういった経験は0だ!
それにしても世の中の男どもは、女をこういう目で見てるのだろうか?
ナポリタンは私の苛立ちを無視してそのまま村娘に近づく。
お逃げなさいお嬢さん!
心の中で叫ぶも無駄。
「ねぇねぇお姉さん1人?可愛いね!今ちょっと時間ある?」
手慣れた様子でナポリタンが声をかける。
「え?」
そりゃ戸惑うよね。私でも同じ反応示すわ。
「お腹空いてない?オレ達飯まだなんだよね。良かったら一緒にどう?おごるよ?」
うわー。なんかありきたりの手段って感じだわー。私なら絶対断るわ。
「それならぜひ。」
えー!こんな清楚そうな女の子なのに?こういうもんなの?これが恋愛偏差値0と100の違い?
まぁでもこれでナポリタンの元から離れられて、カラアゲさんのところに行けるわ。
そう思って私は2人の元から離れようとした。
すると、
「あの…勇者様はご一緒されないのですか?」
と村娘。
ん?これはどうすればいいの?
私がナポリタンを見るとすかさずナポリタンのフォロー。
「そうだよアヤメ。早く来いよ。飯食おうぜー。」
え?どっか行けって言ったよね?何で私も一緒なの?
「わ…僕、カラアゲさんのところに行かなきゃ。」
あっぶなー。一瞬私って言いそうになったよ。
でもこれでナポリタンも私を離してくれるでしょ。
「固い事言うなよー。飯食ってからでもいーじゃん。」
あんたは軽すぎるんだよ!私にどうして欲しいんだよ!
「勇者様はいつまでこの村に滞在する予定なのですか?」
いつまでだろ?カラアゲさん次第だよねー。
「ねぇねぇ名前、なんて言うの?」
私が答えるよりも前にナポリタンが村娘に訊く。
「私は、アイと申します。」
「アイちゃんかー。可愛い名前だね!」
私の同級生のアイは、ビッチって噂があったな。
そう思いながらアイと名乗った村娘を見ると、若干困った顔付きで苦笑いをしつつ、ナポリタンの視線を避けるように顔を横にそらした。
その時ちょうど曲がり角から強面お兄さん2人組が現れた。
「あ!ちょっと!」
危ない!そう言う前にアイがお兄さんにぶつかった。
慌ててアイの手を引いて転ばないようにしつつ、お兄さんから引き離す。
こういう輩は何するか分からないからね。
「おいおいねえちゃんよぉ。人にぶつかっておいて何にもなしかい?」
ぶつかられた方のお兄さんが言う。
やっぱりね。私がかつて見下していた人種だもん。やり口は分かってる。
「すみませんでした。ちょっとした不注意で。」
とりあえず謝っとけば、騒ぎを聞きつけたギャラリーが味方してくれるはず。
そう思って私はアイを後ろにかばって、頭を下げた。
「ほぅ?にいちゃんが代わりに謝ってくれるのかい?」
ぶつかられてない方のお兄さんが言う。
代わりって言うか、さっさとどっか行って欲しい気持ちしかない。
「ねえちゃんもよぉ。こんなイケメン2人に囲まれて幸せだろうな?人にぶつかってもイケメンが助けてくれる。世の中不公平だな?」
それについては同感だ。
私も見た目だけで損してきた。ビッチという噂になったクラスメイトのアイは美少女だから何しても許された。私は菌扱いだった。
不公平なのは知ってる。でも暴力任せのこいつらはもっと嫌い!
見た目の不公平はある意味で理解できるから。
私だって見た目で人を判断するもん。今もこの強面お兄さんを、見下していた人種と同じだと勝手に判断した。
人間は見た目で損得する。それは事実。
でも実はクラスメイトのアイは見た目だけじゃなくて、中身もいい奴だった。だから好かれていた。
私を菌扱いしてた男子に一言言って、それから私はアイに守られていじめられることなく中学時代を過ごせた。
見た目で得する人間は、中身で損する奴もいれば中身で得する奴もいる。ある意味公平。
でも暴力で解決する奴らは違う。中身とか見ないで、自分が全てじゃん。気に入らなければ暴力。単なる通り魔と一緒。これは不公平しかない。
でも暴力が全ての人達にとっては、それが不公平ではないらしい。私には理解できないけど。
だから私を殴ったこのお兄さんに対して私が魔法を使っても不公平じゃない。
「ふざけんなこいつ!」
私が魔法を使おうとしたのに、ナポリタンがキレた。
私を殴ったお兄さんを飛び膝蹴り一発で倒した。
「てめー!何しやがる!」
もう1人が着地したばかりのナポリタンに向かってローキックをお見舞いする。
ナポリタンはそれを胴で受けながらも、相手の足を両手でキャッチ。
さすがはタンク。
「てめー、オレの仲間に手ぇ出したな?ぶっころす!」
ギロリと睨む。
なんかかっこいい。
不良に憧れる人の気持ちって、こういうのなんだ?
ナポリタンはそのまま、お兄さんの足を持ち上げてブンブン振り回して投げた。
まぁ普段からモンスター退治してるナポリタンと、村のヤンキーじゃ相手にならないよね。
「怪我ない?」
なんてことない感じで聞いてくる仕草が、かっこよくてムカつく。
「あの、お二人ともありがとうございました。」
ぺこりとアイが頭を下げる。
頬が赤く染まっているところを見ると、ナポリタンに惚れたな?




