[第七話] 授業を受けます
私。フォルニス・エリアノールはアレイスター国立魔法学園の高等部2年。
この学校は8~12歳は初等部、13~15歳は中等部、そして16~18歳までが高等部となっている。
私は初等部からずっとこの学校にいるので9年間ぐらいはいることになる。
私のような学年になるとほぼほぼ毎日魔法に関連した授業を受けることになる。
さらに自分の学びたい分野の授業を選んで受けれるので、
私は週2で応用人形術の授業と、週4で応用魔法陣の授業、魔法学特論の授業がある。
さすがにここまでくると大分内容が専門的なものになってくる。
最初は楽しく受けていた授業も苦痛を感じるときがあるのがつらいところ。
あと個人的に不満なのは人形術の授業がほぼないということぐらいだけど…
まあ実際人形術って魔法の中ではマイナーな方だから、受講する人が少なすぎて開講されてないってだけなんだけどね。
ってことで本日最初の授業は 私の大好きな応用人形術。
休み明けの一限目からきついとつらいからね。
この時間にこの授業が配置されているのは運命なんじゃないかって思う。
すこしうとうとしながら授業が始まるのを待っていると、私に念話がかかってくる。
「 おねえちゃんおはよ! 」
メイちゃんだ。
私が起きたときには近くにいなかったから寝てたのかと思ったけど、
よく考えたらメイちゃんって寝るのか?
人間の意識ではあるにしろ、人としての肉体は持ってないわけだけど、眠くなるのかな?
「 おはよー メイちゃん 」
「 おねえちゃんねむそうだね~ 」
「 眠くて眠くて寝ちゃいそう…」
「 じゃあおねえちゃんにいいものあげる!」
「 え?」
メイちゃんがそういうといきなり体に魔力が流れ込んでくるのを感じだ。
魔力が流れ込む感覚はなんともくすぐったい感じがする。
「 うわっ!メイちゃん何したの!?」
思わず声が出てしまう。
「 えへへ…メイのともだちにおねがいしておねえちゃんをびっくりさせたの!びっくりしたらねむくなくなるかなって!」
「 びっくりした~ でも目が覚めた気がする。ありがとね」
危なかった~
もし誰かに聞かれてたら恥ずかしかったし、教室にまだだれもいなくてよかった。
それにしても魔力をもらった影響だと思うけど、いきなり体が叩き起こされた感がすごいな。
なんとなく体に悪い気がする。
魔力もらったこととか無いけど。
「 そういえばメイちゃんは今どこいるの?私の部屋?」
「 えっとね~ひみつ!」
私の近くにいると思ったんだけどいないのか
どこかで遊んでるのかな?
ちょっとうらやましい
その後少しの間、メイちゃんと話していると先生がやってきた。
この応用人形術を担当する先生は、モートス・ライン先生。
所謂おじいちゃん先生って感じの先生。
何歳なのかは知らないけど、見た目から60歳は絶対超えてると思ってる。
この学校には他にもおじいちゃん先生はいるけど、このライン先生は優しいほうだ。
先生が来てから5分ほどたった後、チャイムが鳴り授業が始まる。
いつも通りと言えばそうだけど、私と先生含めて5人しかいない教室は寂しい感じがする。
今日のテーマは人形の改造についてだ。
そもそも人形術は [ 人形 ]ってついているだけで別に人形を操るための魔法じゃない。
たまたまこの魔法を確立した魔法使いノルフィスが人形を操るために使ってたってだけ。
別に人形じゃなくても操るためのコアさえついていればどんな形であっても操れる。
人形術の真の魅力は、その拡張性の広さにある。
ただ単に動かすだけではなく、
魔法を使わせたり、自律性を持たせたりと色々できる。
勉強してて一番面白いと思うんだけどマイナーなんだよなぁ
ライン先生の授業は実際に魔法を使いながら進めるスタイルで、受けてて飽きない。
「 …となります。さて、ここまでこの制御魔法の仕組みを解説してきたわけですが、実はこの魔法式には少し欠陥があります。では…エリアさんどこか原因か分かりますか?」
「 えっと…多分魔法式の途中にある二つの魔力変換の部分で魔力損失が起こっていると思います。」
「 そうですね。前述した通りコアから供給される魔力の時点で変換は終わっているので、ここで余計に損失を発生させているので魔力がもったいないです。」
この魔法式はコアを制御するためのシステムで、何種類かあるうちの一つ
基本的なことだが、中等部で教わる人形術はこんな細かいところまで解説してない
こういう物の原理を知るのが楽しくて、中等部のころは図書館で色んな分野の魔法書読み漁ったなぁ
まあほとんど覚えてないけど…
無事に先生の気まぐれ質問を返す。
「 ライン先生の授業、唐突に問題吹っ掛けてくるからボーっとしてるとびっくりするよね~」
小さな声で話しかけてきたのは、一緒の授業を受けてるアルトだ。
中性的な見た目をしていてぱっと見男子だけど、一応女子。
私と違って攻撃系の魔法が得意な、活発な人なんだけど、
なんでこんなマイナーな授業受けたの?って聞いたら
「 最初の授業の時、教室間違えてそのままの流れでうけることになっちゃった。」らしい
でも試しに受けてみたら、結構楽しそうだから、そのままにしているとかなんとか
「 そうだよねー 授業聞くだけだと思ったらいきなり指されるから、準備してないと…」
「 まあ人が少ないってのもあるし、他の授業よりかはのんびりできるのはいいところ。」
「 それはそうだね。」
時間がどんどん過ぎていき、授業も終わりに近づいてきたころ。
「 ではエリアさん、この魔法式を実際に使ってみましょう。ここの人形に使ってみてください。」
メイちゃんに起こしてもらったものの、少し眠かったのでボーっとしていたらまたライン先生に指名された。
「 ん…? あっ わかりました! 」
「 あっエリアちゃんなんかついてるけど…いっちゃった」
アルトがそう呟くもエリアは聞き取れなかったようだ。
前に出て魔法を使う。
少しボーっとしながらだが、使うだけだけならそこまで難しい魔法ではないので、簡単にこなせた。
「 いいですね。おおむねあっています。」
出来なかったらどうしようと思っていたが、成功して安心していると先生が再び尋ねてきた。
「 もうチャイムもなるので授業を終えたいと思います。ところで、エリアさん。」
「 はい?」
「 あなたの肩に乗ってる可愛らしい人形は一体何ですか?」
「 ん?そんなものは乗ってないはず…」
左肩に手を伸ばすと、何やら柔らかい感触が伝わる。
何度も触ったあの感触だ。
振り向くと…メイちゃんの人形が乗っかっていた。
「 おねえちゃん、みつけた!」
いないはずのメイちゃんが人形を乗り移って、ここにいることにびっくりし思わず声が出てしまった。
「 えっ 何でメイちゃんここ居るの!?」
「 えへへ…きちゃった!」
メイちゃんはもちろん念話で話していて私にしか聞こえないので、私は傍から見たら一人で人形に向かって喋ってるただの変な人だ。
先生は少し黙った後こういって教室を後にした。
「 ……まあ自ら進んで勉強することはいいことです。これからも頑張ってくださいね。では終わります。」
私は目が覚めて、自分の置かれた状況がとっても恥ずかしいことになっていることを理解した。
穴があったら入りたい…
そう思ってるとアルトが興味津々に話しかけてきた。
「 ねえねえ!その人形なに!?自分で作ったの?凄いなー」
「 あーまあーうん。そうだね。自分で作ったよ…。」
「 それにずっと見てたけど、その人形勝手に動いてなかった? 魔法でここに来るようにしてたの?」
「 いやーえっと、その…なんだ、あれだよ、ポルターガイスト的な?そういうやつ。私知らない。」
「 え?でもさっき[メイちゃん]って言ってなかった? 」
こいつめ、穴をついて質問してくるのつらいな
なんとかごまかせないか頑張っている時、メイちゃんがとある行動に出る。