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[第三話] 人形を追いかけろ3

駆け足気味の足取りでそそくさと部屋へ戻る。


クレイさんに見つからないようにそっと。



よし!いないぞ。サンドイッチだけ食べてこっそりまた外に逃げよう…!


二階にある自分の部屋に難なく辿り着き、そっと閉まったドアを開け中へと入り、サンドイッチを探す。



「 えっと…どこに置いたっけな…」


自分が置きそうな場所をくまなく見ていく。


ゆっくりゆっくり部屋の奥へ進んでいく。


そして、最奥。作業机の上にそのサンドイッチは置かれていた。


窓だった大穴から差し込む光がいい感じにそれを照らし出し、とっても目立っていた。


「 あっ あったー! こんな目立つ場所に置いたっけなー? 窓の残骸も綺麗になくなっ…て…る? あれ? 誰が掃除したんだろう…」


「 誰でしょうねー?」


後ろから聞き覚えのある声が私に話しかけてきた。


やさしさを感じるいつもの声に怒気が混じっていることにすぐに気が付いた。もちろんその声の主も…。


はっと後ろを振り向くと、そこには私が予想通りの人が、予想通りの表情で仁王立ちしていた。


「 あ…クレイさん…こんにちは…今日もいい天気ですね…はは…」


逃げられなかった。


「 こんにちは。エリアさん。今日も外はポカポカしてて雲一つない快晴ですね。こんな日にはそとでサンドイッチでも食べてのんびりしたいものです。」


「 そうですよねー私もちょうどこのサンドイッチ、中庭で食べようと思って買ってきたんですよ…」


「 あら、気が合いますね。ところでその後ろの窓はどうしたんですかー?とっても開放的で窓枠もどこかへ行ってしまったみたいですけど。」


「 あー本当だ。気づきませんでした。いつの間にかこんなにも開放的になってるなんて… でもこれはこれで気持ちの良い風が沢山入ってきて良いと思いませんか?」


「 確かにそうですね~。涼しい風が沢山入ってきてとってもいいと思い…ませんよ?」


やっぱりごまかしきれないかぁ…。


「 私、それなりの間、この寮の管理人やってますけど…こんな短期間に2回、しかもこんなに派手に壊されたの初めてです。」


「 私も人を怒りたいわけではないので、一回目は注意で済ませています。」


「 四日前に窓ガラスの一部を割った件に関しては注意だけで済ませたはずです。」


「 それなのに、私の注意を無視して、しかもこんなに派手に破壊するなんていい度胸してますね。」


「 そんなに私に怒られたいのなら存分に、満足するまでしてあげてもいいんですよ?」


怒らせたらダメな人を怒らせちゃった…まずい…


「 いや…これには理由があって…」


「 理由ってなんですか? 私を十分に納得させられる理由があるのならどうそ。言ってみて下さい。」


「 え…いや…その…」



私もこの子杖で吹き飛ばすときに、かろうじて残ってた窓を破壊しちゃったからやってないって言えないのがむかつく!


てか私じゃないし!この人形操ってるやつが悪いんだし!


『この人形が勝手に動いて壊しました。』なんて言っても言い訳って思われるのがまたむかつく!



必死に釈明しようと言い訳を考えている間にもクレイさんの説教は止まらない。


「 そもそも、こんなになるような魔法を使うのであれば、寮の部屋じゃなくて校舎の魔法実験室とか魔法演習場でやるのが普通なはずです!」


「 こんなところで怪我されたら、私も対処できる怪我に限界がありますし、そういう危険が伴う魔法はなるべく校舎の中でやるべきです!」


「 エリアさんが怪我しちゃったら、周りのみんなも心配になりますし、私も心配です!」


「 今回はエリアさんが怪我をしなかったからよかったものの、たまたま怪我をしなかっただけにすぎません!ちゃんと安全を確保してやってください!」


段々と声が大きくなるにつれ、私のこと心配する内容が多くなってくるのが分かった。



私のこと気遣ってくれてるのか…こんなことしてるのに…


クレイさんに対して申し訳ない気持ちが込み上げてきた。


そう思い、今まで逃げようとして目を合わせずに、若干横に向いていた体をしっかりとクレイさんと目を合わせ、体を向けた。。


「 あの…! 窓を二回も壊してしまってすみませんでした…!これからは周りの安全を確認するように気を付けます!」


いきなり人が変わったように謝った私に少し戸惑った様子を見せるクレイさん


「 …本当にもうやらない? 窓も壊されると、音で他の寮生たちがびっくりしてしまうし、何より危ないから…」


「 やりません!クレイさんに誓って…!」


「 …ならよかった。じゃあこの窓は後で用務員の人に伝えてすぐに直してもらうようにするね。」


安心した様子のクレイさんは私の部屋を後にする。


そのあと、10分ぐらいは何も考えずにただサンドイッチをほおばった。


サンドイッチは少し乾燥していてぱさぱさしていたが、その味が今日は妙に頭に残った気がした。




だがしかし、今日の事件はこれで終わりではなかった。


ことが起きたのはサンドイッチを食し、おなかが満たされた、その直後であった。


再び机に置いた人形が動き出した。


しかし今までのような機敏な動きではなく、のっそりとした動き方だった。


それにすぐに気づいた私は、速攻で人形の動きを封じることに成功した。



危なかったー!ボーっとしてたらこれだよ。油断も隙も無いな。


てかこいつこの前と違って全然のろかったな…


でもまだバタバタ足とか手は動いてるし、ほんと何が起こってるんだ…?


未知の技術で動く人形に疑問を募らせていると、急に動いていた手足が止まり、頭の中に小さな声が響いてきた。



何だこの声? 聞き覚えのない声…。なんてしゃべってるんだろう…。


頭に響く謎の少女の声。段々と声量が大きくなっていく。


あれ…これ何かに似てるなって思ったら念話か?この頭に直接響いてくる感じ…でもこんな小さな女の子なんてしらないな…。


少し経つと、なんとか言葉を聞き取れるレベルまで声量が大きくなっていた。


そろそろ聞こえるかな…。


目を瞑り、全神経をこのか細い声を聞き取るのに集中させる。


「ア…ア…ア…」


「キコエ…テ…ル? 」


「オ…ネエ…チャン…」


「アノネ…オニンギョウ…サンガ…ホシイ…ノ…」

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