6.団体戦メンバー
闘技場へ向かう途中、何故始業式の次の日に闘技大会をやるのか疑問を持った俺は、アルシェに尋ねた。
アルシェによると――
クラスの振り分けに筆記試験の成績とは別個で、闘技大会の成績を見るらしい。
戦闘特化クラスなるものがあるらしく、そのクラスに入るには闘技大会などで優れた成績を残したりする必要があるようだ。
更に、戦闘特化クラスで優れた成績を残すと、学院卒業時に国王付属騎士団へと推薦され、騎士になれるらしい。
そして俺とアルシェは、闘技大会の会場である闘技場へと到着した。
「ここから先は選手しか入れないようだな。ではまた会おう、アルシェ。」
「う、うん! 頑張ってね! 観客席から応援してるから!」
そしてシャノンは中へと入っていく。
目いっぱい元気よく手を振るアルシェに対し、シャノンは拳を軽く上げて答えた。
「か、かっこいい……」
その姿を見て、アルシェはときめいた。
―ロッカールーム―
受付を終えた俺は、高等部一年のロッカールームへと来た。
ドアを開けた瞬間、ロッカールームに居た人達の視線が俺に集まった。
「ほーほー、君が噂のシャノンくんか〜」
雰囲気の柔らかそうな男が、部屋に入るやいなや話しかけてきた。
「噂、とは?」
「君って没落貴族らしいじゃーん?」
ほう、直球だな。こいつは中々度胸のあるようだ。
「お、おいやめろよマーク!」
ここで体のガッシリとした坊主頭の男が止めに入る。
……こいつ本当に16歳か? もはやオッサンにしか見えん。
「まぁまぁ別にいいじゃんかよマードック〜。没落貴族は平民同然だろ〜?」
「て、テメェ〜!」
マードックはそう言うと、マークの胸ぐらを掴んだ。
「ち、ちょっと待ってくれよ〜軽いスキンシップだろ〜?」
「ちっ! 大体お前は昔から……はぁ、もういい。とにかく、シャノンに謝るんだ。」
「あーあー、別に気にするな。その男の言うように、没落貴族の俺の事は平民同然と思ってくれて構わない。」
「ほらな〜、だから言っただろマードック〜?」
「おーまーえーはー!!」
マードックがマークを殴ろうとしたところを、シャノンが止めた。
「いいから、気にするなマードック。」
「あ、あぁ……分かった。それより、何で俺の名前を知ってるんだ?」
「なに、先程の会話で名前を聞いたのでな。」
「あぁ、そうか。
俺はマードックだ。よろしくなシャノン!」
「ちょっと〜何二人だけで仲良くなってるの〜? 俺も混ぜてちょ!
俺はマークだよ! よろしくシャノンくん〜」
「うむ、こちらこそよろしく頼む。」
こうして、俺はマードックとマークの2人と握手を交わした。
その後二人と会話をしたのだが、聞いたところによると、マークとマードックは幼なじみらしい。
こんなの腐れ縁だ、と二人は言っているが、照れ隠しにしか見えなかった。それ程仲が良いように見えたのだ。
だが、マークは平民でマードックは子爵家の息子のようである。
俺は、平民と貴族という関係なのに仲が良いと言う事に対し、何だか不思議なものを感じた。
何せ、この世界では平民を見下すような腐った貴族しか見てないからな。
「それよりも、団体戦に出場する順番はどうするんだ? 勝ち抜き方式だから、一番手は強い奴が良いと思うが。」
マードックが話を切り出す。
「ふむ、ならば俺が1番手を行かせてもらおう。」
勿論俺は一番手に名乗り出た。
「大丈夫なのシャノンくん〜? 没落貴族なのに〜」
マードックからチッ、と舌打ちを鳴らす音が聞こえた。
「それを言うなら、マーク。お前は平民であろう。」
「そ、そうだけどさ〜平民だけど俺って結構強いんだぞ〜?」
「ふむ、そうか。だが、今回はお前らの出番は無いと思っておけ。
俺一人で、十分だ。」
「ほう。言うな、シャノン。期待してるぜ!」
「そこまで言うなら仕方ないね〜じゃあ一番手任せたよ、シャノンくん!」
かくして、一番手がシャノン、二番手がマーク、三番手がマードックと決まり、俺たちは闘技大会へ挑むこととなった。
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