2.この体、魔力量少なすぎ……!?
はて、どうしたものか。
貴族制度撤廃の夢を託されたシャノンは、地面に座り込んで深く考える。
……と言っても、いきなり出来るわけないしな。まずは、普通に暮らしながらどうするべきか考えよう。
気付けば夜も薄暗くなってきてたし、自分の家に帰るとしよう。
俺は、脳内の記憶を探り自分の家へと帰った。
そして自分の家を見て、開口一番に出た言葉がある。
「これが、俺の家か……?」
外見が非常にボロかったのだ。没落貴族とはいえ、貴族は貴族だろうに。
風が吹けばキシキシと音が鳴りそうだし、家の中にいても隙間風を感じそうだ。
家と言うより、まるで小屋だな。
中に入ってみると、案の定家具も漏れなくボロくて薄汚れていた。
「あやつも苦労していたんだな……。」
シャノンのことを思いやるリベル、もといシャノン。
そこで、魔法で家具一式全てを新品同様綺麗なものにしようとしたが、そこで異変に気付く。
「この体、魔力量少なすぎね……!?」
莫大な魔力量を持っていた前世と同じように魔法を発動しようとしても、思うようには出来なかったのだ。
なるほど、術式は全て理解しているのに、肝心の魔法を発動出来ないとは……これこそ宝の持ち腐れと言うのだろう。
だが、仮にも俺は元大魔術師。魔力の制御はお手の物である。魔力を制御すれば家具を新品同様にする魔法を発動することも容易いことであったが、シャノンは一考する。
これは……あやつが残してくれたものだしな。残された家具と家は、そのまま大事に使わせて頂こう。
しかし、この魔力量だと……超大魔法などは使えないやも知れぬ。
いや、そこで元大魔術師の経験が活きる筈だ!
魔法発動に要する魔力量を出来るだけ抑え、スマートに発動すればいいのだ。そう、スマートに!
ただ、魔力量が少ない以上、前世ほど強くなるのは不可能だろう。
――ぐぅぅぅぅぅ。
思考を巡らせているシャノンのお腹が鳴る。
あぁ、腹が減った……。そう言えばあやつ、3日も食べてないとか言っていたな……。せっかく転生したのに、このままでは餓死してしまう……!
「えぇい、栄養促進!」
体内に残っている栄養素を促進させ、体中に栄養を行き渡らせる魔法を使用する。
これで餓死することは無いが、空腹を感じることに変わりは無い。
「今日はもう遅いしな……。空腹を紛らわす為にも、寝るか。」
そうしてシャノンは、ボロボロの布を体にかけ、静かに目をつぶった。