12.団体戦⑥ ブリブリのシャノン
1話前の11話(団体戦⑤)から繋がっているので、先に11話を見てからコチラを見るのをオススメします。
『ブリッブリッ』
トイレの個室の便座に座っていた俺は、汚い音をトイレに響かせていた。
その音は止まる様子はない。
この位は、許してくれるだろう。なんせ、先程の試合で活躍したのだから。
シャノンは、スッキリしたような、気持ち良さそうな顔で天井を見上げる。
「あのバナナ、やっぱり腐ってたのかな……」
味が変だったバナナに思いを馳せる。アルシェの弁当を食べた後に食べさせて貰った物だ。
だが、そのバナナが俺の腹痛を起こした原因だとしても、それはアルシェに伝えてはいけないだろう。
童貞である俺でさえ、女の子にはそれくらいの気遣いは出来るのだ!
そして、ふと試合中の事を思い出す。
いや、スルメやイワシの事ではない。決して。
俺は気になる人間を見付けたのだ。
会場の特別席のような所から見ていた、頭に王冠を乗せた男と、その横に侍っていた男。
特に、横に侍っていた男……アレはヤバい。
流石の俺でさえ引く程のオーラを感じた。
今の俺は、あらゆる魔法術式を把握してはいるが、駆使できるとは限らない。
なんせ、この体は魔力量が非常に少ないからな。
その上、この体は身長だけはあるがヒョロヒョロであり、モヤシのようである。
これでは、肉弾戦になるとボコボコにされるだろう。
魔力が底を尽きた時に備えて、体を鍛えるしかないだろう。
そうでもしなければ、アソコにいた男には、到底勝てるとは思えないのだ。
「……いや、ビビってるとかじゃないからね!? 勘違いしないでよね!?」
突然大きな声で独り言を叫ぶ。
しまったァ! やってしまったァ!
ふむ、つい心の声が出てしまった。
まぁ、誰も居ないだろうし大丈夫だろう。
それより、あの男と戦う前提で考えていたのは、もしかしたら俺は頭が悪いのかも知れぬな。
イワシのアホが移ったのかも知れない。
これでは俺は、まるで戦闘民族である。
そして、あの王冠を被った男、非常に偉そうだったが……。
ピコーン! シャノンはパーにした左手の手のひらに、グーにした右手を乗せ、閃いた。
そう言えば、マークが言っていたな。
今回の闘技大会は、王が見に来てるから御前試合になるんだとか。
という事は、あの男は王様なのだろうか?
道理であの男は偉そうだった訳だ。
『シャァァァァァァ』
トイレの水を流す。
色々思考を巡らせた俺は、無事用を終えてトイレを後にした。
そして、トイレを出た瞬間だった。
「おいおいシャノンくん、君なんでそんな強い訳〜!? 超カッコよかったよ〜!」
「本当に俺たちの出番が無かったとは、とても驚いたぞ」
マークとマードックであった。マークは非常に嬉しそうだったが、マードックは少しよそよそしく感じた。
「あぁ、二人とも、出番を無くしてしまってすまなかったな」
二人に対し、俺は謝罪した。
「な〜に言ってるのさ! 楽チンな方が俺は好きだからね!」
「……」
気楽に流すマークに対し、マードックは黙りであった。
やはり、マードックは何処かおかしい。何かあったのだろうか?
「じゃ、決勝戦も任せたよ、シャノンくん!」
「えっ、二回戦が決勝戦なのか?」
俺は少し動揺した。そんな事無いだろう、と。
「そうだよ〜だって、高等部だけでの団体戦だからね〜。
ちなみに相手は、前回大会優勝の高等部三年だよ!
前回優勝したから、今回はシードなんだってさ〜」
ほう。という事は、相手にとって不足無し、ってところか。
「それは楽しみだな」
「言ってくれるね、シャノンくん! じゃあ頑張ってちょ!」
シャノンとマークはグータッチをした。
――ダッダッダッ
騒がしげな足音がコチラに近付いてくる。
「し、シャノンさん!」
アルシェであった。息を切らしてる様子から察するに、俺の事を探して走り回っていたのだろう。
「どうしたんだ、アルシェ? 何か俺に用事でもあるのか?」
「あ、あの! まずは勝利おめでとうございます!」
「ふむ、ありがとう」
何だが嬉しく感じた俺は、アルシェの頭を撫でた。
頭を撫でられているアルシェの様子は、俺以上に嬉しそうに見えた。
「そ、そのですね……さっきの試合を見てて、もしかしたら、と思ったんですけど……」
「ふむ、どうした? 言ってみよ」
「あまり体調が優れないのではないか、と思いまして……」
なるほど。俺の体調を心配してくれていたのか。
だが、しかし。その原因がアルシェに貰ったバナナが腐っていたから、何て到底言える筈もなく。
「い、いや〜体調が悪いと言うか、スルメやイワシが強かったから苦戦してただけだぞ!」
「そ、そうだったんですか? 苦戦しているようには見えなかったんですが……で、でも! 体調が優れない訳では無いなら、良かったです!」
「礼を言うぞ、アルシェ。では、俺はこれより決勝戦があるから先に行く。また応援を頼むぞ」
「は、はい! 任せて下さい! 誰よりもシャノンさんの事、応援していますからね!」
両手を胸の前に置き、真剣な眼差しでシャノンを見つめる。
そんなアルシェの応援を背に受け取り、俺は決勝戦へと向かった。




