2月「バレンタイン」
高2の2月のお話。
赤松さんと付き合ってから、初めてのバレンタイン。
生まれてこの方、友チョコすらしたことがない私が、いきなり本命チョコを作ることになってしまった。
〝バレンタイン 初心者〟で検索したところ、どうやらトリュフなるものが失敗しづらいらしい。
…トリュフにしよう。
潔くザッハトルテだのマカロンだのを諦めた私は、材料調達に街へ繰り出した。
◻️◻️◻️
「まぁ、こんなもんかな…」
ラッピングも終わり、私は椅子の上で一息つく。
初めてにしては、中々上手くいったと思う。
「あー…片付けめんどくさー…」
世の中の女子は、こんな面倒なことを毎年していたのか。
義理チョコなんて文化は滅んだ方がいいんじゃないか?
好きでもない人にここまでの労力をかけるのって苦痛じゃない?
そこまで考えて、「あぁ、自分は赤松さんのことが好きなんだな」と再確認してしまい。
1人頬を赤くする私なのであった。
◻️◻️◻️
バレンタイン当日。
赤松さんの家にお呼ばれした私は、緊張しながらインターフォンを押した。
ピンポーン…。
「いらっしゃーい!」
「お、おじゃまします」
出迎えてくれた、赤松さんの笑顔が眩しい。
付き合ってから半年近く経つけれど、未だにこの輝きには慣れない。
「入って入って。リビングに用意してあるから」
「わ、わかった」
用意?何をだろう。
お茶とかかな。ありがたいな。
「ちょっと、作りすぎちゃったんだけど…」
_リビングで私を待ち受けていたのは、チョコレートの3段ケーキだった。
「森丘さんと付き合って初めてのバレンタインだったから、張り切っちゃった」
えへへ、と恥ずかしそうに笑う赤松さんは可愛い。
可愛い、けどっ…!
こんな凄いもの見せられた後に、私のショボい手作りなんか渡せないよ!
「す、すごい…」
「ありがと」
あ、コレ、多分今私も渡す流れだ。
どうしよう…。
私なりに頑張ったけれど、ガッカリされてしまうかもしれない。
…失敗したことにしてしまおうか。
後で、市販の美味しいチョコレートを渡せばいい。
むしろ、その方が赤松さんも喜ぶだろう。
「あの、赤松さん、その…」
「?」
「私も手作りしたんだけど、…失敗しちゃって」
だから今日、持ってきてないんだ。
そこまで言って、恐る恐る赤松さんの顔を見た。
「そっか」
赤松さんは一瞬だけ悲しそうな顔をしたけれど、すぐにいつもの明るい笑顔に戻った。
「私のために頑張ってくれてありがとう。気持ちが嬉しいよ」
…あぁ。
なんて、優しい人なんだろう。
〝作ったけれど失敗した〟なんて、〝 宿題したけど持ってくるの忘れました〟並に信憑性が低いのに。
もしかしたら今、赤松さんは傷ついているのかもしれないのに。
私は、何をやっているんだ。
「ごめん、赤松さん」
「ううん、謝らなくて大丈夫だよ」
「違うの。…本当は、作ってきたんだ」
鞄から、昨日作ったトリュフを取り出す。
赤松さんのケーキに比べたら単純なレシピだし、不慣れなラッピングはリボンが縦になってしまっている。
だけど、こんなに優しい人に…自分の保身の為だけに、嘘をつきたくない。
「赤松さんのケーキに比べたら、ガッカリされちゃうかもしれないけど…」
「そんなことないよ」
赤松さんは私のトリュフを受け取り、いつもの倍キラキラした笑顔で言った。
「ありがとう!凄く嬉しい!」
嬉しそうにラッピング袋を眺める姿を見て、ほっと安心する。
バカだな、私。
〝気持ちが嬉しい〟って言うような赤松さんが、ガッカリするはずなかったんだ。
「じゃあ、お互い食べよっか。座ろ?」
「うん」
そういえば、立ったままだった。
椅子に座り、ケーキの置かれたテーブルを挟んで赤松さんと向き合う。
「ケーキ取り分けるね」
「あ、ありがとう…その前に、写真撮ってもいいかな」
「え、うん…何か照れちゃうな」
はにかみ笑いをする赤松さん。
可愛い。赤松さんも一緒に写真に撮りたいくらいだ。
パシャリ、と1枚写真を撮り、密かに待ち受けに設定した。
ケーキを取り分け、2人とも手を合わせる。
「「いただきます」」
1口食べようとしたところで、赤松さんにストップをかけられた。
「待って」
「?」
「森丘さん」
「えっ」
スッと口の前に差し出されたのは、1口分のケーキが刺さった、赤松さんのフォーク。
こ、これはまさか…俗に言う…。
「あーん」
あーんってやつですか?!
「え、あ、う…」
「ほら、口開けて」
ね?と小首を傾げる赤松さん。
…覚悟を、決めるしかないのか。
可愛さの圧に負け、私はゆっくりと口を開いた。
「美味しい?」
「美味しいです…」
美味しい。確かに美味しいんだけど。
顔の熱がとんでもない速度で上がってます!
「可愛い」
「っ…!」
そんなに愛おしそうな目で見つめられたら…
…頬の熱が冷めるのが、もっと後になってしまう!
「た、食べよっ」
「はーい」
クスクスと笑った赤松さん。
何だか私ばかり翻弄されてる気がする。
「赤松さん」
「何?…え」
私も、負けじと自分のフォークを赤松さんの口の前に差し出した。
勿論、1口分のケーキを刺して。
「…いただきます」
赤松さんがパクリ、とフォークをくわえた。
「美味しい?」
「…うん…」
赤松さんが、少し照れたように上目遣いで見つめてくる。
やばい、私も恥ずかしくなってきた。
「…。」
「…。」
2人で頬を赤くして、向き合っているこの状況。
照れくさいような、むず痒いような空気が流れる。
…まぁ、でも…
…それも悪くないかなぁなんて、思うのだった。
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