9月「体育祭」
_9月。それは、体育祭の季節。
うちの高校は、毎年体育祭も文化祭も開催する。
だから今年も勿論、バッチリ体育祭が開かれたというわけだ。
「晴れてよかったね、赤松さん」
「そうだね。台風がこないか心配だったけど」
「ほんとに。なんで9月にやるのかって話だよ」
体育祭当日の、朝。
学校への道を、赤松さんと二人で歩く。
「今年も赤松さんはリレー出るもんね。応援してる」
「ありがとう。今年は「頑張れー!」って叫んでくれたら嬉しいなぁ」
「うっ…善処します…」
「ふふ、冗談だよ」
運動神経も抜群の赤松さんは、去年に引き続き今年もリレーに出る。
体育祭の目玉であるリレーは、かなりのプレッシャーだと思う。でも赤松さんは、「絶対勝つから見ててね」とふわり笑った。
私の彼女は、誰よりも可愛くてふわふわしていて、強い…!
「…森丘さん」
「ん?」
「お願いがあるの」
赤松さんが私のジャージの袖をクイッと引っ張って、上目遣いで見つめてくる。
小動物みたいで可愛い。そして私は、このお願い攻撃に弱い。
「どうしたの?」
「フォークダンス、あるでしょう」
「あぁ、そういえばそうだね」
最後の種目として、3年生限定のフォークダンスがある。
去年までは関係なかったし、興味もなかったから完全に存在を忘れていた。
「私、嫌なの」
「私も面倒くさいなぁ。点数にもならないのに、何でやるんだろうね?」
「…そうじゃなくて」
「へ?」
突然、赤松さんが足を止めた。
どうしたんだろう。私も歩くのをやめて、赤松さんの方を振り向いた。
「森丘さんは、私とだけ踊って欲しい」
「…っ!」
真っ直ぐな瞳で、そんなことを言われてしまったら。
断れるわけ、ないじゃないか!
「…はい」
「よかった。じゃあフォークダンスの時、中庭に来て?」
「はい…」
「ふふ。森丘さん、顔が真っ赤だよ」
「言わないで…」
■■■
_リレーも終わり、いよいよフォークダンス。
ガヤガヤと中央グラウンドに向かうクラスメイトと逆行し、私は中庭に向かった。
「お待たせ、赤松さん」
「ううん」
先に待っていた赤松さんが、中庭のベンチに座っていた。
私も隣に座り、ふぅと一息を吐く。
「リレー、お疲れ様。今年も凄かったね」
「ふふ、ありがとう」
小さく笑った赤松さんは、今年もリレーで大活躍だった。
うちの体育祭は、公平を期すために陸上部は出場禁止だ。そうすると意外な人が「めちゃくちゃ速い!」なんてこともあるらしい(興味が無いのでよく知らない)。
でも、赤松さんはその中でもぶっち切りの速さみたいだ。体育祭後には、必ず陸上部から勧誘されている。
「赤松さんは、何で陸上部に入らなかったの?」
「うーん、部活特有のコミュニティがあまり得意じゃないからなぁ…」
「あー、そっか」
赤松さんはその外見と能力で、どうしても目立つ存在だ。他人に興味が持てない私でも、赤松さんのことは付き合う前から何となく知っていた。
集団に属すると、色々面倒が増えるんだろう。
「それに、森丘さんと一緒に帰りたいし。二人きりになれる、貴重な時間でしょ?」
「ソ、ソウダネ…」
「何でカタコトなの」
しれーっと返事をしようとしたら、逆にぎこちなくなってしまった。
いやだって、赤松さんが照れること言うから!嬉しいけどさ!
_そのまま雑談していると、グラウンドの方からフォークダンスの音楽が聞こえ始めた。
「あ、始まったね」
「…そうだね」
やばい、何か今更になって緊張してきた。
二人きりで体育祭を抜け出すなんて、とんでもない青春イベントだ。今までの私では考えられない。
「森丘さん」
「なに…って、え!?」
赤松さんが立ち上がり、ベンチに座った私の目の前に跪いた。
そのまま私の右手を取り、手の甲に口付ける。
「私と、踊ってくれますか?」
「は、はい…」
ぶわわ、と顔の熱が一気に集まるのがわかる。
赤松さんが優しく笑って、私の右手をそっと離した。
「よかった。OKしてくれて」
「断るわけ、ないじゃん…」
「そう?」
いや、そうでしょ!
赤松さんにこんな風に懇願されて、NOと言える人なんている!?
赤松さんが立ち上がって、うやうやしくお辞儀をした。
そして、左手を差し出される。
「お手をどうぞ、お嬢さん」
「ひゃい…」
「あ、噛んだ」
「そそそこはスルーしてよ!」
「ふふ、焦りすぎ」
「う、うぅ〜…」
流れ聞こえるフォークダンスの音楽に合わせ、私たちも踊り始める。
握る手の暖かさに、胸がきゅんと鳴った。鼓動が近づいて、また心臓が煩くなる。
踊りながら、赤松さんの顔を見つめる。
整った顔立ちが、今日は少し汗ばんでいた。
「…見すぎだよ」
「あっ、ごめん」
「何で謝るの?」
「嫌だったかなって…」
「そんなわけないでしょ」
ちゅ、と頬に軽くキスをされた。
柔らかな感触が、熱くなった頬に残る。
「ず、ずるいなぁ…」
「森丘さんもしていいよ?」
「こ、心の準備をする時間をください…」
「はーい」
クスクスと笑う赤松さんの楽しそうな様子に、私の頬も緩む。
今まで、体育祭なんてダルい早く終われしか考えたことなかったのに。
“ずーっとこの音楽が続けばいいのにな”なんて、人生で初めて思ってしまった。
そんな自分も悪くないなと思う。_赤松さんと、一緒ならね。
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