8月「海デート」
8月。夏。
高校生である私たちにとって8月とは_
_束の間の休息期間なのである!!
…といっても、受験生の遊べる夏休みなんて数日だけどね…。
■■■
「おはよう、赤松さん」
「おはよう」
朝10時。
海辺が近くにある駅の改札で、私と赤松さんは待ち合わせをしていた。
そう、今日は…。
「じゃあ、行こっか。海」
「う、うん!」
私と赤松さんで、海デートだ!!
普段は海だのプールだのなんて、一ミリも興味がない私だけど。
赤松さんが「綺麗な海が見たいな」と言うものだから、「行こう」と即答したのだった。
普段は遠慮がちな彼女のささやかなお願い。叶えずに何が恋人か。
…水着が楽しみって下心も、あるにはあるけどね。
■■■
更衣室が個室タイプだったので、各自水着に着替えて。
さぁ、砂浜でご対面である。
「…っ!」
「ど、どうかな…?」
いやいやちょっと待って。
水着の赤松さん、破壊力強すぎでしょ。
赤松さんが着てるのは、セパレートタイプのワンピースだ。
上は白の大ぶりレースがついたキャミで、下は黒の花柄スカート。
露出が多いわけではないけれど、ちらりと覗くおへそとか、キャミ故に顕になった鎖骨から胸の辺りとか、…。
赤松さんの輝きを直視できず、顔を両手で覆う(でも指の隙間から見る)。
「も、森丘さん?どうしたの?」
「あ、いやその!輝きが強すぎると言いますか」
「似合ってなかったかな…」
「そ、そんなわけないよ!!」
思わず食い気味に叫んだ私に、赤松さんが驚いたように目を見開く。
何興奮してんだ私。
「…ふふ。ありがとう」
「う、うん…」
焦った私の様子に、くすくすと赤松さんが笑う。
いやダサすぎるぞ、自分。
これで終わっていいのか。ちゃんと言うんだ!
「…その、すごく似合ってる。可愛いよ」
言いつつ、恥ずかしすぎて顔を背ける。
頬に熱が集まっているのがわかる。あああ、
「あ、暑いね!?やっぱ夏だね〜!!」
誤魔化すように、わざと明るい声を出す。
だけど、赤松さんは黙ったままだった。
「…?赤松さん?」
「あ…」
覗き込んだ赤松さんの顔は、ほんのりと赤く染まっていた。
「え、」
「か、可愛いって言ってくれたから…」
恥ずかしそうに目を伏せた赤松さん。
反則すぎる。可愛すぎる。
「そ、そっかぁ…」
「うん…」
絞り出した声は、かなり間抜けな音で。
照れながら向かい合う八月の砂浜は、本当に暑かった。
■■■
荷物を海の家のコインロッカーに預け、さぁいよいよ海へ__!
というところで、赤松さんに呼び止められた。
「森丘さん、ちょっと待って」
「へ?」
赤松さんにちょいちょいと手招きされる。
何だろう、と思いつつ赤松さんの傍によった。
「これ、着てて」
はい、と手渡されたのはパーカーだった。
薄手のパステルイエロー。UV対策に着るやつかな。
日焼けを気にしてくれたんだろうか?
「ありがとう。でも、ちゃんと日焼け止め塗ってるから大丈夫だよ」
「…そうじゃなくて」
「え?」
じゃあ、何だろう?
私の水着は、深緑のオフショルワンピースだ。肩が寒そうとか?
「寒くないよ?流石に夏だし」
「そうでもなくて」
「??」
え、単純に水着姿が見苦しいから着てろということ…?
悪い方向に想像が進んだところで、赤松さんが軽く咳払いした。
「…他の人に見せたくないから、着てて欲しいの」
「え…、いや、」
「森丘さんが思ってるより、海っていうのは危ないの!」
「は、はい」
畳み掛けるように言われ、思わず頷く私。
いそいそとパーカーに袖を通す。サイズが不安だったけれど、赤松さんにはオーバーサイズだったのか割とすんなり着れた。
「こ、これでいい?」
「うん」
「お、怒ってる…?」
さっきは、赤松さんにしては珍しく強めの口調だった。
恐る恐る聞くと、赤松さんはバツが悪そうに視線を逸らした。
「…怒ってないよ。でも」
「で、でも…?」
聞き返すと、赤松さんに腕をぐいっと引っ張られた。
耳元に触れる、赤松さんの唇。
「独占したいって思ってただけ。…森丘さんを」
「ッ…!」
「いつも可愛いけど、今日は一段と綺麗だから」
甘く囁かれて、顔がボッ!と音を立てそうな勢いで熱くなる。
赤松さんの唇が耳から離れ、至近距離で見つめ合う。
「好きだよ」
私の目を真っ直ぐ見て、赤松さんが言った。
どくん、と心臓が跳ねる。
「わ、私も好きです…」
「ふふ、何で敬語なの」
「そ、それは…、許して…」
刺激が強すぎて、どうにかなってしまいそうだ。
私の彼女は、可愛くてかっこよくて、優しくて。
あまりに魅力的で、私なんかには勿体ないと思うけれど__
「…私だって、赤松さんを独り占めしたいよ?」
__他の誰にも、赤松さんの隣は譲りたくない。
「…うん」
赤松さんが、私のことを上目遣いで見つめた。
彼女の潤んだ瞳に、私が映っている。
「私のこと、独り占めして?」
赤松さんの小さく開いた口が、まるで誘っているようで。
私は、ごくりと唾を飲み込んだ。
「…森丘さん?」
私は吸い寄せられるように、赤松さんの口元に唇を寄せた__。
「だ、ダメだよ」
赤松さんが、私の口を両手で覆うようにガードした。
そこで、やっと我に返る私。
な、何やってんだっ!
「あ、ごごめん!思わず…!」
慌てて後ろに引き下がると、赤松さんは不満げに唇を尖らせた。
「離れないで」
「…うん…」
か、かか可愛い。寂しがり屋だなぁ。
くい、と手を引かれ、再び私たちは至近距離で向かい合う。
「ここでは、人目があるからダメだけど」
言いながら、赤松さんが私の手を彼女の唇に触れさせた。
ふに、と柔らかな感触が伝わる。
「別の場所でゆっくり、ね?」
薄く微笑んだ彼女の笑顔が、あまりに魅惑的で__
「はい…」
__私の頬の熱は、夏の太陽に負けないくらいになってしまったのだった。
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