(霊)百物語
奇憚雑記100話突破を(勝手に)記念して百物語に関する小咄を話そうと思う
まだネットが普及していなかった頃、夏の恒例行事(?)の中に心霊スポット巡りや百物語を語るイベントが流行った時期があった
ある夏の終わり、暇を持て余した俺達は女の子を読んで怪談話で盛り上がろうと思い立ち早速準備に取り掛かった
舞台は土建屋を営む友人宅の空きコンテナハウス
現場に持ち込む為に保管してあるモノだが自宅近くの空き地に置いてある為に少々騒いでも苦情も来ない
どうせなら雰囲気重視で。と言う事で呼んだ女の子達が来る前に照明の蛍光灯を外して薄暗くしたり
紐を引くと積んだヘルメットが崩れる等の小細工を仕込んだ
そしていよいよ百物語が始まった
雰囲気を出す為に蝋燭を用意したが流石に百本は用意出来ないので太い蝋燭を各自一本ずつ、
話しては消し順番が来たらまた点けるというシステムに変更した
だが怪談師ではない俺達に百物語はハードルが高すぎた
1人2話程度を用意したとしても野郎5人、女の子6人では20話ソコソコで話は尽きてしまう
ネタ被りも含めるとギリギリ25話程度で全員話が尽きてしまった
それからは酒盛りにシフトチェンジしてそれなりに盛り上がったのだがその途中、
1人の女の子が奇声を発してぶっ倒れ救急車を呼ぶ騒ぎになってその集まりは失敗に終わったのだった
まぁ良くある事とは言えないが若気の至り、失敗談としてはままある話として終わる筈だった
その後がなければ。
数日後、野郎共は先日の失敗談を苦々しく話し合っていたのだが友人の1人がおかしな事を言い出した
「しかしさぁ、アレがなければ男女ペアで楽しめたのに残念なったよなぁ~」
ん?男女ペア?
「あれっ?ペアって1人あぶれちゃうじゃん?」
「◯◯~、何言ってんだよ?男5人、女5人の10人だったじゃんかよ」
「…え、女6人いたじゃん」
そこで急におかしな空気になった
俺も含めて6人だと思っていたのが合計3人、初めから5人だと思っていたのが2人と意見が分かれたのだ
「じゃあどんな娘が来てたか答え合わせしようぜ?そしたら見てない奴が分かるじゃんか‼」
劣勢の5人支持組が検証を申し出た
「先ず◯子だろ?その友達の…」
女の子を誘った友人が1人ずつ確認しつつ皆に同意を求める
彼は少数派の5人支持だった
「…で、たまたま都合が合って付いてきた◯実ちゃんだっけ?それで5人じゃん」
「いやいや、ほら倒れた◯◯の後に付いてきた女の子がいたじゃん!」
「そうだよ!バタバタして名前聞いてないけどさ、チェックの長袖シャツ着た地味目の女の子がいたじゃんか⁉」
「…そんなの俺見てねぇけど…」
「じゃあ◯子に直に聞いてみようぜ?女子に声掛けしたの◯子だろ?どうせ」
「おお!じゃあ賭けな!5人だったらビール奢り」
「構わねぇよ!6人だったら逆に奢れよ?」
そんな勢いで◯子に連絡を取った
「え~?5人に決まってんじゃん、男5人しかいないのにさぁ…」
「ほーらな?聞いたかよ?ビールゴチ確定ね!」
納得いかないのは6人主張組だった
「嘘だろ?ほら!いたじゃん!チェックの長袖シャツ着た女の子!」
「そうだよ!名前知らねぇけどずっといたじゃん?」
◯子は冷めた目で騒ぐ俺達に重大な見落としを指摘した
「…あんたらさぁ、忘れた訳?」
「何をだよ?」
「初めましての人もいるから最初に全員で自己紹介したじゃん、そこでそのチェックの娘、自己紹介したの?」
「「…あ…」」
そういえば初対面の娘もいたから百物語の前に自己紹介した事を思い出した
こうして6人いたと証言した俺達はまんまとビールを集られたが結局誰だったのかは未だに分かっていない
そして救急車騒ぎを引き起こした女の子との因果関係も謎のままである




