(霊)生き霊に襲われた話
地元に海外の大学の日本校が出来て通っていた時期だからもう大分前になる
初年度は周囲の高校も様子見で在校生を紹介せず、そのせいか思ったより生徒が集まらなかった為と
多分入学金を当てにしていたのだろう、設備も順次建設(予定)と言う漠然とした指標で在校生も不安を覚えた程だった
まぁそんな部分を除けば楽しい学校生活だったのだが田舎が故の「遊び場の欠如」は常に悩みの種で
ドライブが軸となる遊びで紛らわしたり留学生達とパーティーしたりと生徒間の密度は高かった記憶がある
そんな生活か続く中、ふとした時に視線を感じる様になった
振り向いても誰がいる訳でもないのと学校にいる間だけだったのでそれほど気にしていなかったがそれが甘かった
ある日いつもの様に帰宅し、食事や風呂を済ませ自室に戻るとあの(視線)を感じた
とうとう家でも?と思ったが学校内と同様、感じる(だけ)だったので映画を一本観た後床に就いた
うとうとし始めてからどれ位経ったのかは分からないが多分相当意識を持っていかれていたと思う
おぼろ気に誰かがベッドのに入っていて背中側にいる感覚に襲われた
実家の自室、当時彼女はいたものの突然潜り込んでくる輩なぞ心当たりがない
誰だ⁉と振り向こうとしたが体に力が入り辛い上に俺の背中に密着しているせいか身動きが取りにくかった
背後の「誰か」は暫く体を密着させるだけで何もして来なかったが突然胸の辺りをギューっと抱き締めてきて
え??と思う間にふっと軽くなった。体の自由が戻り急いで振り向くも当然誰もいなかった
今まで視た事はあっても接触は初めてだったから恐怖感が半端なくその日は一睡も出来ずに朝を迎えた
眠さを我慢しつつ学校に行きクラスメイトに事の顛末を話したら噂好きの友人♀が意外なリアクションを返してきた
「あー、やっぱり?あの子相当好きだったんだー」
「え?どういう事?」
話を聞くとよく遊ぶグループではなかったがA子という子がおり、どうやらこんな俺に好意を持ってくれていた様だ
が、どうアプローチして良いか分からずモヤモヤしているとある日やけにリアルな夢を見たらしい
俺の車に乗りドライブしたり家に招かれたり時には添い寝もしたらしく妄想としては完璧だったが
夢にしては生々し過ぎるのと翌日は頭痛が酷くて悩んでいたらしく友人♀に相談をしていたらしかった
話を聞いても納得がいかない。
その日の授業終わりにA子を呼んで貰いファミレスで聞いてみる事にした
ただ俺がいきなり加わっても話は聞けないと思って俺の携帯の一つを友人♀に持たせ
会話の内容を近くの席で盗み聞きする作戦を取った
話の内容は聞いた程度のモノだったが何ヵ所か、特に俺の部屋の描写に寒気を覚えた
テレビ台(下部に小さい冷蔵庫を収める為に自作した)や枕カバー代わりに使っていたTシャツ等
部屋に来ないと知り得ない事をA子は言い当てていたからだ
それと同時に数日前、夢を見た時に見た事がない大型犬に俺の家で吠えられた。と言った
確かに3日程前に足を負傷した愛犬を家の中に寝かせた時があり、夜中やけに吠えていた記憶があった
当時ボルゾイは珍しく少なくとも地元では見た事がなかったので「これだ!」と思った
トイレに立った友人♀をこっそり呼び止め俺の携帯に入っている犬の写真をそれとなく見せてみて、と頼んだ
画面を見せる為に盗聴?は已む無く中止したが友人♀が席に戻って直ぐにA子の短い悲鳴が店内に響いた
声高に何かを言い合うとA子は店から逃げる様に帰ってしまった
ソコからは友人♀と合流、答え合わせをする時間となった
先ず幾つかあり得ない合致点があった事を告げ盗聴中止後のあの騒ぎは何だったのかを聞いてみた
犬の写真を見せた途端、A子に「何で貴方があの犬の写真を持っているの?」と激しく問い詰められたらしい
友人♀は写真の犬は知り合いの愛犬だと説明したがA子も犬が実在した事で何かを悟ったのか
友人♀と俺との仲を勘違いし意味不明な言葉で罵った挙げ句に店を飛び出していってしまったとの事
謎が増えただけだったが解決方法も見いだせない以上、「こんな事もあるんだねぇ」的な話でその日は解散した
それから数日後、友人♀が俺を見るなり駆け寄ってきた
「昨日A子来た!!」
興奮気味に話す友人♀を何とか宥め話をまとめさせるとどうやらA子の生き霊が♀の所にも来たらしい
重苦しい雰囲気に目を開けると枕元に鬼の形相のA子が仁王立ちしていたそうだ
これで奇しくも俺の話が第三者によって証明された形になり、信じていなかった連中もA子を避けだした
結局その雰囲気に耐えられなかったのかA子は少しして学校を去る事になった
それ以来生き霊は現れなかったがA子の行く末は未だに気になる




