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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(人)昔話


子供の頃、友達の爺ちゃんが時々昔話をしてくれた


昔からある話や自身の体験談を面白おかしく話してくれたのでよく皆で遊びに行っていた


そんな昔話で今でも強烈に記憶に残っているのが爺ちゃんの戦争の話だった


爺ちゃんは戦時中南方の前線に送られてそれこそ死ぬ思いをしたそうな


「おりゃ(俺は)な、いつか俺が殺した人達にあの世に引っ張られるんだ」


生き残る為に酷い事をした、としか聞かされていないが相当の地獄を垣間見てきたのは分かった


そんなある日、いつもの様に爺ちゃんの家を訪れると様子が変わっていた


いつも話をしてくれた縁側寄りにベッドが置かれ爺ちゃんは寝ていた


「爺ちゃん、どうしたの?」


皆が心配して尋ねると爺ちゃんは弱々しく応えた


「おりゃな、そろそろお迎えが来るんだ…」


お迎え=死ぬ、位は理解が出来る


「爺ちゃん、そんな事言わないでよ‼」


友達が半べそでそう訴えると爺ちゃんは


「そうかそうか、でもな…お迎えが来たんだよ」


と孫の頭を撫でながら悲しい顔をしていた


その日は爺ちゃんの変わり様に何もせず帰宅したが

お見舞い(といっても手ぶらだが)に行くと調子の良い時には昔話をしてくれた


秋が過ぎ冬を越え春が近くなる頃、爺ちゃんは静かに息を引き取った


通夜の夜、帰宅した父に連れられて友達の家を訪れると白い布を掛けられた爺ちゃんがいた


子供達はお味噌扱いなので当たり前の様に友達の部屋に押し込められた


その時の友達の一言は今でもハッキリ覚えている


「あのな、爺ちゃん…死ぬちょっと前に「俺が悪かった」ってずっと謝ってたんだ」


戦時中に殺めた人が迎えにきたのか、それは分からない


けど年老いて尚悔いる行いをせざるを得なかった戦争という代物は心に大きな傷を残すんだな


子供心に残る爺ちゃんの死だった

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