表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
77/441

(霊)外階段


以前勤めていた会社での話。


その会社は一階が事務所と資材置き場、二階が倉庫で二階へは鉄製の外階段で行く様になっていた


いつもは資材部の人間がオーダーに合わせて事前に階下に品物を下ろしておくのだが


突発的なオーダーがあれば俺達も倉庫に品物を取りに行ってた


確か梅雨時の終業時間を少し過ぎた頃だったと思う


翌日早朝必要だった品物を揃えておこうと雨のそぼ降る中取りに行き、戻る最中に思いっきり滑ってしまった


落ちる時頭を打ったのか少し意識が飛んでいたらしい

気付けば辺りが真っ暗になっていた


屋根もなくずぶ濡れで倒れていたせいで体が冷えていたがどうにも力が入らない


(脊椎でも痛めてしまったのか?)

と思って恐怖を感じたがどうにも出来ない、ましてや助けを呼ぶにも声が出なかった


「…ぁ…あぁ…」


何度目かのトライで声が戻ってきた感があって体も少し動かせる様になり安心していたその時


「ガラガラガラ‼…ドンッ‼」

階段の上から何かが俺の体に落ちてきてその衝撃と痛みでまた気絶しそうになった


(何?…えっ?…人?)


何が何だか分からず混乱していたが落ちてきたのは人、それも女性らしかった


(倉庫に人なんていなかった筈?)


恐ろしい事に落ちてきた女性の首と手足があらぬ方向に曲がっているのに気付いた


恥ずかしながらその瞬間から記憶が飛んで次に目覚めたのは病院のベッドだった


外回りで遅くなった社員が倒れている俺に気付き救急車を呼んでくれたらしい


幸いにも派手に滑落したのに打撲と擦過傷だけで済んだらしい


「あの…後から落ちてきた女性の方は…?」


電話を受け駆けつけてきてくれた上司にあの女性の安否を尋ねると


「…いいから休んでろ…」


と何か複雑な面持ちで労いの言葉をかけてきた


2日程念の為休養し出社すると全員から質問責めにあった

訳も分からず滑り落ちた経緯を話すと

「それじゃない‼」と突っ込まれた


実は10年程前、女性社員が同じく滑落し命を落としていたらしい


それから対策として滑り止め塗料を塗布したが経年劣化で剥がれ落ち俺が落ちた、と言う


問題は以前から雨の日に女性社員の霊を見る事があってタブーとなっていたらしいのだが


見るどころかのし掛かられた?俺は格好のネタ元となっていた様だ


まぁ隠す必要もなし、落ちてからその女性が衝突する迄を覚えている限り教えた


お局様はそんな俺の話を食い付く様に聞いていた


「…○○さん、成仏出来ていないのね…」


女性社員の姿形を聞いたお局様がボソッと呟いた


俺が見た女性社員は確かに亡くなった当人の容姿に当てはまるらしい


その後霊障があって即座に退職…する事もなく何もないまま数年後依願退職した


俺が経験した滑落話は尾びれがつき今では俺も化けて出てくるらしい


冷たい雨が当たる中、おかしな方向に曲がってこちらを見ていた女性の顔は今も忘れない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ