(霊)しょん◯ん横丁
昔専門学校に通っていた時の話。
新宿西口にあった学校に通う為に時々「しょん◯ん横丁」の中を通っていた
正式名称は「おかず横丁」らしいが朝などは通り名に相応しいすえた匂いが漂う少し怪しい通りだった
話は朝の横丁での事になる。
一杯飲み屋だけでなく格安飯屋もあるとは言え通勤時間帯には流石に閑散としている
オフィスに向かう人の殆どは表通りを使っていて横丁を通るのは先を急ぐリーマンか俺みたいな人種程度だった
ある日いつもの様にのんびり通過しようとするとある店で人が飲んでいるのが見えた
ガラスで仕切られた店内、ビールケースを椅子にテーブルにと活用させ酒を煽っている
耳当て付きのボロい帽子、古ぼけた紺色のジャンパー、汚れでくすんだ黄土色のズボンと擦れた地下足袋
人じゃないと理解出来た暑い夏の朝、店の入り口には「準備中」の札が下がっていた
こんなにはっきり見える程思いが残っているのに行き場がないのか何なのか、理由は分からないが
この人?にもきっと故郷があったのだろうと思うと少し可哀想に思えてきたが手助け出来ない以上放置を決め込んだ
まだ彼はあの横丁でコップ酒を煽っているのだろうか?




