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『奇憚(きたん)雑記』  作者: とれさん
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(人)遭難者


若い頃、スキーにハマっていた俺は冬ともなると隣県のスキー場でバイトをしていた


昼間はインストラクター、夜は民宿の調理場とハードだったが

《3食温泉付きスキーし放題》とレッスン生にモテるという魔力に敵わなかった


スキー場にはレスキューとして数名常駐していたが毎日必ず出る「アホ客」に対応する為に

インストラクターの半分はレスキュー(予備)としてかり出される


(ヴァージンスノーを楽しみたいっす!!)

という自殺行為の後始末をさせられていた訳だ


ある日の夜、遭難の連絡が入ったが吹雪いていたので捜索は翌日からと言われた


翌日地元の有志と青年団、レスキュー要員と警官で付近を捜索した


最初からこんな大掛かりな事は珍しいのだが前日の吹雪と目撃者の証言で


「生存は期待出来ない」


との判断からの規模だった


最後に目撃された地点を起点に放射線状に散開していく

遭難者の友人達は本部で経緯を話しつつ安否の知らせを待っていた

小一時間程でシーバーに「発見」の報が入る

沢の下流で遺体で発見されたらしい


近くの人間が回収し俺達は本部へと戻って遺体の到着を待つ

救急車がホテルの裏に到着した頃、スノーモービルに牽引された担架で遺体が到着した


友人達が泣き叫んでいるが正直彼らも再三の忠告や注意書きを無視して踏み入った張本人達だ

泣きたいのは事故で悪い噂が出て被害を受ける周辺の宿泊業やスキー場だ


無事に発見出来なかったやるせなさを皆が苦々しく思っていると

青年団から「清め」の申し出があった


「清め」とは慰労会?まぁ要するに飲み会だ

ここの所かり出される頻度が高かったのでスキー(スポンサー)から提案があったのだ


清めの場では酔いが回ると大抵過去の武勇伝(というか心霊話)大会になる


「遭難者は死んでたけど霊が助けを求めてた」だの「霊を生存者と間違って救助した」とか

なかなかにとんでも発言なのだが大抵はコスり過ぎてファンタジー化してる


その中でも青年団の古株、Aさんの話は強烈でとても脚色が入ってるとは思えなかった


「大分前になるがカップルが遭難してな、捜索に駆り出されたんだよ…」


ここからの話を要約すると数日後に沢に面した斜面で雪に埋もれた二人を発見した、なのだが

発見した状況がどうにも後味が悪い


「男がな、滑落して怪我してたんだけど…女の足を掴んだ状態で死んでたんだよ」


身動きも取れず彼女に見捨てられそうになった男が取った最後の行動、それは道連れだったのだ


携帯に当時の画像が残っていて見せて貰うと確かに逃げようとしている女性の足を掴んで果てていた


「ここまでなら良かったんだけどな…」


急にAさんの口調が重くなる


「男の死に顔がな、笑ってたんだよ…逃がさない様に捕まえられて良かった。みたいにな」


普通に考えれば女性も女性で足掻けば振りほどいて逃げられただろうにその場はただ捕まれて死んだみたいな状況だったそうだ


本当の所は死んだ本人達しかしらないので分からないが酔いが覚める程薄気味悪かったのを今でも思いだす

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